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9.天馬騎士を倒して表彰される僕
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ギルドで少し仮眠を取っていると、父エドモンがやってきた。
妹のイネスがすぐに立ち上がると、彼女は驚いた様子でエドモンの隣に立っている人を見ている。
誰なのだろう……って、この人は!
よく見ると、父の隣には村を守っているツーノッパ王国軍の隊長がいた。
「君が、リュドヴィック君だね?」
「は、はい! いつも村を守って下さり……ありがとうございます!」
「お心遣い、感謝するよ。そういう君も……今日は勇気ある行動を見せてくれたね」
どうやら、隊長は僕が敵天馬騎士を撃墜したことを知ったようだ。
あれはまあ……まぐれなんだけど、それを説明しても隊長は、僕に感謝の意を表したいらしい。
「リュド君の勇気を称えて、感謝状を贈ろうと思うんだ。近日中に使いの者を出すから、是非出席して欲しい」
「は、はい……お心遣い感謝いたします」
そうして2日後。僕は王国軍の隊長に呼ばれたのだが、砦の中へと入るとその先には見覚えのある女性騎士が立っていた。
「あ、貴方は……!」
そう。この人は僕がまだ8歳くらいのとき、攫われそうになっていた妹イネスを助けてくれた女性天馬騎士だ。
今となっては、彼女も20代の後半という感じの女性になっていて、以前よりも熟練騎士という雰囲気を纏っている。
「お話は聞いています。リュドヴィック君」
「7年前の敵天馬騎士の初襲来の時は、ありがとうございました!」
そうお礼を言うと、彼女は目をぱっちりと開き、どこかで会ったかしら……と言いたそうに悩んでいた。
僕は慌てて補足する。
「エドモンの娘イネスが、敵天馬騎士に連れ去られそうになっていたとき……助けて頂きましたよね?」
そう伝えると、彼女は思い出すことができたようだ。
「ああ、あの可愛らしい女の子のお兄さんなのですね?」
「そうです。妹のイネスは僕の1つ下で、来年から冒険者ギルドに入ると言っています」
「もしかして、エドモン殿の娘さんということは……弓の扱いが?」
「僕よりも上手だと思います」
その言葉を聞いた、女性騎士は「ご謙遜を……」と言っていたけど、イネスの方が弓矢の扱いに長けているのは本当のことだ。
彼女の天馬騎士になりたいという思いは本物で、僕の中でイネスは一目置く存在になっている。
女性騎士はもう少し僕と話していたそうな感じだったが、視線を時計に向けると少し慌てて言った。
「そろそろご案内しなくては……こちらにどうぞ」
「そ、そうでしたね……お世話になります」
間もなく僕は、隊長の部屋に招かれると、感謝状と一緒にツーノッパ王国の印の刻まれた短剣を1本譲ってもらった。王国をモチーフにした星の印の入ったシロモノだ。
「……身に余る光栄です」
「これからも、故郷のために尽力して欲しい」
たかが天馬騎士を1人倒しただけで……とささやいている同級生はいたが、敵天馬騎士を1人倒すというのは、とても凄いことのようだ。
確かに天馬騎士になるには、高額なペガサスはもちろん、軽量化された鋼鉄製の鎧なども揃えなければならないし、騎士としての訓練はもちろん、天馬に乗って空を自在に飛ぶ特別な訓練も受けなければならない。
おや、ここまで考えると……一人前の天馬騎士を育成するには、どれくらいのお金がかかるのだろう。
なんだか、凄まじい金額になりそうな予感がする。
やがて砦を後にし自宅へと戻ってみると、ドアの先ではイネスがにっこりと笑いながら立っていた。
「待っていたよお兄ちゃん!」
「……ん、早速訓練か?」
「それもあるんだけど、砦に……私の命の恩人はいた?」
ああ、そっちの話かと思いながら僕は頷く。
「ああ、いたよ。一家を代表してお礼を言っておいた」
そのことを伝えると、妹は笑顔になって喜んでいた。
「ありがとう! 本当は直接お礼を言いたかったんだけど……なかなか会う機会がないんだ~」
彼女は空を見上げながら、頬を少し赤らめている。
「敵の天馬騎士が空襲しに来たとき……砦から飛び立つ姿なら、今年だけでも7回は見たけど……あの人は仕事中だから」
彼女の発言を聞いて、何だか……妹が騎士オタクみたいになってきていると感じた。
僕もまあ、前世では騎手とかウマとか、アニメキャラとか、ゲームキャラとか、そういうのが好きで、写真集めたり、フィギュア買ったり、人形買ったりはしてたけどさ。
……もしかして、僕のせいだろうか?
なんだか妹がまだルンルンになっているので、なんとなく腹が立ってきた。
これも僕がシスコンだからだろうなぁ。血のつながりがないから、余計にそういうコンプレックスが強いのかもしれない。
「いつまでもニヤけていないで準備しろ。今日も特訓するんだろ?」
「あ! うん……先に待ってるよ!」
さて、僕も服を脱いでウマ化したら、少し体をほぐしておくか。
【イネスを救った女性天馬騎士】
レベル 67
空中攻撃能力 A ★★★★★★★
地上攻撃能力 C ★★★
攻撃命中率 A ★★★★★★★
防御能力 B ★★★★★★
回避能力 B ★★★★★★
航続距離 B ★★★★★★
探索能力 B ★★★★★
王国の天馬騎士。名前はブリジット。
初陣の頃から実は3度も撃墜されているが、1度は仲間に助けられ、2度は干し草や木に引っかかったなどで助かった幸運の持ち主でもある。
王都の彼女の出身地区では、女性天馬騎士をかたどった置物や、金髪女性天馬騎士の絵画なども売られており、ちょっとしたアイドルのようになっているという話も……
妹のイネスがすぐに立ち上がると、彼女は驚いた様子でエドモンの隣に立っている人を見ている。
誰なのだろう……って、この人は!
