飛べない妹有翼人と目指すペガサスマスターへの道 ~努力家イネスの夢を叶えるため、転生ニート兄貴は本気出す~

スィグトーネ

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3.妹の決意(前編)

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 時間にして、わずか1秒にも満たないやり取りだった。
 ツーノッパ王国を示す【12聖星の青旗】をたなびかせながら、その天馬騎士はイネスを取り返すと、敵天馬騎士は一瞬にして天馬から落下していく。

 父親エドモンが飛び立つと、王国天馬騎士はイネスをエドモンへと返した。どうやら、そのまま迎撃を開始するようだ。
 彼女だけではない。次々と青い鎧を着こんだ王国天馬騎士たちが応援に駆け付けた。

 その様子を見たマーズヴァン帝国の天馬騎士たちは、次々と撤収を開始すると、ツーノッパ王国の天馬騎士たちも深追いはしなかった。


「大丈夫か? イネス!?」
 そう声をかけると、イネスは頬を赤らめながら僕を見る。
「う、うん……大丈夫……」

 イネスの視線の先を追うと、先ほど彼女を助けてくれた女天馬騎士の姿があった。
 彼女はとても凛々しく、まるでハヤブサが擬人化したかのようにすら見える。そんな彼女は僕たちを見ると、とても優しそうな眼差しを向け、敬礼してくれた。

 僕は思わず返礼せずにはいられなかった。
 彼女が駆け付けてくれなければ、今頃イネスは、あの人さらい軍団に連れ去られてしまっただろう。そうなった時のことを思い浮かべると、冷や汗すら出てくる。


「お互いに無事で良かったよなイネス?」
 そう語り掛けたが、イネスはぼーっとしたまま空を見上げていた。手を振っても反応がないこの姿は、まるで初恋でもしたかのようだ。

 父親も心配そうに言う。
「この様子だと、学校もないだろう。お前たちは家に帰っていなさい」
「はい」


 家へと戻ると、母カリーヌが心配そうな顔をしたまま、僕たちを抱きしめてくれた。
「よかった……2人とも、無事だったんだね!」
「今日は、家でゆっくりさせてもらっていい?」
「怖かったでしょう……ゆっくり休みなさい」


 母の厚意に甘えて家へと戻ると、僕は再び妹のイネスを見た。彼女はやっと正気に戻っていたが、まだ興奮した様子で僕を見てくる。
「おにーちゃん、みてた? あのペガサスナイトの女の人!」
「ああ、見てたよ……カッコよかったよね!」
 そう同意すると、妹はとても嬉しそうに笑いながら「うん!」とうなずいた。

「わたしも……大きくなったら、あーいうカッコイイおねえさんになりたい!」
「あはははは……そうだね。君ならきっとなれると思うよ!」


 僕はこのとき、とても軽く考えていたのだけど……実はイネスは本気だったんだ。
 彼女はこの日を境に、父エドモンから弓の訓練をして欲しいとせがむようになり、その熱意に負けた父は、僕とイネスを呼んで裏庭へと連れてきた。
 ここには、父が非番の日に訓練している的付きの練習場がある。


「弓術は、我ら有翼人が生きていくには必要不可欠な技術だ」
「はい……」
 答えた直後に、父は厳しい顔で言った。
「ただ、これは扱い方を間違えれば、他人の命を奪う。戦い以外では絶対に人に向けるな! 約束できるな?」

 強く返事をしようとしたら、先にイネスがはっきりとした声で「はい!」と答えていた。
 もちろん僕も、同じ気持ちだ。
「約束します。人……特に丸腰の民間人に向けたりはしません!」

 その言葉を聞いて、エドモンは満足そうに頷いた。
「先日の敵天馬騎士のような連中を、我が一族から出したら末代までの恥だからな。お前たちも指導する立場になったら、くれぐれもこのことを念入りに伝えてくれ!」
「はい!」



 イネスは村の中で誰よりも真剣に、弓術を習っていたと思う。
 そのおかげというべきか、メキメキと実力を付けていき、10歳になったときにはロングボウを自在に操るようになり、11歳になるとアロー魔法のひとつ……エイミングショットを覚え、12歳になったときには一般弓使い顔負けの実力をつけるまでになった。

 しかし、実力をつけるほどにイネスは悩ましい表情をすることが多くなっていく。
 実は……彼女は翼の関節があまり強くなく、空からパラシュートのように降りてくることしかできなかった。そのことをとても気にしているらしく、彼女は夜になると、そっと家を抜け出しては丘に行くことが多くなった。

 心配になった僕は、なるべく両親を起こさないように細心の注意を払いながら家を出た。イネスがいる場所は、やはりあそこだろう。


 月明りを頼りにイネスを探すと……この日も丘にいた。
 彼女は13歳。前の世界で言えば中学2年生くらいになっていて、悩ましそうに村を眺める顔はどこか大人びている。
 大きくなったんだなと思いながら近づくと、彼女は僕に視線を向けてきた。
「お兄ちゃん……どうしてここに?」
「お前……わかりやす過ぎだ」


 僕はイネスの側まで近づくと、近くにあった岩に腰掛けた。なるべく穏やかな声で話しかるとしよう。
「……違っていたらごめんな。お前ペガサスライダーになりたいのか?」

 そう問いかけると、妹は目を丸々と開いていた。
「え? お兄ちゃんに……言ったっけ?」
「聞かなくても、ここ数年のお前の態度を見てたらわかるよ」
「あははははは……そうだよね」

 イネスは悩ましい顔をしながら丘へと視線を向けた。そこからは有翼人の村が見える。翼のない僕にとってはただ眺めるだけの場所だ。
「お兄ちゃん……」
「なんだ?」
「飛べない有翼人の私でも……ペガサスライダーになれるよね……?」


 その言葉を聞いて、僕はやはりそう聞いてきたかと感じた。
 結論から言えばかなり難しいと言わざるを得ないだろう。飛べない有翼人が天馬に乗るというのは、泳げない人間が漁師になると言っているようなモノだ。

 このままでは、妹のためにならないと……そう感じたので率直に答える。
「いくらなりたいと願ったモノがあっても……無理なこともある」
「…………」
「僕の背中にはそもそも、翼が無いようにな?」

 彼女をこのまま1人にしておくのは、何だか心配だ。
「戻ろう。お父さんとお母さんが心配する」
「うん……」

 これで、諦めてくれるといいんだけど……そう思いながら、僕は妹を連れて家へと戻った。

【丘にいたイネス】


レベル 1

空中攻撃能力  C ★★
地上攻撃能力  D ★
攻撃命中率   C ★★★

防御能力    D ★
回避能力    C ★★
航続距離    E 
探索能力    C ★★

 主人公リュドヴィックの妹。
 女性天馬騎士に助けられてから、自分も立派な天馬騎士になりたいという強い意志を持っている。
 しかし、生まれつき翼が弱く、医者から空を飛ぶことを禁止されてしまった。

 ちなみに普段は、弓の稽古や勉強をしながら、母の家事なども手伝う生活をしている。
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