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第4部 妖精の森編
82 ランク昇級テスト
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私の転移魔法を使って、妖精の森までワープしたいところだったが、それはできなかった。
その隣にあるダンジョンから、特殊な磁場が放出されていて、転移魔法の発動を妨げているのだ。
そのため、妖精の森へ行くには、大きく迂回するルートを通るか、ダンジョンを攻略して抜けるかの二択に迫られた。
大きく迂回するルートは、足場の悪い道を二週間ほど歩くことになる。魔法を駆使すれば行けないこともないが、効率が悪すぎる。
そこで私たちは、ダンジョンを攻略して突破することにした。
「そこは上級ダンジョンと呼ばれていて、中に入るにはAランクが二人必要だ。……となると」
ロウはちらりと私の胸元のバッチを見る。
「ロザリーのランク更新が必要だな」
「ランク更新ですか!」
Bランクのまま、更新を忘れていました!
ギルドに登録してから時間も経ったから、そろそろ更新してもいい時期のはず。
「そうだな。ランク更新はいずれ必要になるから、この機会に更新しておかないか?」
「もちろん!」
ロウのマントには、Aランクのバッチが光る。
「ロウは更新しなくていいの?」
「お忍びにはAランクぐらいでちょうどいい。俺は必要になれば、いつでもSSSランクのバッチが手に入るからな」
ロウはサラリとそう言った。
なるほど。伝説の勇者パーティのメンバーは格が違うらしい。
「妖精の森は行ったことがあるんでしょ? ということは、前回もダンジョンに入ったんじゃないの?」
「前に行った時は、勇者パーティの一員だったから、ダンジョンには顔パスで入った」
「さすが伝説の勇者パーティね」
「では、ダンジョンに入る前にギルドへ寄っていこうか」
「はい!」
私たちは意気揚々と、ギルドへ向かった。
しかし……。
「討伐実績の証明書はありますか?」
ギルドの受付で、ランク更新の話をすると、受付の人からそう聞き返された。
その受付の人は、私の隣にいるロウが大魔法使いさまとは知らないみたい。
それもそうだ。正装でもないし、髪をセットしているわけでもない。
それに、ロウの胸には実力と異なるAランクのバッチがきらめいているしね。
私に、討伐実績の証明書はなかった。
魔物、ネアトリアンダーをロウとの協力で討伐したことはあるけれど、それは大物すぎて、そもそも証明書はない。
と、ここで私は思い出した。
ギルドで中級の魔物討伐の依頼を受けたことがある!
ロウと一緒に討伐したやつ!
私がその依頼のことを話すと、受付の人は難色を示した。
「中級の魔物討伐は十回以上こなさないと、ランク更新の対象にはなりません」
数をこなさないといけないの?
じゃあ、どうすれば……。
「実戦テストで審査員に判定してもらう方法もあるだろう」
ロウが口を挟んでくれた。要は実践での手合わせだ。
「今はその選択をする方は少ないですが、実戦テストは可能です」
というわけで、私たちはギルドの練習場に来ていた。
広々とした場所には数名の審査員がいて、彼らは鋭い眼差しで、私の実力を見極めようとしている。
「ここで、ランク昇級テストの手合わせをしてもらいます」
受付の人が説明する。
私は頷いた。私の対戦相手はギルドのベテラン戦士であり、その実力は折り紙付き。魔法攻撃を用いる私には、相性が悪い。
でも、魔法の弱点である発動の遅さはカバーできる。これまでの実践の経験で、目が肥えたおかげで相手の攻撃は読めるから。
周囲には、話を聞きつけた他の冒険者も集まり、私たちのテストの様子を見守った。
妖精リアはロウの隣にいて、「頑張って、ご主人さまー!」と声援を送ってくれる。
「始め!」
審査員のその合図と共に、対戦相手が猛然と走り出し、剣を振りかぶってきた。
私はそれを、防御魔法を発動してやり過ごす。
「ほう、なかなか反応速度がいいな」
対戦相手の戦士は、ニヤリと笑った。
「だが、俺の剣技に敵うまい!」
彼は再び剣を振りかぶり、私に斬りかかってきた。私はそれを魔法で防御する。
「まだまだ!」
彼はさらに剣を振るい、私を攻め立てた。
しかし……。
「うおっ!?」
「……魔法が効いたようね」
私は不適に笑う。
彼の攻撃が突然止み、その身体が地面に崩れ落ちた。そして、そのまま動かなくなる。
氷魔法を発動して、対戦相手の体温を奪ったのだ。血液を内部から直接冷やすため、急速に体温が下がる。
防御魔法は同時に放った氷魔法のカモフラージュだった。それは大成功。
「私の勝ちですね?」
私は対戦相手に問いかけると、彼は目を回して反応がなかった。
彼の仲間が駆け寄り、身体を揺らすと、目を覚ました。そして彼は仲間から左右を支えられながら、観客席へ引き上げられていく。
審査員たちが顔を合わせた。
「今のは……」
「魔法だな」
そんな声がちらほら聞こえる。
「これでランク昇級テストは終了です」と審査員が宣言した。
「結果は……全会一致でロザリーさまは、Aランク認定合格です」
私は軽く息をつき、喜びを噛みしめた。正式に実力を認められた。
審査員たちもその圧倒的な力に驚きを隠せないようだ。
「一つずつしかランクが上がらないからAランクだが……その実力は遥にAランク以上だ」
審査員の一人が感嘆の声を上げた。
でも、私はそれで満足だった。
そもそも、魔物、ネアトリアンダーを討伐した時点で、SSSランクはもらえるはずだけど……。
私は後ろを振り返る。満足げな顔のロウと、嬉しそうに飛び跳ねるリア。
これで十分ね。
……だって、ロウとお揃いなんだもん。
二人でお忍びの旅って、最高じゃない?
