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28.ウマウマ団。野菜泥棒をする

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 ゴブリンを返り討ちにしたウマウマ団は、不機嫌そうに倒れたゴブリンを睨んでいた。
「くそ、こいつら……昼寝の邪魔はするし、倒しても何の足しにもならねーし!」
「ボス……腹減りました……」
「わかってるって、バーロー!」

 ボスウマは苛立った様子で、人間たちの耕した畑を睨んだ。
「俺達が必死でゴブリンどもを倒しても、けっきょくニンゲンどもの生活が楽になるだけじゃねーか!」
「全くですね!」
「なんで、あいつらばっかりラクできるんですか!?」
「間違ってますよ!」
 グチをこぼすだけのウマウマ団だったが、そのうちの1頭が冗談っぽく言った。
「いっそのこと、畑の作物を拝借する……とか?」
「待てよバカー」
 ウマウマ団のメンバーは笑い合っていたが、ボスウマはマジメな表情をしながら頷いた。
「案外それ……名案かもしれねーぞ?」
「へっ……?」

 間もなくボスウマは、家来のウマたちを引き連れて、畑の近くまで来た。今日は日差しも強いので、農民たちも農作業を休んでいるようだ。
 誰もいない畑を見た家来ウマたちも、色めき立っている。
「おお、いいっすね!」
「人間だけいない、昼の畑なんてサイコー!」
「ボスは、これを見越していたんすか!?」
「おう、こういう日差しの強い日は、人間どもも畑仕事を中断するもんさ」
 得意げに笑っていたボスウマは、やがて言った。
「よし、オマエラぁ……ゴブリン退治の祝賀パーティーだ。根こそぎやっちまえ!」
「応っ!」
 ウマウマ団は、まるでゴロツキや山賊が言いそうなセリフを叫ぶと、一斉に畑に侵入して農作物をバリバリと食い荒らしはじめた。
「よっしゃ~ ニンジンを引き抜け!」
「俺様は、サツマイモだ!」
「こっちには、エダマメがあるぜ!」
「食いたい放題だ! まさしくバイキング!!」

 こいつらは、自分の好きな作物を手当たり次第に引き抜いたりかじったりと、まさしくやりたい放題な様子だ。
 特にニンジン畑の被害が酷く、まさしくニンジン強盗という言葉がぴったりだろう。

 腹ペこウマウマ団が、たらくふ畑の作物を荒らしていると、やがて農民たちが気づいたらしく、縄を持って追いかけてきた。
「こら、この……泥棒ウマども!」
「や、やべっ!」
 まずボスウマが逃げると、次に周りのウマが逃げ出したが、人間も投げ縄を使って、呑気に作物泥棒をしていたウマを3頭ほど捕まえていた。
 捕まったウマは、必死に逃げようとしていたが、すでにクビに縄がかかっている状態なので、逃げることができないようだ。
「この、イタズラウマ!」
「ひぃっ! 放せー!」
「ふざけたことしやがって、今日からたっぷりとこき使ってやるから、ありがたく思え!」
「うわーー、ボスー!」
「台風も近付いてるって、噂だからやることはたくさんあるぞ!」
 こうして7頭いたウマウマ団の数は4頭まで減った。
 次回からは、ボスと取り巻き3頭という形での登場となるので、ゴブリン同様に戦力ダウンしたわけである。

 さすがに小生の群れには、人間の畑に入って勝手に野菜泥棒をするようなアホウマはいないと思うが、人間との揉め事を起こされても困るので、群れへと帰ると、すぐにウマウマ団の話をすることにした。
 ウマウマ団の話をしたとき、青毛娘や彼女の母は作物泥棒の話を聞いてドン引きしていたが、周囲の妹たちや、近くにいた仔馬たちは大笑いし、まさしくお祭り騒ぎになっていった。
「あのウマ共、ざまぁ!」
「3頭もしょっ引かれたなんて、マジで笑えるんだけど!」
「たっぷりと、人間たちに再教育されるといいな~」

 みんなすっかりご機嫌な様子だったが、人間と揉め事を起こして欲しくはないので、念には念を押しておくことにした。
「あの7頭のバカが余計なことをしたから、多分……人間たちもしばらくは警戒していると思う。人間の集落の近くを歩くことは無いと思うけど、くれぐれも野菜泥棒に間違われないように……できれば近づかないように気を付けて欲しい」
 そう伝えると、仔馬たちはニヤニヤと笑いながら答えた。
「わかった。あの3頭がこき使われてるところを見たいけどガマンする~」
「再教育されてるところ見たいけど、ガマンするよ~」
「4頭だけになってる、ウマウマ団を見たいけど、ガマンする~」

 こうやって見ていると、散々な言われようである。


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