原石の欠片たち

三谷玲

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郷愁

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 高校を中退した俺がこの街に戻ってきたのに特に理由はない。強いて言えば、懐かしくなったからか。
 あの頃は痩せていて色の白かった俺だが九州で農家を営む祖父母の家で暮らしたこの三年間で大分日に焼け逞しくなった。
 だから誰にも気付かれることなく思いに耽られると思っていた。

 川沿いに佇む俺に声をかけてきたのは高校中退の要因になった同級生だった。
 街一番の名家の息子。
 彼が白と言えば黒さえ白になる。そんな男に目を付けられて、身体を拓かされた。
 そのことが露呈した時、彼は言った。

『アイツが誘ってきたんだ』

 おかげで俺はホモだビッチだと中傷され、世間体を気にした両親により中退させられた。
 九州の水が合ったのは良かったが思いのほか成長してしまい所謂ガチムチな肉体を手に入れた。
 自然に触れることで精神も落ち着き、こうして過去を懐かしむ気持ちにもなれたのに、まさか原因である彼と再会するとは。しかも俺だと気付かれるなんて思っても見なかった。

「久しぶり、元気そうだねぇ」
「よく、分かったな……」

 俺を見る目は昔と変わらない。

「なんで? 相変わらずメスの匂いさせて、僕に抱かれたいって目、してるのに、分からないわけないじゃない」

 細い目をより細くして笑みを浮かべる彼は、何も変わっていなかった。
 導かれるまま彼の今の住処だというマンションに雪崩れ込んで、身体を拓かされる。
 見た目だけはすっかり変わったはずの俺は彼が言うように中身は一切変わってないんだろう。
 懐かしさを味わいたかったのは心だけじゃない、身体もだ。 

 昔のように俺の中に触れて欲しい。激しく犯して欲しい。

「こんな立派なの持ってるのに…」
「うっ…」

 そこそこ大きな俺のペニスをぎゅっと握られただけで、そこからは勢いよく白濁が飛び出した。
 ずっと欲しかった熱。
 恥も外聞もなく男の熱に擦りよるとそこもまた昔のように反り返っていた。
 なんの躊躇もなく口に咥えると男の手が俺の頭を押さえた。

「ふふっ、かわいいなぁ~」

 こんな筋肉がついた俺を可愛いと嘯く男はそのまま俺の喉まで突き刺すと、腰を振った。
 苦しいのに気持ちいい。
 昔教えられた通りに歯をたてないよう開いて、でもちゃんと頬をすぼめて、口の中全てを触れてもらえるようにすると男はいい子だね、と頭を撫でた。

 褒められた。

 嬉しい。

 ムリヤリ拓かれることに慣れた身体が蕩ける頃には思考も融けきっていた。
 早く、犯して欲しい。
 彼に背を向ける姿勢で、彼に強請る。

「いいから、はやくっ」

 多分まだ解し切れてないのは分かっていても、早くあの熱で中に触れて欲しい。
 呆れた声色とは裏腹に俺の腰を掴む手は強く、汗ばんでいた。
 
「はいはい、わかりましたよ、っと」
「あ゛ぁぁっ♡」

 少し痛みが走るけれど、それすらも懐かしい。

「ねぇ、誰かとこういうことした?」
「して、ないっ! 出来ないっ、そこぉっ♡」
「じゃあこのおちんちん、未使用なの? 勿体ないねぇ」

 一度出しただけでは収まりきらない、熱を持ったオレのペニスを根元でキツく握られる。
 多分この先も使われることはないだろう。
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