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22.合戦に必要な大義名分
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合戦は多くの人間や領民を巻き込むし、死者もたくさん出る。
そのため、特に仕掛ける場合はそれ相応の理由が無ければ、兵士や領民も協力してくれないのである。
ゴブリンの王と言えど例外ではないらしく、領主1人や2人の出兵は出来ても、国そのものを動かした合戦が出来なかったのも、隣国に攻め込むために必要な理由がなかったようだ。
ところがだ。僕たちが隣国のアデルハイト城を平定したことで状況は変わった。
ゴブリンの王は使者を派遣してきて、城と周辺地域の割譲を要求してきたのである。
「ゴブ……ゴブガリ、サンブガリ、ナナブガリ、ジュウブンガーリ! ゴーブゴォーブ!!」
「ええと、何といっているの?」
僕が聞くと、一角獣リットーヴィントは目を細めながら翻訳してくれた。
『ふむふむ。あの古城は我がゴブリン族の王にこそ相応しい領土だ。今すぐお前たちは出て行け』
「ガリゴブ、ニブガリ、キュウブガリ、ゴブゴブゴーブ、ロクブガーァリ!!」
「ええと、アデルハイトを指さしてるけど……今度は何て?」
『そもそも、ゴブリン王にゆかりある城に、魔族の女の名前を付けるなど言語道断……決して許されることではない』
「では、その歴史的根拠を客観的に示す資料を提出せよ」
『ゴブゴブゴ、ニブガーリ、ゴブゴゴブ、イチブイチブガーリ!』
そう切り返してみると、ゴブリンの使者は怒った様子で答える。
「ゴゴゴ、ノーゴブゴブ! アルジゴブ、ゴゴブブブ! ゴブー!」
今まで何を言っているのかわからなかったが、何だろう。今回は何を言いたいのか何となくわかってしまったぞ。
一応、リットーヴィント号は翻訳してくれた。
『そ、そんなものがあるはずないだろう! 我がゴブリンの文化では、王が白と言えば白……黒と言えば黒だ!』
ああ、やっぱりそういうテキトーな答えが返ってきたか。
僕としては願ったり叶ったりである。コブリンの領土には硝石……つまり、火薬の材料になる鉱石が眠る鉱山があると聞いている。
ここは、ケンカを吹っかけてみるか。
「なるほど。城主というモノは偉大なんだね。ならばここでは僕が法律だ! 文句があるならかかってこいバカ……と伝えるように!」
「ゴブゴゴブ、ジュウブンガーリガーリ!」
翻訳前に答えたので、このゴブリン……僕が何を言っているのか理解していたようだ。
『後悔するなよ人間風情が……だそうです』
「へぇ……難しい言葉を知っているんだね♪」
苛立っている仲間が何人もいたので、使者をおちょくってみると仲間たちはどっと笑い声をあげた。
間もなく使者のゴブリンは帰っていくと、僕はゴブリンの土地と隣接している領主たちを見た。
「これでほぼ、ゴブリンとの決戦は確定事項となった。特に土地が隣接している地域の領主は、警備や防衛体制をきっちりと整えておいて欲しい」
そう伝えると、一同は「ははっ!」という声を響かせた。
さて、リットーヴィント号は渡り鳥を使って、ゴブリンたちの動向を監視していたようだが、この使者は僕の言ったことをゴブリンの王に伝えたようだ。
ゴブリンの王は、すっかり怒り狂った様子で怒鳴り声を挙げ、戦争準備を始めるように指示したようだ。
さて、どんな大義名分を出すのだろう。
少し注目をしていると、ゴブリンの領主たちは【ゴブゴブキング、ゴブゴブゴーブ!】というスローガンを掲げて、各地域のゴブリンたちを動員しようとしていたようだ。
何を言っているのかリットーヴィント号に聞いてみると、【偉大なるゴブキングを侮辱した人間どもを許すな!】という意味になるようだ。
まあ、ゴブリンキングが白と言えば白、黒と言えば黒の社会なので、どんな大義名分でも戦争が出来そうだが、リットーヴィント号の調べで興味深いことが分かった。
実はやる気になっているのは領主とその直属の部下くらいで、末端のゴブリンたちや支配されている他種族の士気は全く上がらなかったようである。
まあ、それはそうだろう。庶民から見れば王が侮辱されたから戦争に協力しろと言われたところで、なにバカなことを言っているんだと思われるのがオチだ。
