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14.ゴブリンにアイを語る

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 青毛娘の群れに来て2日目。
 ゆっくりと除草作業を進めていると、青毛娘の妹が血相を変えた様子で走ってきた。
「た、大変だよ栗毛お兄ちゃん!」
「ん? どうしたんだい」
「ゴブリンが……攻めてきているの!」
「ゴブリンだって!?」

 ゴブリンというのは、子供の人間くらいの大きさをした亜種族の1つだ。
 魔族が人間に対抗するために、作り出したクリーチャーとも言われており、好戦的な性格をしている。特に肉を好んで食べるので、小生たちのようなウマを集団で襲ってきたりもする厄介な相手だ。
「なるほど。小生の出番のようだね」
「ここを追い出されたら、住む場所がなくなっちゃう……私たちもサポートするから戦って!」
「わかったが……条件がある」
 真面目な表情のまま伝えると、近くにいた青毛娘も何だろうという表情でこちらを見た。
 小生は、真剣な顔のまま話を続けた。
「小生は、無益な殺生は嫌いだ。だから……争いの無意味さと話し会いの大切さは伝えるよ」
「そ、それは……確かに必要なことですね」
「ああ、みんな……援護を頼む!」
「は、はい!」

 間もなくゴブリンたちは、大挙して小生たちの前に駆け込んできた。
 その数は30ほどおり、誰もがナイフやショートボウを構え、「今日の夕食は馬肉だー」と叫びながら向かってくる。
「待てぃ! ゴブリンたちよ!!」
 そう叫んだが、ゴブリンたちは「ウルセー!」とか「イエーイ!」と叫びながら無視して襲ってくる。人の話を聞かない奴らには、こうだ!
 小生は角を光らせると、そこから巨大水塊砲を発射し、一瞬で全てのゴブリンをなぎ倒した。
「ごびゅぎゅ!?」

 しばらく牝馬たちは、あっけにとられていたが、やがて青毛娘が話しかけてきた。
「あ、あの……話し合いをするんじゃ……なかったのでしょうか?」
「もちろん、話し合いはする。これは……まあ、その前の握手のようなものだ」
「あ、あくしゅ……」
 直後に青毛娘の傍の土が盛り上がり、中からツチノコも出てきた。
 彼もまた、口を大きく開けたまま言葉を失った様子で、小生の握手の現場を眺めていた。これから会談が始まるわけだし、今のうちに頭に酸素を送り込んでいるのだろう。いい心がけである。

「さて、話し合いをしよう……ボスは誰かな?」
 たくさんのゴブリンがひっくり返って失神していた。この様子だと、今の攻撃を受けても意識を保っている個体がリーダーだろう。
 ふむ……コイツか。
「君がリーダーだね?」
 そう尋ねると、そのゴブリンは、周囲の光景を見て戸惑っていた。
 恐らく、生まれて初めてツチノコを見たのか。確かに、コイツは珍しい存在だから驚くのも無理はない。小生はニッと爽やかな笑顔と共に自己紹介した。
「小生は、栗毛ジュニア……お近づきの印に、まずにおいを覚えてもらおうか!」
 そう言いながら、身体をゴブリンに擦り寄せると、ゴブリンは「ギャベッ……」という返事をしながらぐったりとした。
「………ん?」

 少し考えたら意味がわかった。
 どうやらコブリンは体が小さすぎて、小生の肉圧に耐えられなかったらしい。
「ああ、ボスゴブリンが目を回してしまった……コミュニケーションとは難しいものだ」
 ならば仕方ない。
 これだけ人数がいるのだから、代理のリーダーくらいいるだろう。
 チラチラと周りを見てみると、ちょうど立ち上がって逃げようとしている個体がいた。この状況で、しっかりと動けるのなら間違いなく副リーダーかリーダー代理者だろう。

 小生は素早く駆け寄ると、ゴブリンを捕まえて交渉のテーブルに引きずり出すことにした。
「さて、ゴブリンの代理リーダーよ」
 ゴブリンは、涙目になりながらクビを横に振っている。自分はそんな大層なモノではないと言いたいのか。なかなか謙遜が過ぎる。
「この土地は小生たちのモノだ。わかるかい?」
 ゴブリンは、うんうんと頷いた。
「小生の許可なく、勝手に立ち入ったらダメだよ?」
 再びゴブリンはうんうんと頷いた。
「よし、わかったら……お近づきの印に、小生のにおいを覚えて貰おう。それ!」
 そう言いながらゴブリンに近付くと、ゴブリンは一目散に逃げ出した。他の死んだフリをしていたゴブリンたちも、怯えた様子で立ち上がり、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 小生はそれでもめげずに、しばらく追いかけ回すことにした。
「こ、これぞ……棍棒外交……」
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