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第一部 勇者パーティ追放編
28 ロウと酒場へ
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私とロウは酒場へ来ていた。夕暮れ時で、一仕事を終えた冒険者たちで賑わっている。
そもそも、一緒に飲むことになったきっかけは……。
「私も色々と活躍したの。これからパーッと飲みに行かない?」
毎日のように入り浸っている魔道具屋で、自分からロウを誘ったのだ。
ロウに労をねぎらってもらうために、なんちゃって。
「ま、酒が飲めるなら俺はいいが……」
「じゃ、決まり!」
ロウは、断ると私が一人で飲みに行かれるとでも心配したのか、誘いに乗ってくれた。
そんなこんなで酒場へ移動して今に至る。
私たちは案内されてテーブルの二人席に収まった。
「俺は麦酒にするが、お前は何を頼む?」
「私はシードルにするわ」
リンゴの甘いお酒がお気に入りだ。
「見た目だけじゃなくて、味覚も子どもなんだな」
ロウが憎まれ口を叩いてくる。もう! でも、まともに相手したら負けだと経験上わかっている。
「そうやって子ども扱いして! でも、アルコールが入っているのでお酒はお酒ですよ」
「そうと言えばそうだが……」
正論をかざすと、ロウは口を閉ざした。よし成功。
「お待たせしました! 麦酒とシードルですね!」
そうやって軽口を叩いている間に、お盆を持った店員さんが来た。
私はシードルの入った木樽ジョッキを持った。
「では、式典での活躍を記念して、乾杯!」
「乾杯」
軽く木樽ジョッキを合わせて乾杯して、クイッと喉に流し込む。冷たいシードルが身体に染み渡って、美味しい。
「……国王陛下から褒められてよかったな」
不意にロウから嬉しい言葉をもらい、素直に「ありがとう」と受け取っておく。
そうしている間に、私たちのテーブルに足取りのおぼつかない男が近づいて来た。
「おやや。ギルドで会ったお嬢ちゃんじゃねえかー」
現れたのはスキンヘッドの男。かなり飲んでいるなとわかるくらい、酔っ払って顔を赤くさせている。息も酒臭い。うわ、絡まれるのは嫌だな。
「聞いたよー。大魔法使いさまと一緒に戦ったんだよなー? 今度俺とパーティを組まねえか?」
やっぱり絡まれた! 前に冷たく断ったはずなのに、また誘われるなんて。酔っ払いは厄介だ。
返答に困っていると、ロウが木樽ジョッキをドンと机に置いた。
「残念だったな。こいつはすでに俺の相方だ」
ロウの睨みを利かせると、スキンヘッドの男は怯んだ。
「そ、そうか……組んでる奴がいるなら、そう言ってくれよー」
そう言って、背を向けて逃げていく。うわぁ。恐い番犬がいると役に立つわぁ。
「ロウ、ありがとうね」
「別に大したことを言っていないが」
お礼を言うと、ロウはさも当然と言うようにサラッと返してきた。ま、こんなときのために、誘ったのではあるけれど。
会話の切れ目に、店員さんが私たちのテーブルにやってきて、そっと耳打ちしてきた。
「さっきお話が聞こえたんですけど、あなたが大魔法使いさまと一緒に戦われた冒険者さまでしょうか?」
「はい、そうです」
私の返事を聞くと、店員さんは顔を紅潮させた。
「こんなところで会えるなんて。あなたは国の英雄です。私たちのために戦ってくれてありがとうございました!」
握手を求められて、ちらりとロウを見ると「いいんじゃないか?」という視線を受けて、私はそっと手を握り返した。
店員さんが厨房に向かって声を張り上げる。
「店長! こちらのテーブルさん、大魔法使いさまと国を救った英雄です!」
「何!? 英雄が店に来た!? よし、代金はお店持ちにするから、秘蔵の酒を用意するぞ!」
「はい!」
店長さんと店員さんの間で話が進められていく! 店員さんは「ちょっと待ってくださいね!」と言いながらそそくさと店の奥に消えていく。
私も今はシードルなんて可愛らしいお酒を飲んでいるけれど、酒に弱いわけではない。秘蔵のお酒とは気になるし飲んでみたい。
話を聞いた冒険者たちは「大魔法使いさまと共に戦った英雄が来ている!」と騒めいた。
ロウは二杯目の麦酒を飲みながら、店内の様子を静観。
私のことを一目見たいと乾杯の列ができたくらいだ。
「騒ぎになったな」
「そうですか? 賑わっている方が楽しいじゃないですか!」
ロウは静かに飲みたかったのかな? だけど、私はどちらかと言えばワイワイしているのも好きだ。
「こちら店長からの差し入れです。かなり強いお酒なので、少しずつ飲んでくださいね!」
お連れさんということで、ロウにも同じものが振る舞われた。木樽のコップに少量しか入っていない。
ロウが涼しい顔をして飲んでいるから、躊躇いもせず私も一口含んだ。
飲んだ瞬間、頭がカーッと熱くなった。舐めるくらいしか飲んでないのに、強すぎるでしょう! てか、ロウは平気なの?
