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17.戦後処理と新たな仲間の噂

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 まもなく僕は、ブリジット小隊長と、彼女の上司である中隊長に直談判していた。
 理由はもちろん、僕の撃墜数を全てイネスに譲るためだ。

 話を聞いた中隊長は、とても困った顔をしている。
「長年、隊長をしているけど……こんなことを言われたのは初めてだよ……」
「あくまで、僕はオマケなんです」
「いや、でも……ペガサスたちは、君が倒したと証言しているし……」


 僕は更に篤く、なぜイネスに撃墜数を譲るべきなのかを語ることにした。
 今は確かに人間なのだが、戦っている時はウマである。
 ウマが敵の天馬騎士を蹴り倒した時も、騎士の撃墜と判定されるのだから、僕のケースもそうすべき。

 中隊長は、難しい顔をしたまま唸った。
「君の言っていることは、わかるような気もするが……人間がウマ変身した時は、例外規定が適用されるんだよ」
「では、リュド&イネスという形で公表しては?」


 ブリジット小隊長が提案すると、中隊長はおっ……と言いたそうに口を開いてから、ブリジットを見た。
「その手があったね……常に一緒に行動しているのだから、今度からそうしよう!」

 こうして、僕とイネスの撃墜スコアは、まとめて張り出されることになったが、個人的には名前の並び方が気に入らない。
「…………」
 騎士はイネスなんだから、イネス&リュドではないだろうか。なんだかモヤモヤするが、これ以上直談判してもうるさい奴と思われるだけだろうしなぁ……
 しょうがない。我慢しよう。


 とにかく、イネス&リュドのペアは、敵天馬騎士3騎を撃墜し、2騎を墜落させるという、初心者にしては上出来な戦果を挙げた。
 そして僕自身も、背中の数字をチェックすると、レベルも28まで上がり、ステータスもたくましくなっている。

 鏡で背中を見てみると、こんな感じだった。

名前:リュドヴィック
種族:ヒューマン16歳
アビリティA:ユニコーンケンタウロス
アビリティB:メンタルタイマー


レベル  28
HP  381 / 381
LP    5 /   5
MP  114 / 251


 だいぶMPも増えて融通が利くようになったと喜んでいると、ちょうどイネスもやってきた。
「お兄ちゃん、自分のステータスを見てるの?」
「ああ、自分の実力はよく理解しておかないとな」

 そう伝えると、イネスも頷く。
「ちなみに、私はこんな感じだよ」

 おいおい、とは思ったがここは自宅なので、まあ誰が見ているわけでもないからいいか。
 彼女の背中には、こんなことが書かれていた。


名前:イネス
種族:ウィーフ15歳
アビリティA:フライング


レベル  27
HP  272 / 272
LP    4 /   4
MP  215 / 334


 その数値を見て、すぐに成長率の違いがあることが理解できた。
 イネスのような有翼人の場合、1レベル上がることに得られるHP増加ポイントは2。そしてMP増加ポイントは4という感じだ。
 つまり、元のステータスは、HP220、MP230ということになる。

 僕の1レベルのステータスが、HP300、MP170だったので、種族や性別によってだいぶ能力に違いがあることに驚かされる。


 僕がそんなことを考えていたら、イネスが気になることを口にした。
「そういえば、お兄ちゃんは聞いてるかな?」
「聞いてるって……何をだい?」
「ブリジットが言っていたんだけど、私たちの部隊に新しい天馬騎士が配属されるらしいよ」

 ああ、それは僕も隊長から聞いている。
「ああ、確か……南の島に住んでいたというエルフの天馬騎士だったね」

 そう伝えると、イネスも頷いた。
「そうそう。前にお兄ちゃんがゲットした5頭のペガサスのうち、2頭がオスだったからね。そのうちの1頭が、その天馬騎士とペアを組むことになったみたい」


 その話も隊長から聞いている。
 確か5頭のうち、3頭がメスだったのだけど、本人たちが子供を産んで育てることを希望したため、内地にある繁殖用の牧場へと向かったという。
 まあ、オスは仕事をしなければならないというのは僕たち人間と同じだ。

「しかし、オスもよく軍馬になることを認めたよね。野生馬として生きた方が戦場に行かずに済むのに……」
 そう伝えると、イネスは苦笑しながら答えた。
「私もそう思ったんだけど、オスのペガサスの話では、普段から天馬騎士に色々な世話をしてもらえるし、中には牝天馬持ちの騎士さんもいるんだって」

 なるほど。
 どうやら、戦いに参加しているオス天馬は、豊かな生活と奥さんを手に入れるために戦っているということか。何だか妙に納得した。


【天馬騎士隊の中隊長】
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