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4.マンドレイクを見つける
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食べて応援・除草作業をしていると、ときどき毒草を見かけることがある。
これは、マンドレイクだ。
ナス科の植物で、一見すると美味しそうに見えるため、誤って口にする人間も多いが、小生たちウマから見れば臭いが明らかに違うので、すぐに見分けることができる。
「…………」
因みに、引き抜けば恐ろしい叫び声を上げる草とも言われているが、そんな妖力や魔力を身に付けているのは、魔境の奥深くに生えている悪性変異した個体くらいだ。
無視して草を食み続けていると、おや、仔馬たちの気配だ。
今年生まれた仔馬たちは、駆けっこしながら走ってきたが、そのうちの1頭がマンドレイクに気が付いたようだ。
「ん? なんだろ、この草?」
「んん? なんだかおいしそうじゃね?」
こいつら、マンドレイクを食べようとしているのか。小生はすぐに注意しようと思ったが、うちの群れには天邪鬼な子供も多いんだよな。
よし、ここは……。
「…………」
小生は物陰に隠れながら、仔馬の1頭がマンドレイクを引き抜くタイミングで叫び声を上げた。
「ヒヒヒヒヒヒヒーーーン!」
「ど、どわあああああ!?」
普通なら小生の方向を向くところだろうけど、全員がマンドレイクに注目していたせいか、全ての仔馬たちが驚いた様子でマンドレイクから離れた。
「な、なんだなんだ!?」
「い、い、いま……草がしゃべ……いや、さけんでたよ!」
「な、なんだこれ、ヤベーよ!」
仔馬たちが一目散に逃げだしたので、小生は笑いをこらえていた。まさかここまでイタズラが成功するなんて、なんだかとてもいい気分だ。
たっぷりと除草作業を済ませてから群れへと戻ると、おや、何だか物々しい雰囲気になっている。
何か起こったのだろうかと思いながら両親の所へと戻ると、父馬も母馬も険しい顔をしていた。何か問題でも起こったのだろうか。
「ただいま」
「ああ、ジュニアよ……さっき黒毛さんから連絡があったのだが、マンドレイクが出たらしいな」
「マンドレイクって、あの毒草の?」
随分と情報が早いなと思いながら聞き返すと、母馬も深刻な表情で頷いた。
「ただの毒草ではなく、悪性変異したシロモノの方です。うかつに引き抜くと叫び声を上げます」
その言葉を聞いて、小生はすぐに心当たりを思い出した。
「ねえ、それ……子供たちが、草が喋ったって言ったんじゃない?」
質問すると、両親は表情を変えて頷いた。
「ずいぶんと察しがいいな」
「ああ、それね……子供たちが毒草を引き抜こうとしてたから、小生がタイミングよく声を出しただけだよ」
そう伝えると、両親はなんだよと言いたそうに表情を緩めていく。
「なんだ、そういうことか……ちょっと、ご近所さんに伝えてくる」
「ああ、小生も謝って来るよ」
こうして、マンドレイク騒動の真相はすぐにご近所さんに伝わった。マンドレイクは実際に毒草なので、ご近所さんもそれほど怒らず、小生は仔馬一行から睨まれえるくらいで済んだ。
こうして一件落着と思っていたのだが、少し困った問題も起こってしまった。
小生が除草作業をするたびに、後から仔馬たちが付いてくるようになってしまったのである。
そして、草を千切るごとに、仔馬たちは叫ぶ。
「あ~~~いたたたたた!」
「ぎゃーーーーーーー!」
「やめろ、やめろぉ~!」
「だからお前たち……うるさい!」
そうしかりつけると、仔馬たちはもちろん反発した。
「なんだよ。クリゲ兄ちゃんだって、おなじことしたじゃん!」
「おれたちだって、やっていいだろ~」
「だから、あれはあくまで……おまえたちが毒草を食べようとしていたからって、お父さんとお母さんから言われなかったのか?」
「お兄ちゃんだって、ドクソウを食べるカノウセーはある!」
「だから、あっちいって遊んでなって」
こうして小生は、しばらくのあいだ仔馬たちに付けまわされることになった。
トホホホホ……。
【作者スィグの独り言】
実はマンドレイクという草は実在します。
ナス科のマンドラゴラ属というカテゴリーの植物で、紫色の花をつけるそうです。
