6 / 98
第一部 勇者パーティ追放編
06 ロザリーは大魔法使いを中級の魔物討伐に誘う
しおりを挟む
ギルドの掲示板で「中級の魔物討伐」の欄が目に入った。初級の魔物討伐は、畑を荒らすスライム退治等の冒険者でなく一般人でも可能なレベルで、報酬が安い。
問題は、中級の魔物討伐がBランク二人以上を推奨されていることだった。この魔物討伐に協力してくれそうな仲間がいればいいが。
「子どもが出入りする場所じゃねえ。とっとと家に帰ってままごとでもしてな!」
そこにはスキンヘッドの冒険者がいた。
私のことを子ども扱いして……! 十六歳の立派な成人女性よ!
でも、声を掛けてくれるとは、ちょうどいい。胸元の冒険者バッチを見せつけた。
「これを見て、私も冒険者よ。あなた、冒険者ランクがB以上だったら、私と一緒に中級の魔物討伐に行かない?」
「はあああ!? なんで俺が、見ず知らずのお前と!?」
私の突然の勧誘に、冒険者は驚きの声を上げた。
「見ず知らずの人が先に声を掛けてきたのはそちらでしょ? ま、何かの縁だと思って」
「お断りだ!」
あっさりと断られてしまったのが悔しい。
こうなったら。よーし、とっておきの秘策を披露しよう。
「……私の持っている魔道具、大魔法使いさまの御用達の魔道具屋さんで作ってもらったの。それを聞いても同じ態度でいられるかしら?」
もったいぶって言うと、冒険者の顔色が変わった。
「伝説の大魔法使いさま御用達の魔道具屋だって!? そんなこと聞いたことがないぞ!?」
驚いた顔に満足して、私はニコリと笑った。
「聞いたことがないのも当然。特別に仕立ててもらったものなの。ま、私の人脈のおかげですけどね」
話を盛っておくのも忘れずにね。後は私の張った網に引っかかってくれるのを待つだけ。
「……その魔道具、見せてもらえないだろうか?」
よし、引っかかった。冒険者たるもの、魔道具の性能が気になるはずだ。
頭に付けているカチューシャが魔道具だけど、これを餌に釣り上げようかな。
「魔法討伐に参加してもらえるなら、特別に見せてあげなくもないわ」
「わかった参加する!」
「……やっぱり、やめたわ」
「は? なんで?」
その気になっていた冒険者から問いただされる。
簡単に手の平を返せる人って信用ができない。どうせなら心から信用できる人と冒険したい。
一緒にいる人を選ぶ権利くらい私にあるわ。
「こちらから勧誘しておいてなんだけど、人となりをしっかりと見てから組みたいと思ったのよ。でも、あなたはないわ。さようなら」
「はあああ? 黙って聞いていれば、勝手を言いやがって!」
殴りかかってきそうな勢いだったので、やっぱりこちらから断っておいて良かった。乱暴な男は願い下げよ。
* * *
「そんなこんなで、中級の魔物討伐のバディを見つけられなかったのよ……」
私がお悩みを吐き出したのは、例の「大魔法使いさま御用達の魔道具屋」だった。一人で悶々と悩むよりはずっと良い。
ようは、実績がない以上はパーティを組んでもらえる仲間が見つからなかったのだ。私も人を選びたかったし。魔道具で釣るのも、なんだか気が引けたしね。
妖精のリアはフラッと姿を消して、この場にはいない。魔道具屋には珍しいものが多いから、隠れて見物でもしているのかもしれない。
ロウは私の話を適当に聞いているのか、目を瞑ってウンウンと言っているだけだ。
ウンウンと言うくらいなら、解決方法を導いてくれればいいのに。頼りにならないんだから。……でもまあ、他人任せじゃダメだよね。
そうだ! いいことを思いついた。
「ロウ。明日は店を一日休業にして、私と魔物討伐に行かない?」
うん、協力を仰ぐってことは他人任せは他人任せか! でも自ら誘っているんだから大目に見て!
魔道具屋の店主をしているくらいだもの、ちょっとは役に立つはず!
それに、私に足りなかった実績を作れるじゃない!
そんな思惑をよそに、ロウは露骨に嫌な顔をした。
「…………俺?」
と、返事に長い間があった。その後も戸惑いの表情を浮かべている。
「何よ、問題ある?」
睨むと、ロウは納得していないというような顔をした。
「問題も何も……大アリだ。店は空けられない」
「そこをなんとか! 個人経営なんだから融通利かせてよ!」
私が手を合わせて頼み込むと、ロウはやれやれと諦めの吐息を出した。
「まったく……一人で行かれても心配だからな。着いていくよ」
「やった! ありがとう」
私のゴリ押しで、初討伐が決まったのである。
一人で行かれても心配って……ロウは保護者で私は幼児か!
