勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里

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第一部 勇者パーティ追放編

03 冒険者登録をする

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 攻撃の魔道具を手に入れて、ついにギルドで冒険者登録をすることになった。
 水晶玉に手をかざして能力を測り、冒険者としてランク付けされる。

 ギルドで通された登録窓口で、水晶を前にしてゴクリと唾を飲み込んだ。
 これから私の冒険者の人生が始まる。
 よし! と決意を込めて手をかざすと、水晶に能力値が浮かび上がった。

「Bランクですね」

 そう言われて、登録窓口の担当者は事務的に登録カードに書き込んでいく。

 まずまずだ。一番下がFから最上級のSSSまでの幅がある。ミッションをたくさんこなせばランクも上がっていくが、Bランクからスタートできるのは、ある程度の力を認められたのだろう。魔道具の力も加味されたに違いない。

 登録が終わると、冒険者の証であるBランクのバッチを受け取った。金色の不死鳥のエンブレムがカッコいいデザイン。
 憧れだったんだよね、冒険者バッチ。勇者パーティの時は、そんなものなかったから。
 バッチの針を胸元に通すと、冒険者になったんだと実感が湧いた。

「ロザリー、冒険者登録おめでとう」
「アルマさま!」

 アルマさまは、私の胸元のバッチを見た。

「Bランクね。やるじゃない」
「そんな。恐れ入ります」
「ところで、あいつの店では変な魔道具を渡されなかった? 貴方みたいな人は余計に心配だわ」

 あいつの店って、あの変態店主の魔道具屋のことですね!
 アルマさまのその心配は見事的中しました。

「メイド服にウサ耳で作られました! 断固拒否しましたけど!」
「やっぱり……」

 アルマさまはあちゃーと手で顔を覆った。
 悪いことばかりではなかったので、フォローを入れよう。攻撃の魔法も使えるようになったから、目的は達成したわけだし。

「でも、このカチューシャが魔道具としての役割があって、その他はただの飾りなんですけれど。カチューシャだけだったら付けてても違和感はないから良かったかなと」

 黒いカチューシャは、まるで体の一部のように髪に収まっている。

「そう……あなたに似合ってるわね」

 アルマさまは笑みを浮かべられて、女である私でも見惚れるくらいだった。

「ありがとうございます」

 嬉しくて頬に熱が集まってくるのを感じる。
 憧れの女性から褒められて眼福です!



 魔道具屋の扉を開けると、カウンターで悠々とコーヒータイムをしている店主が目に入った。
 香ばしいにおいが漂い、カップから温かい湯気が出ている。扉の音に反応して、店主が顔を上げる。

「いらっしゃい……またお前か」

 私はズンズンと店の奥まで進んで、店主の鼻の先にウサ耳の魔道具を突きつけた。

「ウサ耳の魔道具、わざわざウサ耳までくっつける必要はなかったんじゃないの?」
「ああ、そうだよ。お前ならわかると思ったんだ。勇者パーティを追放されたヒーラーのロザリーは、お前のことだろう?」

 けろりと言われて、私は顔をひきつらせた。

「もう! ……でも、見た目はともかく、あなたが作った魔道具のおかげで助かったわ。ウサ耳は取り外して使えたし」
「え? 外しちゃったんだね」

 店主のしょぼんと残念そうな顔。

「当たり前でしょ!」

 可愛そう? いやいや、ウサ耳を付けるように強要された私の方が可愛そうだよ!

「ま、同じ大魔法使いさまのファンのよしみで大目に見るわ。そういえば、あなたの名前は?」
「ええと……」
「名前を呼ぶとき不便じゃない。教えてほしいわ」

 店主は少し言い淀んで、口を開いた。何か、不都合でもあるのだろうか。

「ロウ、だ」
「ロウね。私は知っての通りロザリー。よろしくね」

 ロウはあだ名かな。ま、呼びやすいし特に問題もないか。

「その冒険者バッチ……」

 ロウは私の胸元に視線をやった。もう気づくとはお目が高い。

「そうなの! さっき冒険者登録したところよ」
「Bランクだったんだな」
「ええ。結構凄いでしょ」

 私がどや顔で胸を張ると、ロウは首をかしげた。

「Bランクって微妙な位置だよな……」
「微妙!?」

 最下位でもないし上位でもない。簡単に言えば、中の上がBランクだ。上級者になる一歩手前という感じだろうか。

「でも、これから依頼をこなせば上がっていくわ!」
「そうか? ……まあ頑張れよ」

 Bランクに満足せず、これからもっともっと強くならなければ!

 ただ、ギルドの水晶玉を疑っているわけではないけど、私の力が未知数だというのは否めない。Bランクは妥当だけど、トップクラスのSランク冒険者がどんなものなのか想像がつかないのだ。

「ねえ、SSSランクって知ってる?」

 私はロウに尋ねた。

「ああ……伝説だな」

 SSSランクとは、魔王を倒したとされる勇者のみに与えられる称号。

「もしいたらどうする?」
「案外、近くにいたりして……」
「え?」

 ロウがボソボソと呟いて全然聞き取れなかったので、私は聞き返した。

「いや、何でもない……」
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