30 / 43
30.増えたペガサスに驚くブリジット
しおりを挟む
この日も聖水や薬を作ってると、懐かしい人物がやってきた。
小隊長のブリジットと同僚のルドヴィーカである。
彼女たちは、人魚たちに案内されながら僕の前に姿を見せたが、僕の側に4頭のペガサスがいることに驚いていた。
『久しいな、ブリジット殿にルドヴィーカ』
ブリジットは表情を戻して僕を見た。
「サイレンスアロー殿、そこにいるペガサスは?」
『彼らか……交易をしているウェアウルフの部族がたまたま保護していたという話を聞いたので、3頭を買い戻した。残りの1頭は偶然マーメイドの1人が見つけてくれた』
その話を聞いたブリジットは、少しペガサスを見て言った。
「……その天馬の中には、王国の天馬もいるのでは?」
『念のためにおいを確認してみたが、3頭はマーズヴァン帝国が所有していた天馬だ。1頭は貴殿の言う通り、吾の故郷である有翼人の村で生産された天馬で間違いない』
「……では、その故郷の村の天馬だけでも返還して欲しいのですが?」
元上司のお願いでも、さすがにタダでは作業に協力してくれているマーメイドたちも不満に思うだろう。
少し交渉してみることにした。
『この1頭を取り返すだけでも、こちらも金銭に近いものを支払っている。報奨金のようなモノが出るのなら受け取りたいのだが?』
「なるほど……では、経費という形で軍に請求してみましょう。何を対価として支払ったのでしょうか?」
僕は対象となっている牝馬の費用を出した。
ユニコーンの聖水30。ユニコーンの軟膏20。そこにはビンの代金も含まれている。
『サンプルとして、聖水1と軟膏1を持って行って欲しい』
聖水と軟膏をみたブリジットは、目を見開いてそれらの品を眺めていた。どうやら僕が思っている以上に高価なシロモノだったようである。
「こ、これは……高そうですな……」
隣で見ていたエルフのルドヴィーカも、真顔で言っている。
「ルドヴィーカさん、貴方は軟膏の方を持ってください」
「承知!」
ブリジットたちは聖水と軟膏を持ち帰ると、後日……軍から予算が下りたらしく、有翼人をひとり連れて再び僕の前へとやってきた。
しかもその人物って……父エドモンだったのである。
「久しぶりだな、きちんと弓の修業はしているのか?」
イネスはすぐに「はい」と即答したが、僕は正直言えば……しばらくサボっている。
『父上、プライベートの話よりも前に、話し合わなければならない話題があるのでは?』
そう切り返すと、エドモンは少し心配そうな表情で僕を眺めてきた。いつの間にか人格が変わったと思っているんだろう。
「ああ、そうだな……ではブリジット隊長」
「は、はい……」
ブリジット隊長は、たくさんのコインの音がする袋を出しながら言った。
「聖水と軟膏の純度や効果を見てもらったところ、聖水30、軟膏20となれば……聖水1で小金貨1枚。軟膏1で小金貨1枚と大銀貨5枚という査定になりました」
物価などから考慮して、小金貨は10万円相当。大銀貨は1万円相当だろう。
まあ600万円になるが、ペガサスを普通の牧場で買おうとしたら、安くても3000万円。高いものになると1億円はするのだから、大分良心的だと個人的には思う。
『確かに受け取った……では父上、このペガサスを連れ帰ってください』
「きっちり商売するな。ところで他の天馬は売らないのか?」
『ここは天馬基地にする予定なのです。ならば、予備の天馬が必要です』
「なるほど……」
初めて来た父とは違い、ブリジット隊長は僕が保護している天馬を眺めていた。
実はこの数日の間に、更に2頭の天馬を見つけており、1頭連れて帰ったとしても5頭がいることになる。
「……ちなみに、そちらの2頭の天馬は、前に来たときにはいませんでしたよね?」
『さすがはブリジット隊長だ。片方は王国軍の天馬だ』
「牡馬……ということはお高いですよね?」
『これは吾も買い戻すのには苦労した。聖水50、軟膏30だった』
「なるほど……ではこちらも査定を……」
『そのことなのだが、今回の謝礼は全て大銀貨で頂けないだろうか?』
そう伝えると、側にいたルドヴィーカは不思議そうな顔をしていたが、ブリジットは何かを察した様子で頷いた。
