4 / 30
4.マンドレイクを見つける
しおりを挟む
食べて応援・除草作業をしていると、ときどき毒草を見かけることがある。
これは、マンドレイクだ。
ナス科の植物で、一見すると美味しそうに見えるため、誤って口にする人間も多いが、小生たちウマから見れば臭いが明らかに違うので、すぐに見分けることができる。
「…………」
因みに、引き抜けば恐ろしい叫び声を上げる草とも言われているが、そんな妖力や魔力を身に付けているのは、魔境の奥深くに生えている悪性変異した個体くらいだ。
無視して草を食み続けていると、おや、仔馬たちの気配だ。
今年生まれた仔馬たちは、駆けっこしながら走ってきたが、そのうちの1頭がマンドレイクに気が付いたようだ。
「ん? なんだろ、この草?」
「んん? なんだかおいしそうじゃね?」
こいつら、マンドレイクを食べようとしているのか。小生はすぐに注意しようと思ったが、うちの群れには天邪鬼な子供も多いんだよな。
よし、ここは……。
「…………」
小生は物陰に隠れながら、仔馬の1頭がマンドレイクを引き抜くタイミングで叫び声を上げた。
「ヒヒヒヒヒヒヒーーーン!」
「ど、どわあああああ!?」
普通なら小生の方向を向くところだろうけど、全員がマンドレイクに注目していたせいか、全ての仔馬たちが驚いた様子でマンドレイクから離れた。
「な、なんだなんだ!?」
「い、い、いま……草がしゃべ……いや、さけんでたよ!」
「な、なんだこれ、ヤベーよ!」
仔馬たちが一目散に逃げだしたので、小生は笑いをこらえていた。まさかここまでイタズラが成功するなんて、なんだかとてもいい気分だ。
たっぷりと除草作業を済ませてから群れへと戻ると、おや、何だか物々しい雰囲気になっている。
何か起こったのだろうかと思いながら両親の所へと戻ると、父馬も母馬も険しい顔をしていた。何か問題でも起こったのだろうか。
「ただいま」
「ああ、ジュニアよ……さっき黒毛さんから連絡があったのだが、マンドレイクが出たらしいな」
「マンドレイクって、あの毒草の?」
随分と情報が早いなと思いながら聞き返すと、母馬も深刻な表情で頷いた。
「ただの毒草ではなく、悪性変異したシロモノの方です。うかつに引き抜くと叫び声を上げます」
その言葉を聞いて、小生はすぐに心当たりを思い出した。
「ねえ、それ……子供たちが、草が喋ったって言ったんじゃない?」
質問すると、両親は表情を変えて頷いた。
「ずいぶんと察しがいいな」
「ああ、それね……子供たちが毒草を引き抜こうとしてたから、小生がタイミングよく声を出しただけだよ」
そう伝えると、両親はなんだよと言いたそうに表情を緩めていく。
「なんだ、そういうことか……ちょっと、ご近所さんに伝えてくる」
「ああ、小生も謝って来るよ」
こうして、マンドレイク騒動の真相はすぐにご近所さんに伝わった。マンドレイクは実際に毒草なので、ご近所さんもそれほど怒らず、小生は仔馬一行から睨まれえるくらいで済んだ。
こうして一件落着と思っていたのだが、少し困った問題も起こってしまった。
小生が除草作業をするたびに、後から仔馬たちが付いてくるようになってしまったのである。
そして、草を千切るごとに、仔馬たちは叫ぶ。
「あ~~~いたたたたた!」
「ぎゃーーーーーーー!」
「やめろ、やめろぉ~!」
「だからお前たち……うるさい!」
そうしかりつけると、仔馬たちはもちろん反発した。
「なんだよ。クリゲ兄ちゃんだって、おなじことしたじゃん!」
「おれたちだって、やっていいだろ~」
「だから、あれはあくまで……おまえたちが毒草を食べようとしていたからって、お父さんとお母さんから言われなかったのか?」
「お兄ちゃんだって、ドクソウを食べるカノウセーはある!」
「だから、あっちいって遊んでなって」
こうして小生は、しばらくのあいだ仔馬たちに付けまわされることになった。
トホホホホ……。
【作者スィグの独り言】
実はマンドレイクという草は実在します。
ナス科のマンドラゴラ属というカテゴリーの植物で、紫色の花をつけるそうです。
引き抜いても叫び声を上げることはありませんが、根には神経毒があるため、誤って口にするのはもってのほかですし、アレルギー持ちの人は注意する必要がありそうです。
これは、マンドレイクだ。
ナス科の植物で、一見すると美味しそうに見えるため、誤って口にする人間も多いが、小生たちウマから見れば臭いが明らかに違うので、すぐに見分けることができる。
「…………」
因みに、引き抜けば恐ろしい叫び声を上げる草とも言われているが、そんな妖力や魔力を身に付けているのは、魔境の奥深くに生えている悪性変異した個体くらいだ。
無視して草を食み続けていると、おや、仔馬たちの気配だ。
今年生まれた仔馬たちは、駆けっこしながら走ってきたが、そのうちの1頭がマンドレイクに気が付いたようだ。
「ん? なんだろ、この草?」
「んん? なんだかおいしそうじゃね?」
こいつら、マンドレイクを食べようとしているのか。小生はすぐに注意しようと思ったが、うちの群れには天邪鬼な子供も多いんだよな。
よし、ここは……。
「…………」
小生は物陰に隠れながら、仔馬の1頭がマンドレイクを引き抜くタイミングで叫び声を上げた。
「ヒヒヒヒヒヒヒーーーン!」
「ど、どわあああああ!?」