引き抜いても叫び声を上げることはありませんが、根には神経毒があるため、誤って口にするのはもってのほかですし、アレルギー持ちの人は注意する必要がありそうです。
これは、マンドレイクだ。
ナス科の植物で、一見すると美味しそうに見えるため、誤って口にする人間も多いが、小生たちウマから見れば臭いが明らかに違うので、すぐに見分けることができる。
「…………」
因みに、引き抜けば恐ろしい叫び声を上げる草とも言われているが、そんな妖力や魔力を身に付けているのは、魔境の奥深くに生えている悪性変異した個体くらいだ。
無視して草を食み続けていると、おや、仔馬たちの気配だ。
今年生まれた仔馬たちは、駆けっこしながら走ってきたが、そのうちの1頭がマンドレイクに気が付いたようだ。
「ん? なんだろ、この草?」
「んん? なんだかおいしそうじゃね?」
こいつら、マンドレイクを食べようとしているのか。小生はすぐに注意しようと思ったが、うちの群れには天邪鬼な子供も多いんだよな。
よし、ここは……。
「…………」
小生は物陰に隠れながら、仔馬の1頭がマンドレイクを引き抜くタイミングで叫び声を上げた。
「ヒヒヒヒヒヒヒーーーン!」
「ど、どわあああああ!?」
普通なら小生の方向を向くところだろうけど、全員がマンドレイクに注目していたせいか、全ての仔馬たちが驚いた様子でマンドレイクから離れた。
「な、なんだなんだ!?」
「い、い、いま……草がしゃべ……いや、さけんでたよ!」
「な、なんだこれ、ヤベーよ!」
仔馬たちが一目散に逃げだしたので、小生は笑いをこらえていた。まさかここまでイタズラが成功するなんて、なんだかとてもいい気分だ。
たっぷりと除草作業を済ませてから群れへと戻ると、おや、何だか物々しい雰囲気になっている。
何か起こったのだろうかと思いながら両親の所へと戻ると、父馬も母馬も険しい顔をしていた。何か問題でも起こったのだろうか。
「ただいま」
「ああ、ジュニアよ……さっき黒毛さんから連絡があったのだが、マンドレイクが出たらしいな」
「マンドレイクって、あの毒草の?」
随分と情報が早いなと思いながら聞き返すと、母馬も深刻な表情で頷いた。
「ただの毒草ではなく、悪性変異したシロモノの方です。うかつに引き抜くと叫び声を上げます」
その言葉を聞いて、小生はすぐに心当たりを思い出した。
「ねえ、それ……子供たちが、草が喋ったって言ったんじゃない?」
質問すると、両親は表情を変えて頷いた。
「ずいぶんと察しがいいな」
「ああ、それね……子供たちが毒草を引き抜こうとしてたから、小生がタイミングよく声を出しただけだよ」
そう伝えると、両親はなんだよと言いたそうに表情を緩めていく。
「なんだ、そういうことか……ちょっと、ご近所さんに伝えてくる」
「ああ、小生も謝って来るよ」
こうして、マンドレイク騒動の真相はすぐにご近所さんに伝わった。マンドレイクは実際に毒草なので、ご近所さんもそれほど怒らず、小生は仔馬一行から睨まれえるくらいで済んだ。
こうして一件落着と思っていたのだが、少し困った問題も起こってしまった。
小生が除草作業をするたびに、後から仔馬たちが付いてくるようになってしまったのである。
そして、草を千切るごとに、仔馬たちは叫ぶ。
「あ~~~いたたたたた!」
「ぎゃーーーーーーー!」
「やめろ、やめろぉ~!」
「だからお前たち……うるさい!」
そうしかりつけると、仔馬たちはもちろん反発した。
「なんだよ。クリゲ兄ちゃんだって、おなじことしたじゃん!」
「おれたちだって、やっていいだろ~」
「だから、あれはあくまで……おまえたちが毒草を食べようとしていたからって、お父さんとお母さんから言われなかったのか?」
「お兄ちゃんだって、ドクソウを食べるカノウセーはある!」
「だから、あっちいって遊んでなって」
こうして小生は、しばらくのあいだ仔馬たちに付けまわされることになった。
トホホホホ……。
【作者スィグの独り言】
実はマンドレイクという草は実在します。
ナス科のマンドラゴラ属というカテゴリーの植物で、紫色の花をつけるそうです。
引き抜いても叫び声を上げることはありませんが、根には神経毒があるため、誤って口にするのはもってのほかですし、アレルギー持ちの人は注意する必要がありそうです。
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