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休日の終わり
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どのフロアより混み合っていたお惣菜コーナーで、いくつかのお店をまわって幾分買いすぎな位のおかずとサラダと、ご飯を炊いてなかったので代わりにパンを買った。
二人とも両手にさげていたビニール袋や紙袋を車の後部座席に置いたあと、優太さまが自然に運転席についたので私はまた助手席に座ることになった。
優太さまが車のキーを差し込んだときちょうど、優太さまの胸ポケットから携帯電話の着信音が車の中に鳴り響く。
「ごめん、ちょっと待っててね」
私が頷くと優太さまはポケットから携帯電話を取り出しながら車を降りた。
しばらく車の脇で話していたが、すぐに戻ってくる。
「お電話、大丈夫ですか。やはり私が運転して、優太さまはお電話をされたほうが……」
「いいの、いいの。家についたら掛け直すことにしたから。それに今日は、デートだから緊急の用件以外はかけるなって言ってあるんだ。もう他にかかってこないと思うし」
優太さまは手元で操作している携帯電話を見ていたので、思わず返す言葉を失ってしまった私に気がつかなかった。
たしかに優太さまの携帯電話はいつももっと頻繁に鳴っているのに、今日は全く着信がなかった。
「あ、でも。やっぱり……章人がよければ、帰る間スピーカーで電話しててもいいかな?」 「も、もちろんです」
私がなんとか答えると、優太さまは「ありがとう」と頷いて、携帯電話を車のスピーカーに繋いだ。
優太さまは電話の発信ボタンを押してからエンジンをかけた。
すぐに仕事の通話が始まり、私は物音を立てないようにと注意しながら、会話も耳に入れないようにと、窓の外の景色ばかり眺めていた。
太陽は建物の陰に沈んでいて、真っ赤な空の色がすれ違う車の窓に反射していた。
今日は初めてのことばかりだった。
オーダーメイドのスーツを買いにいったのも、映画館で映画を観たのも、だれかの運転する助手席に乗ったのも。
優太さまに出会ってから、私はまるで……。
「章人、章人」
そっと肩を揺らされて、目を覚ます。
窓に寄りかかって眠っていた私は、飛び上がって背筋を正す。
陽はすっかり沈み、車はマンションの駐車場に到着していた。
「っ……す、すみません…っ!私、眠ってしまって…」 「いいんだよ。今日は一気にいろいろ連れまわしちゃったし。今のすみませんも聞かなかったことにしてあげる」
私は恐縮したまま黙って頭をさげると、優太さまは声をあげて笑った。
「さ、もうお腹すいたよね。部屋まで頑張って荷物運んで、早く夕ご飯にしよう」
すぐに車を降りて私より多く買い物袋を持とうとする優太さまを押しとどめて、なんとか両手に持てるだけの袋を携える。
「優太さま」
マンションのエントランスを抜けて、エレベーターを待つ間、私は思いきって自分から口をひらく。
「なに?」 「あの、今日はありがとうございました。優太さまと一緒に1日過ごせて…本当に楽しかったです」
優太さまはちょっと驚いたような顔をしてそれから、目を細めて笑う。
「そう、それならよかった。また休みが取れたら、一緒にお出かけしようね」 「はいっ」
こんなに素直になれたのは、優太さまのおかげだ。
優太さまに出会ってから私はまるで、幼い頃の自分に戻っている気がする。
二人とも両手にさげていたビニール袋や紙袋を車の後部座席に置いたあと、優太さまが自然に運転席についたので私はまた助手席に座ることになった。
優太さまが車のキーを差し込んだときちょうど、優太さまの胸ポケットから携帯電話の着信音が車の中に鳴り響く。
「ごめん、ちょっと待っててね」
私が頷くと優太さまはポケットから携帯電話を取り出しながら車を降りた。
しばらく車の脇で話していたが、すぐに戻ってくる。
「お電話、大丈夫ですか。やはり私が運転して、優太さまはお電話をされたほうが……」
「いいの、いいの。家についたら掛け直すことにしたから。それに今日は、デートだから緊急の用件以外はかけるなって言ってあるんだ。もう他にかかってこないと思うし」
優太さまは手元で操作している携帯電話を見ていたので、思わず返す言葉を失ってしまった私に気がつかなかった。
たしかに優太さまの携帯電話はいつももっと頻繁に鳴っているのに、今日は全く着信がなかった。
「あ、でも。やっぱり……章人がよければ、帰る間スピーカーで電話しててもいいかな?」 「も、もちろんです」
私がなんとか答えると、優太さまは「ありがとう」と頷いて、携帯電話を車のスピーカーに繋いだ。
優太さまは電話の発信ボタンを押してからエンジンをかけた。
すぐに仕事の通話が始まり、私は物音を立てないようにと注意しながら、会話も耳に入れないようにと、窓の外の景色ばかり眺めていた。
太陽は建物の陰に沈んでいて、真っ赤な空の色がすれ違う車の窓に反射していた。
今日は初めてのことばかりだった。
オーダーメイドのスーツを買いにいったのも、映画館で映画を観たのも、だれかの運転する助手席に乗ったのも。
優太さまに出会ってから、私はまるで……。
「章人、章人」
そっと肩を揺らされて、目を覚ます。
窓に寄りかかって眠っていた私は、飛び上がって背筋を正す。
陽はすっかり沈み、車はマンションの駐車場に到着していた。
「っ……す、すみません…っ!私、眠ってしまって…」 「いいんだよ。今日は一気にいろいろ連れまわしちゃったし。今のすみませんも聞かなかったことにしてあげる」
私は恐縮したまま黙って頭をさげると、優太さまは声をあげて笑った。
「さ、もうお腹すいたよね。部屋まで頑張って荷物運んで、早く夕ご飯にしよう」
すぐに車を降りて私より多く買い物袋を持とうとする優太さまを押しとどめて、なんとか両手に持てるだけの袋を携える。
「優太さま」
マンションのエントランスを抜けて、エレベーターを待つ間、私は思いきって自分から口をひらく。
「なに?」 「あの、今日はありがとうございました。優太さまと一緒に1日過ごせて…本当に楽しかったです」
優太さまはちょっと驚いたような顔をしてそれから、目を細めて笑う。
「そう、それならよかった。また休みが取れたら、一緒にお出かけしようね」 「はいっ」
こんなに素直になれたのは、優太さまのおかげだ。
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