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72.勇者試験、最後のお題

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 最後のお題は、なんと国王陛下じきじきに出題されるようだ。
 国王陛下よりも前に、大臣が受験者25名の前で言った。

「えー、陛下からお言葉を賜る前に……ひとこと、言わせて頂きたい」
 全員が喉を動かした直後に、大臣は言った。
「すでに、ここまで勝ち上がってきた諸君らは、十分に優秀で有能である……最後のお題は『面接』。つまり、国王陛下とウマが合うかどうかという、とても単純な話なので……もし、不合格となっても、自分を責めたりしないように!」

 大臣は念を押すように、もう一度言った。
「最後に重要なことなのでもう一度言う。諸君らは優秀で有能である……そのことを心に留めておくように!」


 ま、まあ……大臣の言いたいことはわかるが、ここまで念を押されると、かえって不安になってくる。
 僕だけでなくスティレットも、どこか不安に思いながら事の成り行きを見守っていると、大臣は言った。
「では、順番に陛下にお会いしてくるがいい」

 まず最初に、国王と面接をするのはじゃんけん大会で見事に勝ち残った受験者たちからだった。最初の1人が入ると、おおよそ3分くらいで大臣が出てきて、次の受験者を呼んでいる。
「どうやら、受験者は別の場所から退出しているようだね」

 そう伝えると、スティレットは耳をそばだてながら苦笑していた。
『そうだね……それに、凄く低い合格率になりそう』
「え……?」
 その言葉を聞いて、僕はひきつっていた。
 いったい国王は、どんな質問をしているんだろう?


「いったい、陛下はどんな質問を?」
 そう質問すると、スティレットは難しい顔をして僕を見た。
『貴殿には夢はあるか?』

 突然そんなことを言われて、僕はキョトンとしていた。
「あるといえばある……けどぉ……?」

 そういうあやふやな答えを返すと、スティレットは更に険しい顔をして僕を睨んだ。
『その夢は10年以内に現実になりそうか?』

「元の世界にいる両親に、オリヴィアと結婚したことを報告する……か。できる……かなぁ……?」
『はい、不合格!』
「お前はあるのかよぉ!」

 そう聞き返すと、スティレットは真顔で答えた。
『ない! つまり不合格!』
「自信たっぷりに言うな!」


 スティレットの耳を頼りに、冒険者の夢について聞いていると、たいそうな夢を騙るモノがいたと思えば、正直に可愛い奥さんが欲しいという正直者もいたようだ。
 国王は、どちらもことごとく不合格にしていくものの、正直者に関しては好感を持っているらしく、ちょっと雑談をしているようである。

 しばらく、スティレットと盗み聞きを楽しんでいたらオリヴィアの順番が回ってきた。
 そういえばエルフも耳がいいので、前の受験者の話を盗み聞きできるのではないかと思ったが、彼女たちや獣人系は耳栓をすることを求められていたらしく、オリヴィアは耳栓を取ってから中に入っていった。


 当然だが、僕は何もスティレットには聞かなかったし、スティレットも耳を絞って会話を聞こうとはしなかった。
「何だか、お前が耳を絞ってると……不機嫌になっているみたいだな」
『アーモンドみたいな顔って、正直に言ってもいいんだよ?』
「食べ応えがありそうなアーモンドだな」

 冗談を言い合いながら雑談を続けていると、アリーシャが呼ばれていた。どうやらオリヴィアの面接は終わったらしい。僕とスティレットは、オリヴィアの行方を捜すと……彼女は、王宮の中庭で待機していた。


「お疲れ様」
 そう言いながら近づくと、オリヴィアはどこかすっきりした表情で僕を見てきた。
「残念ながら……不合格でした」

 その答えに、僕もは内心では落胆してしまったが、同時に安堵もしていた。
 もしオリヴィアが勇者資格を取れば、一般のヒーラーとして穏やかな生活は送れないのではないかと思っていたからだ。
 確かに、残念ではあるが……癒し手として十分に食べていけるオリヴィアに勇者資格は、不要とも思える。

「そうだったんだ……それなら、僕がこれからはもっとしっかりしないとね!」
 そう伝えるとオリヴィアは微笑みながら言った。
「頼りにしていますよ!」


 その言葉を聞いていたスティレットは、少し思い切ったという雰囲気で口を開いた。
『オリヴィア、いい機会だから……そろそろ打ち明けてもいいんじゃない?』

 スティレットの言葉を聞き、オリヴィアも「そうですね……」と答えてから僕を見た。
 なんだろう。感覚が鋭い2人が揃って、僕に何を打ち明けるのだろう。

 オリヴィアは顔を赤らめると、やがて僕を見つめた。

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