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13.迷いの森の必勝法
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翌朝。当初の見立て通りに雨が止んだので、小生は森の獣道を進んでいた。
小生はもちろん独りではない。頭の上には羽がなくなった妖精マリーヌが乗っており、彼女は乗り心地がよさそうにリラックスしている。
「ところで、マリーヌ?」
「なあに?」
「羽……少しは生えてきたの?」
そう質問すると、マリーヌは微笑みながら頷いた。
「本当に小指の先くらいだけど、ほんの少しだけ生えてきたよ」
なるほど。どうやら人間の爪と同じで、妖精の羽はなくなってしまっても少しずつ生えてくるモノのようだ。
しばらく歩くと沢を見つけたので、少し休憩することにした。
「少し休憩しよう」
「うん」
マリーヌは小生の身体から降りると、沢の水をすくって顔を洗っていた。
「一応言っておくけど沢の水は生水だから、飲みたいのなら小生が浄化するよ」
そう伝えるとマリーヌは、生水は飲むなと言っているんでしょ……とわかりきっているという反応をしていたが、小生の後半のセリフを聞いて驚いていた。
「じょ、浄化できるの!?」
「まがりなりにもユニコーンだからね」
沢の側に生えている草をたっぷりと平らげると、小生はマリーヌを頭に乗せて旅を再会した。
「豪快な食べっぷりだったね」
「うん、食べるときに食べておかないと」
獣道へと入ると、マリーヌはじっと森の中を見ていた。
「ところで妖精の里への行き方は知ってる?」
「角と匂いを頼りに、進んで行こうかと思ってるよ」
「……あそこにチョウチョがいるの……見える?」
彼女の指の先を追うと、確かに木の幹にチョウチョが止まっていた。
しかし、よく見ると普通のチョウチョではないことがわかる。これは、精霊の類が魔法力で作り出した幻術のような存在で、普通の生き物では見ることができないようだ。
ではなぜ、小生の目に映っているのかと言えば、頭の上にフェアリーのマリーヌが乗っているからだろう。
彼女は最低でも片手で小生の頭を触っており、普通の生き物では見落としてしまうような特殊な存在を見えるようにする力があるようだ。
「……これを追って行けば、里にたどり着けるのかい?」
そう問いかけると、マリーヌは「違うよ」と答えた。
「チョウチョには色によって当たりとハズレがあるの。今日は青いチョウチョを追って」
なるほど。日によって当たりやハズレが変わるのか。
おもしろい魔法だと思いながら、小生はマリーヌの指示に従って進んでいく。
おや、今度は黒いチョウチョが姿を見せた。
「……これがいる方向は、今日はハズレなんだよね?」
マリーヌは頷いた。
「ええ、黒いチョウチョは月曜日以外は無視して」
「了解」
チョウチョの色は、曜日と同じで7種類いることがわかった。
月曜日は黒。火曜日は赤。水曜日は青。木曜日は緑。金曜日は橙。土曜日は茶。そして日曜日は白である。
どのようにチョウチョが案内をしてくれるのかと言えば、例えば、2手に分かれている道では、右側には黒、赤、青、白が飛んでいて、左側には残りの3種のうちの2種類が飛んでいるという具合である。
これくらいなら、カンの良い冒険者なら、妖精さえ捕まえて鳥かごにでも監禁すれば、当たりルートを引くことができるかもしれないが、3手以上に道が分かれている場合は、チョウチョもバラバラに分かれているのも当たり前で、更に木の側に1匹だけ飛んでいるチョウチョなどがいたりもする。
間もなく小生たちの前にも、難問と言える道が出現した。
「……これは……厄介だね」
「そうだね」
一見すると道は2股に分かれているだけなのだが、右手に3匹、左手に3匹という具合に均等に散っている。それだけでも難しいところだが、更に厄介なのは正解であるはずの青色チョウチョがいないのだ。
チョウチョはどこだろうと探してみると、なんと……草の幹に止まって羽を休めている。
これは……どう判断すべきなのだろう……?
