勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里

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第4部 妖精の森編

88 ロウの書斎

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 私の転移魔法を使って、ディディと一緒にロウの家へ忍び込んだ。
 しばらく留守にしていたはずだけど、あまり埃っぽくはない。

 廊下を進み、懐かしい家の中に足を踏み入れた。

「この家の中に心のカケラがあるわ」

 ディディが心のカケラの存在を感じ取ったようだ。

「探すわよ!」

 私は彼女に微笑みかけると、家の中を捜索し始めた。
 キッチン、洗面所、寝室……残るはロウの書斎だ。
 私は覚悟を決めた。

「勝手に入りたくないけど、ロウの書斎に行ってみましょうか。もしかしたら、いや、そこにある可能性が高いと思う……」

 ディディも頷き、私の後を着いていく。

 書斎の扉を開けると、そこにはロウの趣味と仕事の跡が残されていた。
 本棚には魔法書や冒険の手記が並び、机の上には手書きのメモや魔法道具が散らばっている。

「ロウ、失礼しまーす」

 私はそう宣言して、机の引き出しを開けると、その奥に光るものを見つけた。

「あったわ!」

 私はそっと光のカケラを手に取った。すると、ディディも嬉しそうな声を上げた。

「ああ、よかった」
 
「これで一歩前進ね」

 安堵の気持ちが胸に広がった瞬間、カケラから映像が浮かび上がった。

 その映像の中で、ロウが彼の手によってウサ耳を縫っている様子が映し出された。

 そこで、私はハッとした。
 あのウサ耳は……! 見覚えがある。
 ロウに初めて魔道具を注文して、出来上がってきたウサ耳型のカチューシャ、それにメイド服。まさか手縫いしていたなんて……!

 突然、ロウの手が止める。

『痛っ……!』

 針が指に刺さり、ロウが苦悶する声が聞こえた。

『こんなん、縫うの無理だろ。……でも、彼女にはこれを着けてもらいたいから……。ああもう、俺がやるしかない!』

 ロウは謎のやる気を出すと、裁縫道具を手に取って縫い始めた。

『うおおっ……。……頑張れ、俺!』

 ロウが頑張るたびに私は引いたが、ディディは「ロウさま、本当に頑張り屋さんだわ」と、うっとりしている。恋は盲目というやつね。

『よし、できた……。あとは、これを彼女に渡すだけだ……』

 ロウがウサ耳のカチューシャとメイド服をそっと箱に入れて蓋をした。その箱を机の中にしまい込んだところで、映像は終わった。

「ロウさまは本当に優しいわ。あの装飾品はとても素敵。私にプレゼントしてもらいたいくらいよ」

 ディディは嬉しそうに言った。
 ウサ耳はウサギの部分だけ取り外して、私の頭の黒いカチューシャにしているとは、彼女には言い出しにくい。すごく怒られそうで。

 ロケットペンダントから心のカケラを取り出して、今見つけたカケラを合わせるとピタッとくっついた。

「……よし、次の場所へ行きましょうか」
 
 心のカケラを大事にしまって私がそう言うと、ディディは「そうね」と頷いた。
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