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第三部 竜の棲む村編
74 私の望みは
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私そっくりに変装した魚たちの中から、すぐに本物の私を見抜いた。姿だけでなく声も一緒。
手がかりがないのに、ロウはどうやって区別したの?
「なぜわかった……?」
疑問に思ったのは竜神さまも同じだったようで、呆然と呟いた。
「簡単なことだ。ロザリーの服を作ったことがあるからな。お面をしたところで体の輪郭は隠しきれていない。俺にしてみれば、遠目でも一目瞭然だ」
ロウは自信満々にそう言った。
そういえば、ウサ耳とメイド服をプレゼントされたことがあったわね。ウサ耳の名残がこのカチューシャなんだけど。
体の輪郭……とは言っても、ガウンのような服は体型をスッポリと隠す。
……うーん、おかしいわ。やっぱり、ロウの目がおかしいのよ。
サイズを聞かれてもいないのに、ピッタリのメイド服を作れるなんて。あのときは不思議に思ったけれど、見ただけでサイズがわかってしまう人なんだわ! 服屋でもない限り、必要のないスキルだけどね!
体のサイズを知られてしまうのは、女性としては恥ずかしいことなんだけど……。
ロウの特技が発揮できてしまうとはね。
無事に当ててくれたことだし、このお面は外してもいいよね。
狐のお面を外すと、目の前にロウの姿があった。
「ロウ、見つけてくれてありがとう」
「……どういたしまして」
私がニコリと微笑むと、その笑顔にロウは毒気を抜かれたような顔をした。
「……では、約束通り、ロザリーを返してもらおうか」
ロウが竜神さまに詰め寄ると、悔しげな竜神さまだったけれど、ようやく観念した。
「……わかりました。体型でわかってしまうとは私の想定外でしたが、この勝負はロウの勝ちです」
竜神さまの言葉に、何か引っかかりを覚えた様子のロウは口を開いた。
「『この勝負は』って勝負はこの一度きりでいいよな? 後からゲームを追加されても、最初からそんな話はなかったから、フェアじゃないのでは?」
「はい。勝負はこれきりです。……約束はしっかりと守ります」
これで言質は取れた。やっと地上に戻れる。
海藻を食べていないロウは、ただでさえ呼吸がしづらいはずだ。早く帰らないと。
地上に帰る前に、竜神さまに願いごとを伝えないと……。
願いごとは何にしようかな。
竜の背中に乗ることには今も憧れはあるけれど、今も人型の竜神さまに会っているから竜に会う目的そのものは達成しているのよね。
そうだ、いいこと思いついた! 竜の姿を見せてほしいと頼めばいいのよ!
そうよ。それくらいなら気兼ねなく頼みやすいわ!
「昔、ロザリーに助けてもらったお礼に望みを叶える約束をしていたんです。考えると言っていた望みは決まりましたか?」
この場にいるロウにも話がわかるように、竜神さまは言った。
帰る前に願いごとを伝えなくては。
「決まりました。竜神さまの……」
竜になった姿を見せてください。
そう言おうと瞬間に、ロウから手を引かれた。
「ロザリーの願いごとくらい俺が叶えてやる。だから、もう行こう」
ロウから有無を言わせないような強い視線で見つめられた。握り締める手にはギュッと力が込められている。
「……わかったわ」
ロウが強くそう言うのだから、おとなしく諦めることにした。
得体の知れない竜神さまには、一切関わるなということだろうか。
ロウの気持ちもわからなくはない。
きっと嫉妬の中から出た言葉で、敵の手の内から早く離れたいのだろう。
竜神さまは私の言葉に放心状態で、その場に立ち尽くしたままだ。
さよならも言わずに、そのままロウから手を引かれると、周囲にいた私の変装をしているドジョウの集団がサッと横に避けた。
ドジョウたちが避けたことでできた道を、私とロウが手を繋いだまま歩いていく。
「――待ってください!」
この広間を出るところで、我に返った竜神さまが叫んだ。
手がかりがないのに、ロウはどうやって区別したの?