その隣にあるダンジョンから、特殊な磁場が放出されていて、転移魔法の発動を妨げているのだ。
そのため、妖精の森へ行くには、大きく迂回するルートを通るか、ダンジョンを攻略して抜けるかの二択に迫られた。
大きく迂回するルートは、足場の悪い道を二週間ほど歩くことになる。魔法を駆使すれば行けないこともないが、効率が悪すぎる。
そこで私たちは、ダンジョンを攻略して突破することにした。
「そこは上級ダンジョンと呼ばれていて、中に入るにはAランクが二人必要だ。……となると」
ロウはちらりと私の胸元のバッチを見る。
「ロザリーのランク更新が必要だな」
「ランク更新ですか!」
Bランクのまま、更新を忘れていました!
ギルドに登録してから時間も経ったから、そろそろ更新してもいい時期のはず。
「そうだな。ランク更新はいずれ必要になるから、この機会に更新しておかないか?」
「もちろん!」
ロウのマントには、Aランクのバッチが光る。
「ロウは更新しなくていいの?」
「お忍びにはAランクぐらいでちょうどいい。俺は必要になれば、いつでもSSSランクのバッチが手に入るからな」
ロウはサラリとそう言った。
なるほど。伝説の勇者パーティのメンバーは格が違うらしい。
「妖精の森は行ったことがあるんでしょ? ということは、前回もダンジョンに入ったんじゃないの?」
「前に行った時は、勇者パーティの一員だったから、ダンジョンには顔パスで入った」
「さすが伝説の勇者パーティね」
「では、ダンジョンに入る前にギルドへ寄っていこうか」
「はい!」
私たちは意気揚々と、ギルドへ向かった。
しかし……。
「討伐実績の証明書はありますか?」
ギルドの受付で、ランク更新の話をすると、受付の人からそう聞き返された。
その受付の人は、私の隣にいるロウが大魔法使いさまとは知らないみたい。
それもそうだ。正装でもないし、髪をセットしているわけでもない。
それに、ロウの胸には実力と異なるAランクのバッチがきらめいているしね。
私に、討伐実績の証明書はなかった。
魔物、ネアトリアンダーをロウとの協力で討伐したことはあるけれど、それは大物すぎて、そもそも証明書はない。
と、ここで私は思い出した。
ギルドで中級の魔物討伐の依頼を受けたことがある!
ロウと一緒に討伐したやつ!
私がその依頼のことを話すと、受付の人は難色を示した。
「中級の魔物討伐は十回以上こなさないと、ランク更新の対象にはなりません」
数をこなさないといけないの?
じゃあ、どうすれば……。
「実戦テストで審査員に判定してもらう方法もあるだろう」
ロウが口を挟んでくれた。要は実践での手合わせだ。
「今はその選択をする方は少ないですが、実戦テストは可能です」
というわけで、私たちはギルドの練習場に来ていた。
広々とした場所には数名の審査員がいて、彼らは鋭い眼差しで、私の実力を見極めようとしている。
「ここで、ランク昇級テストの手合わせをしてもらいます」
受付の人が説明する。
私は頷いた。私の対戦相手はギルドのベテラン戦士であり、その実力は折り紙付き。魔法攻撃を用いる私には、相性が悪い。
でも、魔法の弱点である発動の遅さはカバーできる。これまでの実践の経験で、目が肥えたおかげで相手の攻撃は読めるから。
周囲には、話を聞きつけた他の冒険者も集まり、私たちのテストの様子を見守った。
妖精リアはロウの隣にいて、「頑張って、ご主人さまー!」と声援を送ってくれる。
「始め!」
審査員のその合図と共に、対戦相手が猛然と走り出し、剣を振りかぶってきた。
私はそれを、防御魔法を発動してやり過ごす。
「ほう、なかなか反応速度がいいな」
対戦相手の戦士は、ニヤリと笑った。
「だが、俺の剣技に敵うまい!」
彼は再び剣を振りかぶり、私に斬りかかってきた。私はそれを魔法で防御する。
「まだまだ!」
彼はさらに剣を振るい、私を攻め立てた。
しかし……。
「うおっ!?」
「……魔法が効いたようね」
私は不適に笑う。
彼の攻撃が突然止み、その身体が地面に崩れ落ちた。そして、そのまま動かなくなる。
氷魔法を発動して、対戦相手の体温を奪ったのだ。血液を内部から直接冷やすため、急速に体温が下がる。
防御魔法は同時に放った氷魔法のカモフラージュだった。それは大成功。
「私の勝ちですね?」
私は対戦相手に問いかけると、彼は目を回して反応がなかった。
彼の仲間が駆け寄り、身体を揺らすと、目を覚ました。そして彼は仲間から左右を支えられながら、観客席へ引き上げられていく。
審査員たちが顔を合わせた。
「今のは……」
「魔法だな」
そんな声がちらほら聞こえる。
「これでランク昇級テストは終了です」と審査員が宣言した。
「結果は……全会一致でロザリーさまは、Aランク認定合格です」
私は軽く息をつき、喜びを噛みしめた。正式に実力を認められた。
審査員たちもその圧倒的な力に驚きを隠せないようだ。
「一つずつしかランクが上がらないからAランクだが……その実力は遥にAランク以上だ」
審査員の一人が感嘆の声を上げた。
でも、私はそれで満足だった。
そもそも、魔物、ネアトリアンダーを討伐した時点で、SSSランクはもらえるはずだけど……。
私は後ろを振り返る。満足げな顔のロウと、嬉しそうに飛び跳ねるリア。
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……だって、ロウとお揃いなんだもん。
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