普通なら小生の方向を向くところだろうけど、全員がマンドレイクに注目していたせいか、全ての仔馬たちが驚いた様子でマンドレイクから離れた。
「な、なんだなんだ!?」
「い、い、いま……草がしゃべ……いや、さけんでたよ!」
「な、なんだこれ、ヤベーよ!」
仔馬たちが一目散に逃げだしたので、小生は笑いをこらえていた。まさかここまでイタズラが成功するなんて、なんだかとてもいい気分だ。
たっぷりと除草作業を済ませてから群れへと戻ると、おや、何だか物々しい雰囲気になっている。
何か起こったのだろうかと思いながら両親の所へと戻ると、父馬も母馬も険しい顔をしていた。何か問題でも起こったのだろうか。
「ただいま」
「ああ、ジュニアよ……さっき黒毛さんから連絡があったのだが、マンドレイクが出たらしいな」
「マンドレイクって、あの毒草の?」
随分と情報が早いなと思いながら聞き返すと、母馬も深刻な表情で頷いた。
「ただの毒草ではなく、悪性変異したシロモノの方です。うかつに引き抜くと叫び声を上げます」
その言葉を聞いて、小生はすぐに心当たりを思い出した。
「ねえ、それ……子供たちが、草が喋ったって言ったんじゃない?」
質問すると、両親は表情を変えて頷いた。
「ずいぶんと察しがいいな」
「ああ、それね……子供たちが毒草を引き抜こうとしてたから、小生がタイミングよく声を出しただけだよ」
そう伝えると、両親はなんだよと言いたそうに表情を緩めていく。
「なんだ、そういうことか……ちょっと、ご近所さんに伝えてくる」
「ああ、小生も謝って来るよ」
こうして、マンドレイク騒動の真相はすぐにご近所さんに伝わった。マンドレイクは実際に毒草なので、ご近所さんもそれほど怒らず、小生は仔馬一行から睨まれえるくらいで済んだ。
こうして一件落着と思っていたのだが、少し困った問題も起こってしまった。
小生が除草作業をするたびに、後から仔馬たちが付いてくるようになってしまったのである。
そして、草を千切るごとに、仔馬たちは叫ぶ。
「あ~~~いたたたたた!」
「ぎゃーーーーーーー!」
「やめろ、やめろぉ~!」
「だからお前たち……うるさい!」
そうしかりつけると、仔馬たちはもちろん反発した。
「なんだよ。クリゲ兄ちゃんだって、おなじことしたじゃん!」
「おれたちだって、やっていいだろ~」
「だから、あれはあくまで……おまえたちが毒草を食べようとしていたからって、お父さんとお母さんから言われなかったのか?」
「お兄ちゃんだって、ドクソウを食べるカノウセーはある!」
「だから、あっちいって遊んでなって」
こうして小生は、しばらくのあいだ仔馬たちに付けまわされることになった。
トホホホホ……。
【作者スィグの独り言】
実はマンドレイクという草は実在します。
ナス科のマンドラゴラ属というカテゴリーの植物で、紫色の花をつけるそうです。
引き抜いても叫び声を上げることはありませんが、根には神経毒があるため、誤って口にするのはもってのほかですし、アレルギー持ちの人は注意する必要がありそうです。
36
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ダンジョンのモンスターになってしまいましたが、テイマーの少女が救ってくれたので恩返しします。
紗沙
ファンタジー
成長に限界を感じていた探索者、織田隆二。
彼はダンジョンで非常に強力なモンスターに襲われる。
死を覚悟するも、その際に起きた天災で気を失ってしまう。
目を覚ましたときには、襲い掛かってきたモンスターと入れ替わってしまっていた。
「嘘だぁぁあああ!」
元に戻ることが絶望的なだけでなく、探索者だった頃からは想像もつかないほど弱体化したことに絶望する。
ダンジョン内ではモンスターや今まで同じ人間だった探索者にも命を脅かされてしまう始末。
このままこのダンジョンで死んでいくのか、そう諦めかけたとき。
「大丈夫?」
薄れていく視界で彼を助けたのは、テイマーの少女だった。
救われた恩を返すために、織田隆二はモンスターとして強くなりながら遠くから彼女を見守る。
そしてあわよくば、彼女にテイムしてもらうことを夢見て。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました
葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。
前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ!
だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます!
「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」
ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?
私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー!
※約六万字で完結するので、長編というより中編です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる