勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里

文字の大きさ
上 下
25 / 98
第一部 勇者パーティ追放編

25 招待状が届く

しおりを挟む
 ある朝。郵便受けに新聞を取りに行くと、国王主催のパーティの招待状が届いていた。それには王女陛下を救ったことの感謝と表彰したい旨がしたためられていた。

 招待状の締めくくりに、気になる一文があった。
 
 ――なお、エスコートは大魔法使いに頼んでおいたので、安心して来ると良い。

「エスコートが大魔法使いさま!? 安心なんて、できないわ! ずっと大魔法使いさまと一緒だと考えただけで、変な汗が出ちゃう! ……でも、嬉しい」
「ご主人さま! よかったですね!」

 リアが拍手して喜んでくれた。
 
「これは、ロウに力説したかいがあったかしら」
「どんな風に力説されたんですか?」
「剣術が素晴らしいとか、男気があるとか、褒めまくったのよ! 全部嘘じゃないけどね!」
 
 いいですね! と手放しに同意してくれると思ったのに、遠い目をしたリアから「そうだったんですね……」と少し小さな声で言われた。
 
「何か問題でもあった?」
「いいえ。褒められて嬉しくない人はいないと思いますから、問題などありません!」
 
 無理やり言わせてしまった感じはあったが、リアの返事を聞いて安心した。
 
「そうよね。ロウから私が大魔法使いさまを好きだと伝わって、エスコート役に抜擢されたのかもしれないわ。ダメ元で言ってみるものね」
「楽しみですね」
「大魔法使いさまのお側にいられると思うだけで、嬉しくなっちゃう。楽しみだわ」
 
 想像しただけでワクワクしてきた。
 国王主催のパーティには、クローゼットの奥にしまい込んでいた黒いドレスを着て行こう。聖女のときはアーサーから似合わないと却下された色。今考えれば、なんであんな奴の言うことを聞いてたんだ私。
 もし大魔法使いさまが黒い衣装を着て来られたら、お揃いの色でいいわよね。


 国王主催のパーティに招待されたことを自慢しようと、意気揚々とロウの店に行ったのに、珍しく閉店の看板がかかっていた。
 あれほど、店を空けるわけにはいかないと力説されたというのに……。
 急用でもあったのだろうか。
 その後日も店が閉まっていたり、私に用事があって行けなかったりでロウと顔を合わせない日が続いた。

 
 そして、国王陛下主催のパーティ当日。
 リアにドレスの着用を手伝ってもらい、背中のリボンをギュッと引き締めてもらった。
 
「苦しくないですか?」
「大丈夫よ」
 
 リアは私の前まで飛んできて、出来栄えを見てくれた。
 
「黒いドレス、よくお似合いです」
「色やデザインは気に入っていたのに、聖女っぽくないと言われてずっと着れなかったドレスなの。やっと着ることができたわ」
「それはよかったです!」
 
 姿鏡を見ればおめかしした自分が映る。リアのおかげで、大魔法使いさまと並んでも恥ずかしくないくらいに仕上がった。これもリアの手を貸してくれた化粧のおかげで、少し大人っぽく見える。よし完成。
 家でお留守番をするリアに声をかける。
 
「お手伝いありがとう。リア、行って来るわね!」
「ご主人さま、行ってらっしゃい! 楽しんできてくださいね!」
 
 手を振ってきたリアに、私も振り返す。
 転移魔法を発動させると、王城の入り口に着いた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

処理中です...