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64.試験官からの二択
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間もなく受験者たちは、一列に並び始めた。
理由はもちろん、トーナメント戦に出場するか、サイコロを振って合否を決めるかを選ぶためだ。
遠目から眺めてみると、本当にダイスを選択する受験者が多かった。
トーナメント表を選ぶのは、4人に1人……いや、5人に1人くらいだろう。ダイスは次々と戦士を不合格にしていくが、それでも気まぐれに合格者も出す。
そして、この試験の罠とも言えそうなのは、気まぐれにダイスに選ばれた通過者が大声で歓声を上げることだ。
4分の1しか合格率がないので、不合格を覚悟でダイスを振るので、これで次の予選に進めたことを大声でアピールする人間が多い。
徐々に順番は進んでいき、遂に僕たちの番になった。
「……君はどうするのかな?」
「トーナメントを選択します」
「382番……トーナメント希望。次の君は?」
オリヴィアも当然のように言った。
「トーナメントを希望します」
「ええと……次の、うお!? ウマ!?」
『384番のウマも、トーナメントを希望しまーす』
その後に続く、ジルーとアイラもトーナメントの方を希望したため、フロンティアトリトンズは全員がトーナメントを選択したことになる。
けっきょく僕たちと同じように、トーナメントを選択したリックも苦笑しながら言った。
「今日1日だけで、300人近い人間が不合格になりましたね」
「そうですね……更にトーナメントの分と考えると、ここから先の試験も先が思いやられそうです」
旅館へと戻ると、僕らは呆然としながら仲の様子を眺めていた。
確かに大勢の受験者が不合格になったことはわかっていたが、こうして実際にロビーや食堂を見渡してみると、この旅館だけでも多くの人が明日の馬車の予定などを、旅館の係員から聞いている。
「明日の今頃には、この旅館から人の気配がなくなっていそうな勢いだね」
「縁起でもないことを言わないでください」
さすがにオリヴィアにも怒られるかと思いながら、僕は自分が失言したことを理解した。
この日も僕は、オリヴィアと豪華な夕食を楽しみながら、明日に備えて身体を休めることにした。
明日は間違いなく大事な一戦になる。ここで快勝できなければ、たとえ勝利したとしても明後日の戦いで一方的に敗北することにもなりかねない。
隣にオリヴィアが居てくれたからか、この日もぐっすりと休むことができた。
さて、気を取り直して……僕たちは、先日と同じように会場へと向かった。そこにはたくさんのトーナメント表が出来上がっていたのだが、受験者の数は昨日と比べれば圧倒的に少ない。
まあ……数が少なくなっているのは当たり前だが、どこか表を見ている受験者の雰囲気も変だった。なにか妙なことでも起こってるのだろうか。
そう思いながら表に近づくと、僕も思わず「え!?」という声を上げていた。
なんと、トーナメント表は127個分用意されていた。
そのため1人か、下手をしたら誰の名前も書かれていないトーナメント表しかなかったのである。
「…………」
「…………」
これはいったい、どういうことだと思いながらオリヴィアと顔を見合わせていると、隣でスティレットがクスクスと笑っていた。
「おい、何笑ってるんだスティレット?」
『ごめんごめん』
「何か気になることでも?」
オリヴィアが心配そうに眺めると、スティレットは言った。
『いや、だってさ……これって、勇者を選び出す試験でしょう。進んで苦難を受けさせるべきなのに、楽にサイコロで合格させるような選択肢を運営側が用意したのが……どうも引っかかってたんだ』
スティレットの話を聞いていたアイラは、険しい顔をしながら言った。
「つまり……このトーナメント表は……」
『多分だけど、多くの人がこのカラクリに気が付いたら、これはそのまま4次試験のお題として機能する予定だったんじゃないかな。実際は、多くの人が罠であるサイコロに流れたけどね』
近くにいたリック隊長も言った。
「つまり、この4次試験は……勇者の資質を持つ者と、極端に運の良い者を選び出す試験だったというわけか……」
『そういうことなんだろうね』
こうして、僕たちトリトンズとリック隊の合わせて10人は、次の5次試験へとコマを進めた。
4次試験通過者……合計209名。
【試験官の騎士】
理由はもちろん、トーナメント戦に出場するか、サイコロを振って合否を決めるかを選ぶためだ。
遠目から眺めてみると、本当にダイスを選択する受験者が多かった。
トーナメント表を選ぶのは、4人に1人……いや、5人に1人くらいだろう。ダイスは次々と戦士を不合格にしていくが、それでも気まぐれに合格者も出す。
そして、この試験の罠とも言えそうなのは、気まぐれにダイスに選ばれた通過者が大声で歓声を上げることだ。
4分の1しか合格率がないので、不合格を覚悟でダイスを振るので、これで次の予選に進めたことを大声でアピールする人間が多い。
徐々に順番は進んでいき、遂に僕たちの番になった。
「……君はどうするのかな?」
「トーナメントを選択します」
「382番……トーナメント希望。次の君は?」
オリヴィアも当然のように言った。
「トーナメントを希望します」
「ええと……次の、うお!? ウマ!?」
『384番のウマも、トーナメントを希望しまーす』
その後に続く、ジルーとアイラもトーナメントの方を希望したため、フロンティアトリトンズは全員がトーナメントを選択したことになる。
けっきょく僕たちと同じように、トーナメントを選択したリックも苦笑しながら言った。
「今日1日だけで、300人近い人間が不合格になりましたね」
「そうですね……更にトーナメントの分と考えると、ここから先の試験も先が思いやられそうです」
旅館へと戻ると、僕らは呆然としながら仲の様子を眺めていた。
確かに大勢の受験者が不合格になったことはわかっていたが、こうして実際にロビーや食堂を見渡してみると、この旅館だけでも多くの人が明日の馬車の予定などを、旅館の係員から聞いている。
「明日の今頃には、この旅館から人の気配がなくなっていそうな勢いだね」
「縁起でもないことを言わないでください」
さすがにオリヴィアにも怒られるかと思いながら、僕は自分が失言したことを理解した。
この日も僕は、オリヴィアと豪華な夕食を楽しみながら、明日に備えて身体を休めることにした。
明日は間違いなく大事な一戦になる。ここで快勝できなければ、たとえ勝利したとしても明後日の戦いで一方的に敗北することにもなりかねない。
隣にオリヴィアが居てくれたからか、この日もぐっすりと休むことができた。
さて、気を取り直して……僕たちは、先日と同じように会場へと向かった。そこにはたくさんのトーナメント表が出来上がっていたのだが、受験者の数は昨日と比べれば圧倒的に少ない。
まあ……数が少なくなっているのは当たり前だが、どこか表を見ている受験者の雰囲気も変だった。なにか妙なことでも起こってるのだろうか。
そう思いながら表に近づくと、僕も思わず「え!?」という声を上げていた。
なんと、トーナメント表は127個分用意されていた。
そのため1人か、下手をしたら誰の名前も書かれていないトーナメント表しかなかったのである。
「…………」
「…………」
これはいったい、どういうことだと思いながらオリヴィアと顔を見合わせていると、隣でスティレットがクスクスと笑っていた。
「おい、何笑ってるんだスティレット?」
『ごめんごめん』
「何か気になることでも?」
オリヴィアが心配そうに眺めると、スティレットは言った。
『いや、だってさ……これって、勇者を選び出す試験でしょう。進んで苦難を受けさせるべきなのに、楽にサイコロで合格させるような選択肢を運営側が用意したのが……どうも引っかかってたんだ』
スティレットの話を聞いていたアイラは、険しい顔をしながら言った。
「つまり……このトーナメント表は……」
『多分だけど、多くの人がこのカラクリに気が付いたら、これはそのまま4次試験のお題として機能する予定だったんじゃないかな。実際は、多くの人が罠であるサイコロに流れたけどね』
近くにいたリック隊長も言った。
「つまり、この4次試験は……勇者の資質を持つ者と、極端に運の良い者を選び出す試験だったというわけか……」
『そういうことなんだろうね』
こうして、僕たちトリトンズとリック隊の合わせて10人は、次の5次試験へとコマを進めた。
4次試験通過者……合計209名。
【試験官の騎士】
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