でも、魔道具に詳しいロウが同行してくれるのは、少し安心感があった。
実戦で役立ちそうな、攻撃の魔道具を持っていってくれそうだしね。
まさかこのときは、ロウ持参の便利な魔道具を次々に売りつけられるとは思っていなかったのである。
問題は、中級の魔物討伐がBランク二人以上を推奨されていることだった。この魔物討伐に協力してくれそうな仲間がいればいいが。
「子どもが出入りする場所じゃねえ。とっとと家に帰ってままごとでもしてな!」
そこにはスキンヘッドの冒険者がいた。
私のことを子ども扱いして……! 十六歳の立派な成人女性よ!
でも、声を掛けてくれるとは、ちょうどいい。胸元の冒険者バッチを見せつけた。
「これを見て、私も冒険者よ。あなた、冒険者ランクがB以上だったら、私と一緒に中級の魔物討伐に行かない?」
「はあああ!? なんで俺が、見ず知らずのお前と!?」
私の突然の勧誘に、冒険者は驚きの声を上げた。
「見ず知らずの人が先に声を掛けてきたのはそちらでしょ? ま、何かの縁だと思って」
「お断りだ!」
あっさりと断られてしまったのが悔しい。
こうなったら。よーし、とっておきの秘策を披露しよう。
「……私の持っている魔道具、大魔法使いさまの御用達の魔道具屋さんで作ってもらったの。それを聞いても同じ態度でいられるかしら?」
もったいぶって言うと、冒険者の顔色が変わった。
「伝説の大魔法使いさま御用達の魔道具屋だって!? そんなこと聞いたことがないぞ!?」
驚いた顔に満足して、私はニコリと笑った。
「聞いたことがないのも当然。特別に仕立ててもらったものなの。ま、私の人脈のおかげですけどね」
話を盛っておくのも忘れずにね。後は私の張った網に引っかかってくれるのを待つだけ。
「……その魔道具、見せてもらえないだろうか?」
よし、引っかかった。冒険者たるもの、魔道具の性能が気になるはずだ。
頭に付けているカチューシャが魔道具だけど、これを餌に釣り上げようかな。
「魔法討伐に参加してもらえるなら、特別に見せてあげなくもないわ」
「わかった参加する!」
「……やっぱり、やめたわ」
「は? なんで?」
その気になっていた冒険者から問いただされる。
簡単に手の平を返せる人って信用ができない。どうせなら心から信用できる人と冒険したい。
一緒にいる人を選ぶ権利くらい私にあるわ。
「こちらから勧誘しておいてなんだけど、人となりをしっかりと見てから組みたいと思ったのよ。でも、あなたはないわ。さようなら」
「はあああ? 黙って聞いていれば、勝手を言いやがって!」
殴りかかってきそうな勢いだったので、やっぱりこちらから断っておいて良かった。乱暴な男は願い下げよ。
* * *
「そんなこんなで、中級の魔物討伐のバディを見つけられなかったのよ……」
私がお悩みを吐き出したのは、例の「大魔法使いさま御用達の魔道具屋」だった。一人で悶々と悩むよりはずっと良い。
ようは、実績がない以上はパーティを組んでもらえる仲間が見つからなかったのだ。私も人を選びたかったし。魔道具で釣るのも、なんだか気が引けたしね。
妖精のリアはフラッと姿を消して、この場にはいない。魔道具屋には珍しいものが多いから、隠れて見物でもしているのかもしれない。
ロウは私の話を適当に聞いているのか、目を瞑ってウンウンと言っているだけだ。
ウンウンと言うくらいなら、解決方法を導いてくれればいいのに。頼りにならないんだから。……でもまあ、他人任せじゃダメだよね。
そうだ! いいことを思いついた。
「ロウ。明日は店を一日休業にして、私と魔物討伐に行かない?」
うん、協力を仰ぐってことは他人任せは他人任せか! でも自ら誘っているんだから大目に見て!
魔道具屋の店主をしているくらいだもの、ちょっとは役に立つはず!
それに、私に足りなかった実績を作れるじゃない!
そんな思惑をよそに、ロウは露骨に嫌な顔をした。
「…………俺?」
と、返事に長い間があった。その後も戸惑いの表情を浮かべている。
「何よ、問題ある?」
睨むと、ロウは納得していないというような顔をした。
「問題も何も……大アリだ。店は空けられない」
「そこをなんとか! 個人経営なんだから融通利かせてよ!」
私が手を合わせて頼み込むと、ロウはやれやれと諦めの吐息を出した。
「まったく……一人で行かれても心配だからな。着いていくよ」
「やった! ありがとう」
私のゴリ押しで、初討伐が決まったのである。
一人で行かれても心配って……ロウは保護者で私は幼児か!
でも、魔道具に詳しいロウが同行してくれるのは、少し安心感があった。
実戦で役立ちそうな、攻撃の魔道具を持っていってくれそうだしね。
まさかこのときは、ロウ持参の便利な魔道具を次々に売りつけられるとは思っていなかったのである。
56
お気に入りに追加
1,082
あなたにおすすめの小説

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる