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4.冒険者ギルドへ
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間もなくエルフのフォセットと、ジルーたちは隊列を組みなおした。
まず先頭にはウェアウルフのジルー。2番手には魔法戦士の僕。3番手はリーダーのフォセット。4番手はタヌキ耳の弓使いラックドナ。最後尾はネコ族の戦士マーチルという順番だ。
嗅覚や耳の良いジルーが先頭、足の速いマーチルがバックアタック警戒という、よく考えられた隊列だと思う。
「ところで、ソラさん……いえ、あなた」
おや、エルフのフォセットが話しかけてきた。
「なんだい?」
「気絶する直前に見たのですが、あなたのオーラが、キツネとヘビを合成したような生き物の形状になっていましたが……あれは、固有特殊能力ですか?」
固有特殊能力。
名前の通り、この世界の人々が持っている切り札のようなものだったな。少ない人でも1つ、多ければ3つの特殊能力を持っていて、使い込めば使い込んだだけ、威力、射程距離、燃費、発動速度などが強化されるシロモノだ。
才能が眠っていることはあっても、基本的には先天的に生まれ持つもので、後から習得することはできない。
「ああ、そうだよ。名前は……」
何て名前を付けようかと思ったとき、脳内にナインテールという名前が浮かんだ。
その響きを心の中で確認すると、なんだかこれ以外に僕の能力を現す言葉に相応しいモノがないように思える。特に意識しなくても、勝手に答えていた。
「ナインテールというんだ」
そう伝えると、フォセットは厳しい表情をした。
「なるほど。一つ意見させて頂きますが、相手に軽々しく固有特殊能力の能力名は伝えない方がいいです」
「どうして……?」
「あなた自身のフルネームと、技の正式名、髪の毛か爪を手に入れ、あと1つか2つくらい難しめのリスクをクリアすれば、あなた自身を乗っ取ったり、自治自適にコピーしてくる使い手もいます」
「…………」
この技自体は、あの逸れ稲荷からの押し付けられた技だが、借りものだからコピーや収奪できないかと言えば、そんなことはないだろう。
「肝に銘じておくよ……」
まあ、名前に関しては苗字を名乗らなければいいという考えもある。間違えても漢字だけは書かないようにしよう。ソラという漢字の候補はいくらでもあるので、異世界の人間では、推察はほぼ不可能だろう。
「あと、ソラ君……任務中にフォセットのことを隊長とは呼ばないでね。誰が偉いのか山賊に気づかれると厄介だから」
「気を付けるよ」
フォセットたちは土地勘も充分にあるらしく、暗い洞窟もすぐに抜けて樹海へと出た。
先頭にいたジルーは、森を見るとすぐにフォセットに視線を向けてくる。
「フォセット……いつものヤツお願い!」
「わかりました」
そう答えると、何とエルフの弓使いであるはずのフォセットが先頭に立った。配置的におかしいのではないかと思ったが、彼女は耳慣れない呪文のような言葉を口にしていく。
「ゴー、ルードシッ、プ……イッ、シュ、ンデ、ヒャクニ、ジュ、ウ、オクト、カース」
呪文が終わると、目の前に生えていた木々の前に、緑色のトンネルのような空間が現れた。それを見たジルーもまた、嬉しそうに言った。
「これぞエルフワープ!」
「皆さん、くれぐれも私から離れないでください。精霊の道ではぐれれば、岩の中や池の中……場合によっては、異界に投げ出されることもあります」
「うん、わかった!」
フォセットの出したトンネルへと入ると、その先は土の地面だったが、しっかりと足場の安定した森の中の道を進むことができた。実は子供のころに、森の中を歩いたことがあるが、足元は安定しないし、下草は足に絡みついてくるし、水たまりはあるしで、かなり苦労して進んだ覚えがある。
「フォセット、ここって魔物とかは出るのかい?」
「野生動物などは出ませんが、俗に言われているダークエルフの一派が襲撃してくることもあります。気は抜かないでください」
「わ、わかった……」
森ではなく、整った道を進めるだけでも時間短縮になるが、なんとこの精霊の道は、距離そのものも短くなる代物らしい。フォセットは1時間ほど歩いてから再び呪文を唱えると、どこにでもありそうな樹海の獣道へと出た。
「もう少し歩きますが、大丈夫ですか?」
「ああ、特に問題はないよ」
彼女は僕のことを心配してくれていたが、ジルーに暴行を受けた場所は、軽くぶつけたくらいのダメージまで軽減されていた。きっと前世の僕が、しっかりと体づくりをしてくれたのだろう。
フォセットたちと共に森を出ると、冒険者の街の柵が見えてきた。
森とは違って、人の気配も一気に増え、門の前へと行くと一目で兵士と分かる戦士2人が、門の前で番をしている。
「サファイアランスのフォセットです」
彼女はそう言いながらバッジを見せると、兵士は頷いた。
「通っていい」
門を抜けると、その先は畑が目立つ場所だったが、少し視線を奥に向けると少しずつ建物があり、奥の方には中心街と言えそうな場所が見えた。
どうやら、彼女たちのいるサファイアランスというギルドは、冒険者街でも少し郊外にあるようだ。
「つきました」
ギルドの建物自体は、年季の入った外装だったが、敷地自体は広く、特に修練場は力を入れて作られているのがわかった。ギルドメンバーと思しき人は、人魚族の人たちが目立つが、彼らはどこかピリついた様子だ。
「なんか……緊張感のあるギルドだね」
思ったことを口にすると、隣にいたジルーもまた難しい顔をしていた。
「普段はもっと緩いんだ……今日は、演習試合の日なの」
その言葉を聞いて、ますます意味が解らないと思った。
演習試合って、お互いの力を高め合うモノだろう。この空気の張りつめ方は、どちらかと言えば大学受験とか、資格試験とかってレベルの雰囲気だ。
それとも、強い因縁のある試合相手なのだろうか。
【ライカンスロープ】
ヒトとよく似た姿をしているが、獣の耳と尻尾が生えている種族。
嗅覚や聴覚に優れたうえに身体能力も高いが、指先は人間ほど器用ではなく、計算問題や複雑な話などは、理解できないことも珍しくない。
自分の意思で体毛を生やすこともできるが、特に女性は毛だらけになることをはしたないとして、あまり獣人変身はしたがらないようだ(挿絵のように興奮すると、一部が獣化することはある)。
まず先頭にはウェアウルフのジルー。2番手には魔法戦士の僕。3番手はリーダーのフォセット。4番手はタヌキ耳の弓使いラックドナ。最後尾はネコ族の戦士マーチルという順番だ。
嗅覚や耳の良いジルーが先頭、足の速いマーチルがバックアタック警戒という、よく考えられた隊列だと思う。
「ところで、ソラさん……いえ、あなた」
おや、エルフのフォセットが話しかけてきた。
「なんだい?」
「気絶する直前に見たのですが、あなたのオーラが、キツネとヘビを合成したような生き物の形状になっていましたが……あれは、固有特殊能力ですか?」
固有特殊能力。
名前の通り、この世界の人々が持っている切り札のようなものだったな。少ない人でも1つ、多ければ3つの特殊能力を持っていて、使い込めば使い込んだだけ、威力、射程距離、燃費、発動速度などが強化されるシロモノだ。
才能が眠っていることはあっても、基本的には先天的に生まれ持つもので、後から習得することはできない。
「ああ、そうだよ。名前は……」
何て名前を付けようかと思ったとき、脳内にナインテールという名前が浮かんだ。
その響きを心の中で確認すると、なんだかこれ以外に僕の能力を現す言葉に相応しいモノがないように思える。特に意識しなくても、勝手に答えていた。
「ナインテールというんだ」
そう伝えると、フォセットは厳しい表情をした。
「なるほど。一つ意見させて頂きますが、相手に軽々しく固有特殊能力の能力名は伝えない方がいいです」
「どうして……?」
「あなた自身のフルネームと、技の正式名、髪の毛か爪を手に入れ、あと1つか2つくらい難しめのリスクをクリアすれば、あなた自身を乗っ取ったり、自治自適にコピーしてくる使い手もいます」
「…………」
この技自体は、あの逸れ稲荷からの押し付けられた技だが、借りものだからコピーや収奪できないかと言えば、そんなことはないだろう。
「肝に銘じておくよ……」
まあ、名前に関しては苗字を名乗らなければいいという考えもある。間違えても漢字だけは書かないようにしよう。ソラという漢字の候補はいくらでもあるので、異世界の人間では、推察はほぼ不可能だろう。
「あと、ソラ君……任務中にフォセットのことを隊長とは呼ばないでね。誰が偉いのか山賊に気づかれると厄介だから」
「気を付けるよ」
フォセットたちは土地勘も充分にあるらしく、暗い洞窟もすぐに抜けて樹海へと出た。
先頭にいたジルーは、森を見るとすぐにフォセットに視線を向けてくる。
「フォセット……いつものヤツお願い!」
「わかりました」
そう答えると、何とエルフの弓使いであるはずのフォセットが先頭に立った。配置的におかしいのではないかと思ったが、彼女は耳慣れない呪文のような言葉を口にしていく。
「ゴー、ルードシッ、プ……イッ、シュ、ンデ、ヒャクニ、ジュ、ウ、オクト、カース」
呪文が終わると、目の前に生えていた木々の前に、緑色のトンネルのような空間が現れた。それを見たジルーもまた、嬉しそうに言った。
「これぞエルフワープ!」
「皆さん、くれぐれも私から離れないでください。精霊の道ではぐれれば、岩の中や池の中……場合によっては、異界に投げ出されることもあります」
「うん、わかった!」
フォセットの出したトンネルへと入ると、その先は土の地面だったが、しっかりと足場の安定した森の中の道を進むことができた。実は子供のころに、森の中を歩いたことがあるが、足元は安定しないし、下草は足に絡みついてくるし、水たまりはあるしで、かなり苦労して進んだ覚えがある。
「フォセット、ここって魔物とかは出るのかい?」
「野生動物などは出ませんが、俗に言われているダークエルフの一派が襲撃してくることもあります。気は抜かないでください」
「わ、わかった……」
森ではなく、整った道を進めるだけでも時間短縮になるが、なんとこの精霊の道は、距離そのものも短くなる代物らしい。フォセットは1時間ほど歩いてから再び呪文を唱えると、どこにでもありそうな樹海の獣道へと出た。
「もう少し歩きますが、大丈夫ですか?」
「ああ、特に問題はないよ」
彼女は僕のことを心配してくれていたが、ジルーに暴行を受けた場所は、軽くぶつけたくらいのダメージまで軽減されていた。きっと前世の僕が、しっかりと体づくりをしてくれたのだろう。
フォセットたちと共に森を出ると、冒険者の街の柵が見えてきた。
森とは違って、人の気配も一気に増え、門の前へと行くと一目で兵士と分かる戦士2人が、門の前で番をしている。
「サファイアランスのフォセットです」
彼女はそう言いながらバッジを見せると、兵士は頷いた。
「通っていい」
門を抜けると、その先は畑が目立つ場所だったが、少し視線を奥に向けると少しずつ建物があり、奥の方には中心街と言えそうな場所が見えた。
どうやら、彼女たちのいるサファイアランスというギルドは、冒険者街でも少し郊外にあるようだ。
「つきました」
ギルドの建物自体は、年季の入った外装だったが、敷地自体は広く、特に修練場は力を入れて作られているのがわかった。ギルドメンバーと思しき人は、人魚族の人たちが目立つが、彼らはどこかピリついた様子だ。
「なんか……緊張感のあるギルドだね」
思ったことを口にすると、隣にいたジルーもまた難しい顔をしていた。
「普段はもっと緩いんだ……今日は、演習試合の日なの」
その言葉を聞いて、ますます意味が解らないと思った。
演習試合って、お互いの力を高め合うモノだろう。この空気の張りつめ方は、どちらかと言えば大学受験とか、資格試験とかってレベルの雰囲気だ。
それとも、強い因縁のある試合相手なのだろうか。
【ライカンスロープ】
ヒトとよく似た姿をしているが、獣の耳と尻尾が生えている種族。
嗅覚や聴覚に優れたうえに身体能力も高いが、指先は人間ほど器用ではなく、計算問題や複雑な話などは、理解できないことも珍しくない。
自分の意思で体毛を生やすこともできるが、特に女性は毛だらけになることをはしたないとして、あまり獣人変身はしたがらないようだ(挿絵のように興奮すると、一部が獣化することはある)。
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