【羽を休めるチョウチョ】
【作者のひとりごと】
AIイラストで、昆虫のイラストを作ることができるのか試してみました。
すると……特に何の指示も出していないにも関わらず、チョウチョの羽飾りをつけた少女イラストが次々と出てきました。
6回ほど試行したら、うち4回が女の子イラスト。指示の仕方が悪かったのかなぁ……
【オマケ】
小生はもちろん独りではない。頭の上には羽がなくなった妖精マリーヌが乗っており、彼女は乗り心地がよさそうにリラックスしている。
「ところで、マリーヌ?」
「なあに?」
「羽……少しは生えてきたの?」
そう質問すると、マリーヌは微笑みながら頷いた。
「本当に小指の先くらいだけど、ほんの少しだけ生えてきたよ」
なるほど。どうやら人間の爪と同じで、妖精の羽はなくなってしまっても少しずつ生えてくるモノのようだ。
しばらく歩くと沢を見つけたので、少し休憩することにした。
「少し休憩しよう」
「うん」
マリーヌは小生の身体から降りると、沢の水をすくって顔を洗っていた。
「一応言っておくけど沢の水は生水だから、飲みたいのなら小生が浄化するよ」
そう伝えるとマリーヌは、生水は飲むなと言っているんでしょ……とわかりきっているという反応をしていたが、小生の後半のセリフを聞いて驚いていた。
「じょ、浄化できるの!?」
「まがりなりにもユニコーンだからね」
沢の側に生えている草をたっぷりと平らげると、小生はマリーヌを頭に乗せて旅を再会した。
「豪快な食べっぷりだったね」
「うん、食べるときに食べておかないと」
獣道へと入ると、マリーヌはじっと森の中を見ていた。
「ところで妖精の里への行き方は知ってる?」
「角と匂いを頼りに、進んで行こうかと思ってるよ」
「……あそこにチョウチョがいるの……見える?」
彼女の指の先を追うと、確かに木の幹にチョウチョが止まっていた。
しかし、よく見ると普通のチョウチョではないことがわかる。これは、精霊の類が魔法力で作り出した幻術のような存在で、普通の生き物では見ることができないようだ。
ではなぜ、小生の目に映っているのかと言えば、頭の上にフェアリーのマリーヌが乗っているからだろう。
彼女は最低でも片手で小生の頭を触っており、普通の生き物では見落としてしまうような特殊な存在を見えるようにする力があるようだ。
「……これを追って行けば、里にたどり着けるのかい?」
そう問いかけると、マリーヌは「違うよ」と答えた。
「チョウチョには色によって当たりとハズレがあるの。今日は青いチョウチョを追って」
なるほど。日によって当たりやハズレが変わるのか。
おもしろい魔法だと思いながら、小生はマリーヌの指示に従って進んでいく。
おや、今度は黒いチョウチョが姿を見せた。
「……これがいる方向は、今日はハズレなんだよね?」
マリーヌは頷いた。
「ええ、黒いチョウチョは月曜日以外は無視して」
「了解」
チョウチョの色は、曜日と同じで7種類いることがわかった。
月曜日は黒。火曜日は赤。水曜日は青。木曜日は緑。金曜日は橙。土曜日は茶。そして日曜日は白である。
どのようにチョウチョが案内をしてくれるのかと言えば、例えば、2手に分かれている道では、右側には黒、赤、青、白が飛んでいて、左側には残りの3種のうちの2種類が飛んでいるという具合である。
これくらいなら、カンの良い冒険者なら、妖精さえ捕まえて鳥かごにでも監禁すれば、当たりルートを引くことができるかもしれないが、3手以上に道が分かれている場合は、チョウチョもバラバラに分かれているのも当たり前で、更に木の側に1匹だけ飛んでいるチョウチョなどがいたりもする。
間もなく小生たちの前にも、難問と言える道が出現した。
「……これは……厄介だね」
「そうだね」
一見すると道は2股に分かれているだけなのだが、右手に3匹、左手に3匹という具合に均等に散っている。それだけでも難しいところだが、更に厄介なのは正解であるはずの青色チョウチョがいないのだ。
チョウチョはどこだろうと探してみると、なんと……草の幹に止まって羽を休めている。
これは……どう判断すべきなのだろう……?
【羽を休めるチョウチョ】
【作者のひとりごと】
AIイラストで、昆虫のイラストを作ることができるのか試してみました。
すると……特に何の指示も出していないにも関わらず、チョウチョの羽飾りをつけた少女イラストが次々と出てきました。
6回ほど試行したら、うち4回が女の子イラスト。指示の仕方が悪かったのかなぁ……
【オマケ】
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