「ロウは大丈夫なの?」
「ああ、美味いな」
確かに美味しいけれど、頭がクラクラしそう。
「水、頼もうか?」
「……お願いします」
ロウに心配されるとは悔しい! でも無理はするべきじゃない。
水を飲むと、頭がスッキリとしてきた。
そんな時。
「あれ? ロザリー?」
急に、茶色のマントにフードを被った男性から声をかけられた。
そもそも、一緒に飲むことになったきっかけは……。
「私も色々と活躍したの。これからパーッと飲みに行かない?」
毎日のように入り浸っている魔道具屋で、自分からロウを誘ったのだ。
ロウに労をねぎらってもらうために、なんちゃって。
「ま、酒が飲めるなら俺はいいが……」
「じゃ、決まり!」
ロウは、断ると私が一人で飲みに行かれるとでも心配したのか、誘いに乗ってくれた。
そんなこんなで酒場へ移動して今に至る。
私たちは案内されてテーブルの二人席に収まった。
「俺は麦酒にするが、お前は何を頼む?」
「私はシードルにするわ」
リンゴの甘いお酒がお気に入りだ。
「見た目だけじゃなくて、味覚も子どもなんだな」
ロウが憎まれ口を叩いてくる。もう! でも、まともに相手したら負けだと経験上わかっている。
「そうやって子ども扱いして! でも、アルコールが入っているのでお酒はお酒ですよ」
「そうと言えばそうだが……」
正論をかざすと、ロウは口を閉ざした。よし成功。
「お待たせしました! 麦酒とシードルですね!」
そうやって軽口を叩いている間に、お盆を持った店員さんが来た。
私はシードルの入った木樽ジョッキを持った。
「では、式典での活躍を記念して、乾杯!」
「乾杯」
軽く木樽ジョッキを合わせて乾杯して、クイッと喉に流し込む。冷たいシードルが身体に染み渡って、美味しい。
「……国王陛下から褒められてよかったな」
不意にロウから嬉しい言葉をもらい、素直に「ありがとう」と受け取っておく。
そうしている間に、私たちのテーブルに足取りのおぼつかない男が近づいて来た。
「おやや。ギルドで会ったお嬢ちゃんじゃねえかー」
現れたのはスキンヘッドの男。かなり飲んでいるなとわかるくらい、酔っ払って顔を赤くさせている。息も酒臭い。うわ、絡まれるのは嫌だな。
「聞いたよー。大魔法使いさまと一緒に戦ったんだよなー? 今度俺とパーティを組まねえか?」
やっぱり絡まれた! 前に冷たく断ったはずなのに、また誘われるなんて。酔っ払いは厄介だ。
返答に困っていると、ロウが木樽ジョッキをドンと机に置いた。
「残念だったな。こいつはすでに俺の相方だ」
ロウの睨みを利かせると、スキンヘッドの男は怯んだ。
「そ、そうか……組んでる奴がいるなら、そう言ってくれよー」
そう言って、背を向けて逃げていく。うわぁ。恐い番犬がいると役に立つわぁ。
「ロウ、ありがとうね」
「別に大したことを言っていないが」
お礼を言うと、ロウはさも当然と言うようにサラッと返してきた。ま、こんなときのために、誘ったのではあるけれど。
会話の切れ目に、店員さんが私たちのテーブルにやってきて、そっと耳打ちしてきた。
「さっきお話が聞こえたんですけど、あなたが大魔法使いさまと一緒に戦われた冒険者さまでしょうか?」
「はい、そうです」
私の返事を聞くと、店員さんは顔を紅潮させた。
「こんなところで会えるなんて。あなたは国の英雄です。私たちのために戦ってくれてありがとうございました!」
握手を求められて、ちらりとロウを見ると「いいんじゃないか?」という視線を受けて、私はそっと手を握り返した。
店員さんが厨房に向かって声を張り上げる。
「店長! こちらのテーブルさん、大魔法使いさまと国を救った英雄です!」
「何!? 英雄が店に来た!? よし、代金はお店持ちにするから、秘蔵の酒を用意するぞ!」
「はい!」
店長さんと店員さんの間で話が進められていく! 店員さんは「ちょっと待ってくださいね!」と言いながらそそくさと店の奥に消えていく。
私も今はシードルなんて可愛らしいお酒を飲んでいるけれど、酒に弱いわけではない。秘蔵のお酒とは気になるし飲んでみたい。
話を聞いた冒険者たちは「大魔法使いさまと共に戦った英雄が来ている!」と騒めいた。
ロウは二杯目の麦酒を飲みながら、店内の様子を静観。
私のことを一目見たいと乾杯の列ができたくらいだ。
「騒ぎになったな」
「そうですか? 賑わっている方が楽しいじゃないですか!」
ロウは静かに飲みたかったのかな? だけど、私はどちらかと言えばワイワイしているのも好きだ。
「こちら店長からの差し入れです。かなり強いお酒なので、少しずつ飲んでくださいね!」
お連れさんということで、ロウにも同じものが振る舞われた。木樽のコップに少量しか入っていない。
ロウが涼しい顔をして飲んでいるから、躊躇いもせず私も一口含んだ。
飲んだ瞬間、頭がカーッと熱くなった。舐めるくらいしか飲んでないのに、強すぎるでしょう! てか、ロウは平気なの?
「ロウは大丈夫なの?」
「ああ、美味いな」
確かに美味しいけれど、頭がクラクラしそう。
「水、頼もうか?」
「……お願いします」
ロウに心配されるとは悔しい! でも無理はするべきじゃない。
水を飲むと、頭がスッキリとしてきた。
そんな時。
「あれ? ロザリー?」
急に、茶色のマントにフードを被った男性から声をかけられた。
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