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41.雪かきに勤しむ魔王軍

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 勇者一行が王国軍の城を攻略。
 その情報はすぐに、僕たちの耳にも入ることになった。

「こんな真冬に攻めるなんて、勇者一行も相当追い詰められているんだね」
「そのようですな。ああ……お気を付けください。雪がかかります!」
「ああ、ごめん!」
 僕が退くと、ロドルフォはスコップで雪を下ろしはじめた。
 彼はいま、倉庫の屋根に積もった雪を下ろしているのである。ツーノッパ地方では冬には大雪が降ることも珍しくなく、放っておけば雪の重みで建物が潰れてしまう。
 ロドルフォだけでなく、ブルンフリート率いる有翼人たちも城の屋根に積もった雪を下ろす作業で大忙しだ。


 除雪作業を見ていると、ペガサスを引いた有翼人兵が歩いてきた。
 最初は配属されたばかりのペガサスなのかと思いきや、側には仔馬も付いてくるからメスペガサスであることがわかる。
 あれ……確か子育て中のペガサスって、森で自由に生活する予定だと聞いていたけど……。
「今のペガサスって……聖域にいるべきペガサスだよね?」

 そう質問すると、近くにいたブルンフリートは答えた。
「どうやら、ペガサスたちの間でも納屋の方が過ごしやすいからと、牧場で子育てをする個体が増えているようです」

 彼の言葉は、ペガサス親仔の態度にしっかりと現れていた。
 もし強引に連れてきたのなら、母親のペガサスの方が嫌がりそうなものだが、目の前のペガサスは母の方が率先して仔をリードしながら兵士の指示に従っている。
「少し、納屋も視察したいな」
「ご案内します」


 歩きながら眺めていると、ペガサス母仔は納屋へと入っていく。
 納屋は僕が思っていたよりも立派で大きな建物だった。別の入り口からは仔馬ペガサスが納屋の外へと出てきたものの、一瞬で納屋の中へと逆戻りして、牧場の係員たちを困惑させている。
「なかなか……良い納屋ができたみたいだね」
「はい。造りが中途半端だと、ペガサスたちが嫌う納屋になってしまいますから、こちらも気を遣いました。ですが……その甲斐あっていい納屋が完成しましたがね」

「ん……あの角……もしかして」
「スピカオブアムアス号ですね。少し会っていきますか?」
「そうだね!」


 ウマをペガサス化できる一角獣スピカオブアムアス号。
 彼は放牧エリアの片隅で、心地よさそうに町や山々を眺めている。
「スピカ号!」
 そう声をかけてみると、スピカオブアムアス号はこちらを見て軽く嘶きながら近づいてきた。
「どうだい、納屋の居心地は?」
『グググググ……』

 彼は喉を鳴らしてすり寄って来ると、僕はタテガミや顔を撫でてみた。引き締まった筋肉や暖かい毛皮が何とも魅力的に思える。
 まるで麒麟を連想させるように喋りかけてくるリットーヴィント号もいいけれど、こういうウマに近い対応をするスピカ号の相手もいいものだ。
『今の王国の待遇に、満足しているようですな』

 そう言いながら姿を見せたのは、リットーヴィントだった。
『特定のウマにだけ良い待遇をする国は珍しくないが、この国はウマ全体への対応が親切だし丁寧……と、スピカ号は言っています』
「それはよかった」

 微笑みながら答えていると、ロドルフォも満足そうに言う。
「ウマやウシなど家畜への労働時間も、1日で最大8時間までとせよという法律は画期的でしたな。このような法律を作る国は……我らくらいでしょう」
「ただ作るだけじゃ意味がないからね。まずは人間への待遇をよくすることからしないと、誰も守ってはくれない」

 そう伝えると、ブルンフリートも頷いた。
「仰る通りにございます。兵士の食事もまた工夫を凝らした栄養のあるものばかり……おかげで兵の士気もあがっています」
「ああ、それはアデルハイトの提案だよ……僕はただハンコを押しただけだから、お礼はアデルに言ってね!」


 なぜ食事の待遇が良くなったのかと言えば、アデルハイトがシングルマザー向けに給仕の仕事を出したからだ。
 普段から料理をすることに慣れているシングルマザーたちは、様々な料理を兵士向けに提供してくれたので、郷土料理などを中心に兵舎で提供されているのである。

 そんなことを考えていたら、ブルンフリートは言った。
「そういえば陛下……アデルハイト城のオリヴァー殿が、新しい作物を春から育てたいと言っていました」
「新しい作物? どんなモノなんだい?」
「サツマイモという海を越えた先にある作物だそうです。部下が港町に出かけた際に偶然入手したそうで……」

 サツマイモか。確かにあれは栄養価のある食物だからいいと思う。
「そうだね。ぜひやってもらおう!」


 まあ、こんな感じで、僕たちの冬の1日は何事もなく過ぎていった。

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