婿入り魔王シャリオヴァルトの滅亡寸前国家再興記

スィグトーネ

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13.勇者のパラメーターが見えてしまう

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 レオニーの砦は瞬く間に炎上し、残党討伐軍の兵士たちは何とも言えない表情で、様子を窺っていた。
「最期は、あっけないものだったな……」
「まあ、でも……こんなもんだろ」

 突入した兵士たちは、全員が無事だったようだが、さすがに誰もが疲れ果てた表情をしていた。
 もしかしたら、黒幕とか真のラスボスが現れて、自分も一旗上げる野心を持っていたのかもしれないが、彼らが見たのは自刃した魔族の女子供という結末だ。

 無気力な表情をするのも、当たり前かもしれない。


 そんななか、我が物顔で歩いてくる若者がいた。
「お前等、魔王のクソ娘はいたか!?」

 その言い方は、質問をしているというより、命令を強要している大柄な感じだった。
 兵士たちは、嫌々という表情のまま平伏していき、若者の言葉に答える。
「ゆ、勇者さま!」
「それらしき子女は見かけましたが、既に自刃した後でした」
「はあ!?」

 その勇者と呼ばれた男は、答えた兵士を蹴り倒した。
「ごあっ!?」
「自刃してましたじゃねーよ! クビはどこだ!?」
 別の兵士が答える。
「そ、それが……敵が炎を放っていたので……」
「言い訳してんじゃねーよ! クビを取り忘れたんなら、今すぐに行って取って来い!!」

 その言葉を聞いた兵士たちは、見る見る青ざめた顔をしていった。
 それはそうだろう。レオニーの砦はいま炎に包まれている。こんな中に入れば命がないことは5歳児だってわかる。
「そんな、無理ですよ!」
「この役立たずのクソムシどもが!」

「ぎゃあ!」
「お許し下さい、勇者さま!」
「うるせぇ! このゴミども!」
 勇者は、兵士たちを次々と殴りつけると、ツバを吐きかけてから立ち去っていく。
 すると、おや……このニセ勇者のパラメーターが見えてしまった。


パワハーダ ヒューマン男
農業71 商業34 野戦92 籠城88 智謀79 忠誠8 魅力12+20 義理1 野心120 

所有アビリティA:良心欠如(不義理・人道に反する行いをした際に、良心の呵責を受けない)
所有アビリティB:恐怖支配(部下に恐れられることで謀反・造反の確率を下げる。野戦・籠城+15)
勇者称号    :魅力を+20する


 忠誠以降のデータが、まるで勇者らしからぬ数値だ。
 どうしてこんなのが勇者を名乗っているのか不思議だったが、アデルハイトの説明を聞いて納得した。

 王国では勇者は名誉称号であり、国王さえ認めれば勇者となることができるようだ。


 さて、この勇者パワハーダだが、砦が焼けている間にも砦周りに魔族がいないか兵士たちに調べさせていた。
「勇者様、申し上げます。この近隣にいた魔族は残らず逃げ出したようです」
「わざわざ来て手に入ったのは、廃墟となった集落と黒焦げになった砦か。まあ、テイノウ魔族らしい最期だな」

 そう言った直後に、パワハーダの顔に雨粒がぶつかった。
「ちっ……雨かよ」
「恵みの雨です。これなら……魔族の王女の死体が見つかるかもしれません」

 そう兵士が言ったとき、パワハーダは持っていたお椀の酒を兵士の顔にかけた。
「寝ぼけてんのかテメーは?」
「…………」
「魔族の王女の死体は、我らが捜しますので……勇者様は濡れる前に御城にお戻りください……だろ?」

「魔族の王女の死体は、我らが捜しますので……勇者様は濡れる前に御城にお戻りください」
「こんなこともわかんねーんじゃ、テメーは出世できねえタイプだな。まっ……せいぜい馬車ウマのように働いて、少しは役に立てグズ!」
「は、はは……」


 その後、勇者一行が立ち去った後も、兵士たちは雨の中で砦が鎮火するのを待ち続けた。
 やがて火は消えたものの、残ったのは焼け焦げた砦や残骸ばかりで、瓦礫の中から目的の死体を掘り起こすなど、不可能に近い状況だった。
「お、おい……どうする、これ?」
「これじゃあ、死体そのものが焼け落ちているんじゃ……」
「…………」

 兵士の中でも、機転の利きそうな兵士は不敵に笑った。
「なあ、死体が無ければ……それっぽいヤツを用意すればいいんじゃねーか?」
「そ、それっぽい奴って……どこに?」

 兵士は自軍の中にいる魔族の女性兵士に視線を向けると、他の兵士たちも察しがついた様子で不敵に笑いはじめた。
「ああ、そうだよな……」
「焼いちまえばわかんねーもんな」

 その女性兵士はすぐに逃げようとしたが、他の兵士たちに捕らえられてしまう。
「やめ……離して!」
「うるせぇ! ジタバタするんじゃねえ!」
「よし、取り押さえろ!」


 その光景を見ていたアデルハイトは、水晶玉から手を離して映像を消した。さすがに残酷すぎるのでこれ以上は僕には見せられないということだろう。
「配慮……感謝するよ。仲間たちの動向は?」
「全員、予定通りこちらに向かっています。もうしばらくすれば御城に到着するでしょう」

 僕は満足しながら頷いた。
 まだまだ油断するには早いが、最低でもこれでもうしばらくの間くらいは足止めができるだろう。


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