ツーノッパ地域では、王国と勇者派の対立が決定的になりつつあったとき、僕たちの住む辺境の土地でもゴブリンキングと、シャリオヴァルト軍の戦いがはじまろうとしていた。
そのため、特に仕掛ける場合はそれ相応の理由が無ければ、兵士や領民も協力してくれないのである。
ゴブリンの王と言えど例外ではないらしく、領主1人や2人の出兵は出来ても、国そのものを動かした合戦が出来なかったのも、隣国に攻め込むために必要な理由がなかったようだ。
ところがだ。僕たちが隣国のアデルハイト城を平定したことで状況は変わった。
ゴブリンの王は使者を派遣してきて、城と周辺地域の割譲を要求してきたのである。
「ゴブ……ゴブガリ、サンブガリ、ナナブガリ、ジュウブンガーリ! ゴーブゴォーブ!!」
「ええと、何といっているの?」
僕が聞くと、一角獣リットーヴィントは目を細めながら翻訳してくれた。
『ふむふむ。あの古城は我がゴブリン族の王にこそ相応しい領土だ。今すぐお前たちは出て行け』
「ガリゴブ、ニブガリ、キュウブガリ、ゴブゴブゴーブ、ロクブガーァリ!!」
「ええと、アデルハイトを指さしてるけど……今度は何て?」
『そもそも、ゴブリン王にゆかりある城に、魔族の女の名前を付けるなど言語道断……決して許されることではない』
「では、その歴史的根拠を客観的に示す資料を提出せよ」
『ゴブゴブゴ、ニブガーリ、ゴブゴゴブ、イチブイチブガーリ!』
そう切り返してみると、ゴブリンの使者は怒った様子で答える。
「ゴゴゴ、ノーゴブゴブ! アルジゴブ、ゴゴブブブ! ゴブー!」
今まで何を言っているのかわからなかったが、何だろう。今回は何を言いたいのか何となくわかってしまったぞ。
一応、リットーヴィント号は翻訳してくれた。
『そ、そんなものがあるはずないだろう! 我がゴブリンの文化では、王が白と言えば白……黒と言えば黒だ!』
ああ、やっぱりそういうテキトーな答えが返ってきたか。
僕としては願ったり叶ったりである。コブリンの領土には硝石……つまり、火薬の材料になる鉱石が眠る鉱山があると聞いている。
ここは、ケンカを吹っかけてみるか。
「なるほど。城主というモノは偉大なんだね。ならばここでは僕が法律だ! 文句があるならかかってこいバカ……と伝えるように!」
「ゴブゴゴブ、ジュウブンガーリガーリ!」
翻訳前に答えたので、このゴブリン……僕が何を言っているのか理解していたようだ。
『後悔するなよ人間風情が……だそうです』
「へぇ……難しい言葉を知っているんだね♪」
苛立っている仲間が何人もいたので、使者をおちょくってみると仲間たちはどっと笑い声をあげた。
間もなく使者のゴブリンは帰っていくと、僕はゴブリンの土地と隣接している領主たちを見た。
「これでほぼ、ゴブリンとの決戦は確定事項となった。特に土地が隣接している地域の領主は、警備や防衛体制をきっちりと整えておいて欲しい」
そう伝えると、一同は「ははっ!」という声を響かせた。
さて、リットーヴィント号は渡り鳥を使って、ゴブリンたちの動向を監視していたようだが、この使者は僕の言ったことをゴブリンの王に伝えたようだ。
ゴブリンの王は、すっかり怒り狂った様子で怒鳴り声を挙げ、戦争準備を始めるように指示したようだ。
さて、どんな大義名分を出すのだろう。
少し注目をしていると、ゴブリンの領主たちは【ゴブゴブキング、ゴブゴブゴーブ!】というスローガンを掲げて、各地域のゴブリンたちを動員しようとしていたようだ。
何を言っているのかリットーヴィント号に聞いてみると、【偉大なるゴブキングを侮辱した人間どもを許すな!】という意味になるようだ。
まあ、ゴブリンキングが白と言えば白、黒と言えば黒の社会なので、どんな大義名分でも戦争が出来そうだが、リットーヴィント号の調べで興味深いことが分かった。
実はやる気になっているのは領主とその直属の部下くらいで、末端のゴブリンたちや支配されている他種族の士気は全く上がらなかったようである。
まあ、それはそうだろう。庶民から見れば王が侮辱されたから戦争に協力しろと言われたところで、なにバカなことを言っているんだと思われるのがオチだ。
ツーノッパ地域では、王国と勇者派の対立が決定的になりつつあったとき、僕たちの住む辺境の土地でもゴブリンキングと、シャリオヴァルト軍の戦いがはじまろうとしていた。
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