「わかりました。そのように申請してみましょう」
隊長はこの牡ペガサスに関しても、軍に経費を請求し、こちらも簡単に予算が下りて、数日後には銀貨が入った袋を届けに来てくれた。
ブリジット隊長が、そのオスペガサスを連れ帰ったあと、人魚のカロルは不思議そうに言った。
「でも、ツーノッパ王国も律儀ですよね。彼らの武力なら強引に取ろうと思えば奪取することもできるでしょう」
『そうでもないと思うぞ』
「と、仰いますと?」
僕は王国側の身になって答えた。
『ここはツーノッパ王国から見て辺境の土地だからな。こういう地区の人間は、売ろうと思えば外国に高値で売ることもできるし、強引に取ろうとしたらペガサスを傷つけられたり殺される恐れもある』
「そんなことになって、辺境の住民を敵に回すよりも……謝礼金を払って、回収に協力してもらった方がいい……ということですか……」
『恐らく、上層部はそう考えているのだろう。特にこの辺りの住民は武装していることも多いしな』
そう言いながら僕は、イネスに金貨や銀貨の入った袋を開かせると、人魚たちに言った。
『皆の者、様々な作業に協力してくれて感謝する。その働きに応じて謝礼を払うゆえ……名前を呼ばれた者から来なさい』
こうして僕は彼女たちに、働きに応じたコインを振る舞うことにした。
特に統率をしてくれた長老のメラニー、ビンを作ってくれたロクサーヌには多くの謝礼を払い、彼女たちはとても満足してくれた。
【サンプルで渡した聖水と薬】
小隊長のブリジットと同僚のルドヴィーカである。
彼女たちは、人魚たちに案内されながら僕の前に姿を見せたが、僕の側に4頭のペガサスがいることに驚いていた。
『久しいな、ブリジット殿にルドヴィーカ』
ブリジットは表情を戻して僕を見た。
「サイレンスアロー殿、そこにいるペガサスは?」
『彼らか……交易をしているウェアウルフの部族がたまたま保護していたという話を聞いたので、3頭を買い戻した。残りの1頭は偶然マーメイドの1人が見つけてくれた』
その話を聞いたブリジットは、少しペガサスを見て言った。
「……その天馬の中には、王国の天馬もいるのでは?」
『念のためにおいを確認してみたが、3頭はマーズヴァン帝国が所有していた天馬だ。1頭は貴殿の言う通り、吾の故郷である有翼人の村で生産された天馬で間違いない』
「……では、その故郷の村の天馬だけでも返還して欲しいのですが?」
元上司のお願いでも、さすがにタダでは作業に協力してくれているマーメイドたちも不満に思うだろう。
少し交渉してみることにした。
『この1頭を取り返すだけでも、こちらも金銭に近いものを支払っている。報奨金のようなモノが出るのなら受け取りたいのだが?』
「なるほど……では、経費という形で軍に請求してみましょう。何を対価として支払ったのでしょうか?」
僕は対象となっている牝馬の費用を出した。
ユニコーンの聖水30。ユニコーンの軟膏20。そこにはビンの代金も含まれている。
『サンプルとして、聖水1と軟膏1を持って行って欲しい』
聖水と軟膏をみたブリジットは、目を見開いてそれらの品を眺めていた。どうやら僕が思っている以上に高価なシロモノだったようである。
「こ、これは……高そうですな……」
隣で見ていたエルフのルドヴィーカも、真顔で言っている。
「ルドヴィーカさん、貴方は軟膏の方を持ってください」
「承知!」
ブリジットたちは聖水と軟膏を持ち帰ると、後日……軍から予算が下りたらしく、有翼人をひとり連れて再び僕の前へとやってきた。
しかもその人物って……父エドモンだったのである。
「久しぶりだな、きちんと弓の修業はしているのか?」
イネスはすぐに「はい」と即答したが、僕は正直言えば……しばらくサボっている。
『父上、プライベートの話よりも前に、話し合わなければならない話題があるのでは?』
そう切り返すと、エドモンは少し心配そうな表情で僕を眺めてきた。いつの間にか人格が変わったと思っているんだろう。
「ああ、そうだな……ではブリジット隊長」
「は、はい……」
ブリジット隊長は、たくさんのコインの音がする袋を出しながら言った。
「聖水と軟膏の純度や効果を見てもらったところ、聖水30、軟膏20となれば……聖水1で小金貨1枚。軟膏1で小金貨1枚と大銀貨5枚という査定になりました」
物価などから考慮して、小金貨は10万円相当。大銀貨は1万円相当だろう。
まあ600万円になるが、ペガサスを普通の牧場で買おうとしたら、安くても3000万円。高いものになると1億円はするのだから、大分良心的だと個人的には思う。
『確かに受け取った……では父上、このペガサスを連れ帰ってください』
「きっちり商売するな。ところで他の天馬は売らないのか?」
『ここは天馬基地にする予定なのです。ならば、予備の天馬が必要です』
「なるほど……」
初めて来た父とは違い、ブリジット隊長は僕が保護している天馬を眺めていた。
実はこの数日の間に、更に2頭の天馬を見つけており、1頭連れて帰ったとしても5頭がいることになる。
「……ちなみに、そちらの2頭の天馬は、前に来たときにはいませんでしたよね?」
『さすがはブリジット隊長だ。片方は王国軍の天馬だ』
「牡馬……ということはお高いですよね?」
『これは吾も買い戻すのには苦労した。聖水50、軟膏30だった』
「なるほど……ではこちらも査定を……」
『そのことなのだが、今回の謝礼は全て大銀貨で頂けないだろうか?』
そう伝えると、側にいたルドヴィーカは不思議そうな顔をしていたが、ブリジットは何かを察した様子で頷いた。
「わかりました。そのように申請してみましょう」
隊長はこの牡ペガサスに関しても、軍に経費を請求し、こちらも簡単に予算が下りて、数日後には銀貨が入った袋を届けに来てくれた。
ブリジット隊長が、そのオスペガサスを連れ帰ったあと、人魚のカロルは不思議そうに言った。
「でも、ツーノッパ王国も律儀ですよね。彼らの武力なら強引に取ろうと思えば奪取することもできるでしょう」
『そうでもないと思うぞ』
「と、仰いますと?」
僕は王国側の身になって答えた。
『ここはツーノッパ王国から見て辺境の土地だからな。こういう地区の人間は、売ろうと思えば外国に高値で売ることもできるし、強引に取ろうとしたらペガサスを傷つけられたり殺される恐れもある』
「そんなことになって、辺境の住民を敵に回すよりも……謝礼金を払って、回収に協力してもらった方がいい……ということですか……」
『恐らく、上層部はそう考えているのだろう。特にこの辺りの住民は武装していることも多いしな』
そう言いながら僕は、イネスに金貨や銀貨の入った袋を開かせると、人魚たちに言った。
『皆の者、様々な作業に協力してくれて感謝する。その働きに応じて謝礼を払うゆえ……名前を呼ばれた者から来なさい』
こうして僕は彼女たちに、働きに応じたコインを振る舞うことにした。
特に統率をしてくれた長老のメラニー、ビンを作ってくれたロクサーヌには多くの謝礼を払い、彼女たちはとても満足してくれた。
【サンプルで渡した聖水と薬】
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】淑女の顔も二度目まで
凛蓮月
恋愛
カリバー公爵夫人リリミアが、執務室のバルコニーから身投げした。
彼女の夫マクルドは公爵邸の離れに愛人メイを囲い、彼には婚前からの子どもであるエクスもいた。
リリミアの友人は彼女を責め、夫の親は婚前子を庇った。
娘のマキナも異母兄を慕い、リリミアは孤立し、ーーとある事件から耐え切れなくなったリリミアは身投げした。
マクルドはリリミアを愛していた。
だから、友人の手を借りて時を戻す事にした。
再びリリミアと幸せになるために。
【ホットランキング上位ありがとうございます(゚Д゚;≡;゚Д゚)
恐縮しておりますm(_ _)m】
※最終的なタグを追加しました。
※作品傾向はダーク、シリアスです。
※読者様それぞれの受け取り方により変わるので「ざまぁ」タグは付けていません。
※作者比で一回目の人生は胸糞展開、矛盾行動してます。自分で書きながら鼻息荒くしてます。すみません。皆様は落ち着いてお読み下さい。
※甘い恋愛成分は薄めです。
※時戻りをしても、そんなにほいほいと上手く行くかな? というお話です。
※作者の脳内異世界のお話です。
※他サイト様でも公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる