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16.温泉でくつろいでみる
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たっぷりと下草を平らげると、心なしかリンゴの木が喜んでいる気がした。
周囲にはライバルとなる樹木も多いけれど、下草がなくなっただけ彼の負担も少なくなったように思える。
「凄い達成感だ……」
「そうですね」
悦に浸っていると、隣にいた青毛娘はこちらを見た。
「そういえばあなた。まだ……温泉には入っていませんでしたね」
「そうだったね」
頷くと、青毛娘はにっこりと笑った。何だかとても可愛らしい表情である。
「ご案内しますので、着いてきてください」
温泉はラギア地域の中でも、やや小生の故郷に近い位置にあった。
というかよく考えれば、舐めれば塩が混じっている岩場の近くにあり、小生も納得しながら青毛娘の後に着いて行った。
「なるほど……ここはラギア地域でも、かなり安全な場所だね」
「はい。貴方の故郷が隣なのですから、ゴブリンや例の5頭に怯えずに歩くことができます」
「…………」
小生から見たら、例の5頭もゴブリンも恐ろしい存在ではないが、一般のウマやまだ幼い仔馬から見たら、脅威以外の何物でもないだろう。
まあでも、つい先日に返り討ちにしたばかりだし、しばらくの間は大挙して攻めて来ることもないか。とりあえずは温泉でも楽しむことにしよう。
少しずつ硫黄の臭いも強くなってきたことだし。
「こちらです」
青毛娘の隣に立つと、その先には湯気を上げる露天温泉が姿を見せた。
岩の割れ目から熱湯が流れ出ており、川の水も温泉に流れ込んで良い感じの温度になっていそうだ。それだけでも嬉しいことだけど、この温泉からは塩分やカルシウムの匂いも感じる。
「この温泉……もしかして塩化物泉?」
「よ、よくわかりましたね……そうです。ここには食塩や色々なモノが溶け込んでいます」
そこまで言うと青毛娘はにっこりと笑った。
「傷を負ったときなどに入ると、とても治りが早くなるんですよ」
「なるほど……他にも、皮膚の病気とかにも効果があるかもしれないね」
「さっそく、入りましょう」
「うん」
幸いにも先客はいなかったため、小生は青毛娘と一緒に湯船へと入った。
湯加減は少し熱めだけど、これぞ温泉という感じだ。脚先を入れているだけでもポカポカと身体が芯から暖められていく。
「…………」
もう少し奥に入って腰を落ち着けると、おや……小生のユニコーンホーンが現れて青白い光を放った。
「ユニコーンホーン……と言っても、誰が見てる訳でもないからいいか」
青毛娘に言うと、彼女も小生のホーンを眺めてきた。
「長い角で羨ましいです。私のは……その半分くらいなので……」
「ユニコーンはユニコーンだし、大事なのは持っている力をどう使うかじゃないかな?」
「確かに、そうですよね……」
何だかイイ感じだと思いながら青毛娘に身体を寄せると、彼女はどこか顔を赤らめながら言った。
「あの……あなた」
「どうしたんだい?」
「あなたはユニコーンとしての力……どう使うべきだと思いますか?」
「難しい質問だね」
そう言いながら何やら気配を感じて草むらに視線を動かすと、そこにはニヤニヤ笑いのツチノコがいた。
しかも1匹ではなく、友人と思われるツチノコが何匹かおり、こそこそと何かを囁き合っているぞ。一体このバカどもは何をしに来た!?
「おい、このまま行くかね?」
「このまま夫婦に卵1つ」
「いや、娘の方が天然ボケをかますに卵1つ」
「違うだろ~ 頬を寄せ合って終わるに卵1つ」
小生はニッと笑うと、ずいっと顔をツチノコたちに寄せた。
「答えは、お前たち全員を……湯船にご招待……でーす!」
「う、うわああああ!」
そう言いながら、ツチノコたちを咥えて湯船に引き込もうとしたら、こいつらは一目散に逃げだしていった。全く、逃げ足だけは早い連中である。
「全く、足がないくせに逃げ足だけは早い連中だ!」
そう呟くと、青毛娘も笑いながら言った。
「あんなに沢山いたなんて、何だか驚いてしまいますね」
「確かに……いったい、この森だけで何匹のツチノコがいるんだろう?」
小生たちが、呑気にツチノコの話をしていたとき。
ラギア地域を恨めしそうに眺める者たちがいた。片方はウマの5人組こと、ゴッドスーパーウルトラ・キャロットムキムキ団である。
そしてもう片方が、小生に返り討ちに遭ったゴブリン組。
そのどちらもが、苦々しい顔をしながら旧領奪還を目指して、密かに動きを見せようとしていた。
周囲にはライバルとなる樹木も多いけれど、下草がなくなっただけ彼の負担も少なくなったように思える。
「凄い達成感だ……」
「そうですね」
悦に浸っていると、隣にいた青毛娘はこちらを見た。
「そういえばあなた。まだ……温泉には入っていませんでしたね」
「そうだったね」
頷くと、青毛娘はにっこりと笑った。何だかとても可愛らしい表情である。
「ご案内しますので、着いてきてください」
温泉はラギア地域の中でも、やや小生の故郷に近い位置にあった。
というかよく考えれば、舐めれば塩が混じっている岩場の近くにあり、小生も納得しながら青毛娘の後に着いて行った。
「なるほど……ここはラギア地域でも、かなり安全な場所だね」
「はい。貴方の故郷が隣なのですから、ゴブリンや例の5頭に怯えずに歩くことができます」
「…………」
小生から見たら、例の5頭もゴブリンも恐ろしい存在ではないが、一般のウマやまだ幼い仔馬から見たら、脅威以外の何物でもないだろう。
まあでも、つい先日に返り討ちにしたばかりだし、しばらくの間は大挙して攻めて来ることもないか。とりあえずは温泉でも楽しむことにしよう。
少しずつ硫黄の臭いも強くなってきたことだし。
「こちらです」
青毛娘の隣に立つと、その先には湯気を上げる露天温泉が姿を見せた。
岩の割れ目から熱湯が流れ出ており、川の水も温泉に流れ込んで良い感じの温度になっていそうだ。それだけでも嬉しいことだけど、この温泉からは塩分やカルシウムの匂いも感じる。
「この温泉……もしかして塩化物泉?」
「よ、よくわかりましたね……そうです。ここには食塩や色々なモノが溶け込んでいます」
そこまで言うと青毛娘はにっこりと笑った。
「傷を負ったときなどに入ると、とても治りが早くなるんですよ」
「なるほど……他にも、皮膚の病気とかにも効果があるかもしれないね」
「さっそく、入りましょう」
「うん」
幸いにも先客はいなかったため、小生は青毛娘と一緒に湯船へと入った。
湯加減は少し熱めだけど、これぞ温泉という感じだ。脚先を入れているだけでもポカポカと身体が芯から暖められていく。
「…………」
もう少し奥に入って腰を落ち着けると、おや……小生のユニコーンホーンが現れて青白い光を放った。
「ユニコーンホーン……と言っても、誰が見てる訳でもないからいいか」
青毛娘に言うと、彼女も小生のホーンを眺めてきた。
「長い角で羨ましいです。私のは……その半分くらいなので……」
「ユニコーンはユニコーンだし、大事なのは持っている力をどう使うかじゃないかな?」
「確かに、そうですよね……」
何だかイイ感じだと思いながら青毛娘に身体を寄せると、彼女はどこか顔を赤らめながら言った。
「あの……あなた」
「どうしたんだい?」
「あなたはユニコーンとしての力……どう使うべきだと思いますか?」
「難しい質問だね」
そう言いながら何やら気配を感じて草むらに視線を動かすと、そこにはニヤニヤ笑いのツチノコがいた。
しかも1匹ではなく、友人と思われるツチノコが何匹かおり、こそこそと何かを囁き合っているぞ。一体このバカどもは何をしに来た!?
「おい、このまま行くかね?」
「このまま夫婦に卵1つ」
「いや、娘の方が天然ボケをかますに卵1つ」
「違うだろ~ 頬を寄せ合って終わるに卵1つ」
小生はニッと笑うと、ずいっと顔をツチノコたちに寄せた。
「答えは、お前たち全員を……湯船にご招待……でーす!」
「う、うわああああ!」
そう言いながら、ツチノコたちを咥えて湯船に引き込もうとしたら、こいつらは一目散に逃げだしていった。全く、逃げ足だけは早い連中である。
「全く、足がないくせに逃げ足だけは早い連中だ!」
そう呟くと、青毛娘も笑いながら言った。
「あんなに沢山いたなんて、何だか驚いてしまいますね」
「確かに……いったい、この森だけで何匹のツチノコがいるんだろう?」
小生たちが、呑気にツチノコの話をしていたとき。
ラギア地域を恨めしそうに眺める者たちがいた。片方はウマの5人組こと、ゴッドスーパーウルトラ・キャロットムキムキ団である。
そしてもう片方が、小生に返り討ちに遭ったゴブリン組。
そのどちらもが、苦々しい顔をしながら旧領奪還を目指して、密かに動きを見せようとしていた。
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