「なぜわかった……?」
疑問に思ったのは竜神さまも同じだったようで、呆然と呟いた。
「簡単なことだ。ロザリーの服を作ったことがあるからな。お面をしたところで体の輪郭は隠しきれていない。俺にしてみれば、遠目でも一目瞭然だ」
ロウは自信満々にそう言った。
そういえば、ウサ耳とメイド服をプレゼントされたことがあったわね。ウサ耳の名残がこのカチューシャなんだけど。
体の輪郭……とは言っても、ガウンのような服は体型をスッポリと隠す。
……うーん、おかしいわ。やっぱり、ロウの目がおかしいのよ。
サイズを聞かれてもいないのに、ピッタリのメイド服を作れるなんて。あのときは不思議に思ったけれど、見ただけでサイズがわかってしまう人なんだわ! 服屋でもない限り、必要のないスキルだけどね!
体のサイズを知られてしまうのは、女性としては恥ずかしいことなんだけど……。
ロウの特技が発揮できてしまうとはね。
無事に当ててくれたことだし、このお面は外してもいいよね。
狐のお面を外すと、目の前にロウの姿があった。
「ロウ、見つけてくれてありがとう」
「……どういたしまして」
私がニコリと微笑むと、その笑顔にロウは毒気を抜かれたような顔をした。
「……では、約束通り、ロザリーを返してもらおうか」
ロウが竜神さまに詰め寄ると、悔しげな竜神さまだったけれど、ようやく観念した。
「……わかりました。体型でわかってしまうとは私の想定外でしたが、この勝負はロウの勝ちです」
竜神さまの言葉に、何か引っかかりを覚えた様子のロウは口を開いた。
「『この勝負は』って勝負はこの一度きりでいいよな? 後からゲームを追加されても、最初からそんな話はなかったから、フェアじゃないのでは?」
「はい。勝負はこれきりです。……約束はしっかりと守ります」
これで言質は取れた。やっと地上に戻れる。
海藻を食べていないロウは、ただでさえ呼吸がしづらいはずだ。早く帰らないと。
地上に帰る前に、竜神さまに願いごとを伝えないと……。
願いごとは何にしようかな。
竜の背中に乗ることには今も憧れはあるけれど、今も人型の竜神さまに会っているから竜に会う目的そのものは達成しているのよね。
そうだ、いいこと思いついた! 竜の姿を見せてほしいと頼めばいいのよ!
そうよ。それくらいなら気兼ねなく頼みやすいわ!
「昔、ロザリーに助けてもらったお礼に望みを叶える約束をしていたんです。考えると言っていた望みは決まりましたか?」
この場にいるロウにも話がわかるように、竜神さまは言った。
帰る前に願いごとを伝えなくては。
「決まりました。竜神さまの……」
竜になった姿を見せてください。
そう言おうと瞬間に、ロウから手を引かれた。
「ロザリーの願いごとくらい俺が叶えてやる。だから、もう行こう」
ロウから有無を言わせないような強い視線で見つめられた。握り締める手にはギュッと力が込められている。
「……わかったわ」
ロウが強くそう言うのだから、おとなしく諦めることにした。
得体の知れない竜神さまには、一切関わるなということだろうか。
ロウの気持ちもわからなくはない。
きっと嫉妬の中から出た言葉で、敵の手の内から早く離れたいのだろう。
竜神さまは私の言葉に放心状態で、その場に立ち尽くしたままだ。
さよならも言わずに、そのままロウから手を引かれると、周囲にいた私の変装をしているドジョウの集団がサッと横に避けた。
ドジョウたちが避けたことでできた道を、私とロウが手を繋いだまま歩いていく。
「――待ってください!」
この広間を出るところで、我に返った竜神さまが叫んだ。
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