よく見ると、父の隣には村を守っているツーノッパ王国軍の隊長がいた。
「君が、リュドヴィック君だね?」
「は、はい! いつも村を守って下さり……ありがとうございます!」
「お心遣い、感謝するよ。そういう君も……今日は勇気ある行動を見せてくれたね」
どうやら、隊長は僕が敵天馬騎士を撃墜したことを知ったようだ。
あれはまあ……まぐれなんだけど、それを説明しても隊長は、僕に感謝の意を表したいらしい。
「リュド君の勇気を称えて、感謝状を贈ろうと思うんだ。近日中に使いの者を出すから、是非出席して欲しい」
「は、はい……お心遣い感謝いたします」
そうして2日後。僕は王国軍の隊長に呼ばれたのだが、砦の中へと入るとその先には見覚えのある女性騎士が立っていた。
「あ、貴方は……!」
そう。この人は僕がまだ8歳くらいのとき、攫われそうになっていた妹イネスを助けてくれた女性天馬騎士だ。
今となっては、彼女も20代の後半という感じの女性になっていて、以前よりも熟練騎士という雰囲気を纏っている。
「お話は聞いています。リュドヴィック君」
「7年前の敵天馬騎士の初襲来の時は、ありがとうございました!」
そうお礼を言うと、彼女は目をぱっちりと開き、どこかで会ったかしら……と言いたそうに悩んでいた。
僕は慌てて補足する。
「エドモンの娘イネスが、敵天馬騎士に連れ去られそうになっていたとき……助けて頂きましたよね?」
そう伝えると、彼女は思い出すことができたようだ。
「ああ、あの可愛らしい女の子のお兄さんなのですね?」
「そうです。妹のイネスは僕の1つ下で、来年から冒険者ギルドに入ると言っています」
「もしかして、エドモン殿の娘さんということは……弓の扱いが?」
「僕よりも上手だと思います」
その言葉を聞いた、女性騎士は「ご謙遜を……」と言っていたけど、イネスの方が弓矢の扱いに長けているのは本当のことだ。
彼女の天馬騎士になりたいという思いは本物で、僕の中でイネスは一目置く存在になっている。
女性騎士はもう少し僕と話していたそうな感じだったが、視線を時計に向けると少し慌てて言った。
「そろそろご案内しなくては……こちらにどうぞ」
「そ、そうでしたね……お世話になります」
間もなく僕は、隊長の部屋に招かれると、感謝状と一緒にツーノッパ王国の印の刻まれた短剣を1本譲ってもらった。王国をモチーフにした星の印の入ったシロモノだ。
「……身に余る光栄です」
「これからも、故郷のために尽力して欲しい」
たかが天馬騎士を1人倒しただけで……とささやいている同級生はいたが、敵天馬騎士を1人倒すというのは、とても凄いことのようだ。
確かに天馬騎士になるには、高額なペガサスはもちろん、軽量化された鋼鉄製の鎧なども揃えなければならないし、騎士としての訓練はもちろん、天馬に乗って空を自在に飛ぶ特別な訓練も受けなければならない。
おや、ここまで考えると……一人前の天馬騎士を育成するには、どれくらいのお金がかかるのだろう。
なんだか、凄まじい金額になりそうな予感がする。
やがて砦を後にし自宅へと戻ってみると、ドアの先ではイネスがにっこりと笑いながら立っていた。
「待っていたよお兄ちゃん!」
「……ん、早速訓練か?」
「それもあるんだけど、砦に……私の命の恩人はいた?」
ああ、そっちの話かと思いながら僕は頷く。
「ああ、いたよ。一家を代表してお礼を言っておいた」
そのことを伝えると、妹は笑顔になって喜んでいた。
「ありがとう! 本当は直接お礼を言いたかったんだけど……なかなか会う機会がないんだ~」
彼女は空を見上げながら、頬を少し赤らめている。
「敵の天馬騎士が空襲しに来たとき……砦から飛び立つ姿なら、今年だけでも7回は見たけど……あの人は仕事中だから」
彼女の発言を聞いて、何だか……妹が騎士オタクみたいになってきていると感じた。
僕もまあ、前世では騎手とかウマとか、アニメキャラとか、ゲームキャラとか、そういうのが好きで、写真集めたり、フィギュア買ったり、人形買ったりはしてたけどさ。
……もしかして、僕のせいだろうか?
なんだか妹がまだルンルンになっているので、なんとなく腹が立ってきた。
これも僕がシスコンだからだろうなぁ。血のつながりがないから、余計にそういうコンプレックスが強いのかもしれない。
「いつまでもニヤけていないで準備しろ。今日も特訓するんだろ?」
「あ! うん……先に待ってるよ!」
さて、僕も服を脱いでウマ化したら、少し体をほぐしておくか。
【イネスを救った女性天馬騎士】
レベル 67
空中攻撃能力 A ★★★★★★★
地上攻撃能力 C ★★★
攻撃命中率 A ★★★★★★★
防御能力 B ★★★★★★
回避能力 B ★★★★★★
航続距離 B ★★★★★★
探索能力 B ★★★★★
王国の天馬騎士。名前はブリジット。
初陣の頃から実は3度も撃墜されているが、1度は仲間に助けられ、2度は干し草や木に引っかかったなどで助かった幸運の持ち主でもある。
王都の彼女の出身地区では、女性天馬騎士をかたどった置物や、金髪女性天馬騎士の絵画なども売られており、ちょっとしたアイドルのようになっているという話も……
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