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15.最初のクエスト
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翌朝、すっかり休んだ僕たちは、ギルドの受付へと向かった。
そこでは、数人のギルドメンバーたちが食事をしていたが、やはりトリトンズだけあってマーフォークが目立つ。
食事を終えた彼らは、ヘビのように下半身を動かしながら外に出稼ぎに行ったり、大工道具を手に部屋に戻っていったりしている。
「フェリシティーさん、朝食と残っているクエストを……」
「こちらになります」
彼女は慣れた様子で、水の入ったコップと一緒に、依頼状を差し出した。
「このお水……幾らですか?」
オリヴィアが驚いた様子でフェリシティーに聞いている。
僕は反射的にお冷を受け取っていたが、これってツーノッパ地域では普通ではないサービスだったっけ。
「無料ですよ」
どうやらフェリシティーは水系魔法が使えるらしく、指先で器用に円を作ると、まるでマジックでもしているかのようにコップに水を入れていた。
どうやら、大気から水分を集めているようだ。
さて、クエストはと言えば、森のゴブリン退治という出来高制の仕事だった。
フェリシティーは、オリヴィアとスティレットにも違うクエストを差し出しており、僕は2人とは別行動をすることを推奨されているようだ。
フェリシティーは言った。
「カイトさん、ゴブリン退治の経験は?」
「初めてです」
「でしたら、ギルドメンバーで慣れた者がいるので、後ほどご紹介します」
ゴブリン退治は、先ほども言ったが出来高制の仕事だ。
倒したゴブリンの右耳を1個を持ち帰ると、害獣退治の報酬として小銀貨1枚と銅貨6枚を貰える。つまり、日本円に直して1匹当たり1600円だ。
そんな確認をしていたら、少女の声が聞こえてきた。
「おはよーギルド長!」
「ちょうど来ましたね。カイトさん……ご紹介します、今日あなたと組んでいただくウェアウルフのジルーさんです」
紹介を受けると、オオカミ族の少女ジルーは微笑んだが、すぐにオリヴィアに視線を向けると表情を戻した。
「さ、最近入った人たちだね……もしかして、こっちのエルフの人は奥さん?」
「そうだよ。妻のオリヴィア……よろしくね」
そう伝えると、オリヴィアはゆっくりと席を立ってジルーと握手をしていた。特にオリヴィアはジルーに敵意を持っていない印象だったが、かえってその態度がジルーを委縮させたようだ。
「よ、よろしくお願いします……お二人とも……」
フェリシティーは言った。
「ジルーさん。カイトさんはゴブリン退治は初めてなので……退治の仕方や注意点をしっかりと教えて差し上げてください」
「わかりました。よろしく……」
彼女はオリヴィアに気を遣っているようだ。ここは僕としても単なる同僚として、淡々と仕事をすることにしよう。
スティレットは、真顔でギルド長に言った。
『奥さんのいる男に、若い女の人を近づけるのは……ギルド長としてどうなの?』
そう抗議されると、フェリシティーは困り顔になって答えた。
「うちのギルドは規模が小さいので、ゴブリン退治に慣れているのは彼女しかいないのです。それに……男だから安全というワケではないんですよ」
ギルド長の言葉を聞いて、スティレットは不思議そうな顔をしていた。
『どういうこと?』
「冒険者の中には、男色の趣味を持つ者もいれば、恋人や妻を持つ者を妬んで危害を加えようとする者もいます」
そこまで言うとフェリシティーは微笑んだ。
「だからこそ、ジルーは信用できます」
そう言われるとスティレットも頷いた。
『確かにそうだね。あのジルーという女の子……膝枕をしてもらってもいいくらい心が澄んでいる。他にそんなことを頼めるのは、ギルド長とオリヴィアくらいだよ』
オリヴィアも茶目っ気のある表情で言った。
「カイト様を忘れてもらっては困りますよ」
その言葉を聞いたスティレットは笑った。
『そんな現場を牝馬たちに見られたら、集団で襲われそうだな~』
スティレットの冗談を聞き、僕たちは笑い声を響かせた。
【ウェアウルフのジルー】
そこでは、数人のギルドメンバーたちが食事をしていたが、やはりトリトンズだけあってマーフォークが目立つ。
食事を終えた彼らは、ヘビのように下半身を動かしながら外に出稼ぎに行ったり、大工道具を手に部屋に戻っていったりしている。
「フェリシティーさん、朝食と残っているクエストを……」
「こちらになります」
彼女は慣れた様子で、水の入ったコップと一緒に、依頼状を差し出した。
「このお水……幾らですか?」
オリヴィアが驚いた様子でフェリシティーに聞いている。
僕は反射的にお冷を受け取っていたが、これってツーノッパ地域では普通ではないサービスだったっけ。
「無料ですよ」
どうやらフェリシティーは水系魔法が使えるらしく、指先で器用に円を作ると、まるでマジックでもしているかのようにコップに水を入れていた。
どうやら、大気から水分を集めているようだ。
さて、クエストはと言えば、森のゴブリン退治という出来高制の仕事だった。
フェリシティーは、オリヴィアとスティレットにも違うクエストを差し出しており、僕は2人とは別行動をすることを推奨されているようだ。
フェリシティーは言った。
「カイトさん、ゴブリン退治の経験は?」
「初めてです」
「でしたら、ギルドメンバーで慣れた者がいるので、後ほどご紹介します」
ゴブリン退治は、先ほども言ったが出来高制の仕事だ。
倒したゴブリンの右耳を1個を持ち帰ると、害獣退治の報酬として小銀貨1枚と銅貨6枚を貰える。つまり、日本円に直して1匹当たり1600円だ。
そんな確認をしていたら、少女の声が聞こえてきた。
「おはよーギルド長!」
「ちょうど来ましたね。カイトさん……ご紹介します、今日あなたと組んでいただくウェアウルフのジルーさんです」
紹介を受けると、オオカミ族の少女ジルーは微笑んだが、すぐにオリヴィアに視線を向けると表情を戻した。
「さ、最近入った人たちだね……もしかして、こっちのエルフの人は奥さん?」
「そうだよ。妻のオリヴィア……よろしくね」
そう伝えると、オリヴィアはゆっくりと席を立ってジルーと握手をしていた。特にオリヴィアはジルーに敵意を持っていない印象だったが、かえってその態度がジルーを委縮させたようだ。
「よ、よろしくお願いします……お二人とも……」
フェリシティーは言った。
「ジルーさん。カイトさんはゴブリン退治は初めてなので……退治の仕方や注意点をしっかりと教えて差し上げてください」
「わかりました。よろしく……」
彼女はオリヴィアに気を遣っているようだ。ここは僕としても単なる同僚として、淡々と仕事をすることにしよう。
スティレットは、真顔でギルド長に言った。
『奥さんのいる男に、若い女の人を近づけるのは……ギルド長としてどうなの?』
そう抗議されると、フェリシティーは困り顔になって答えた。
「うちのギルドは規模が小さいので、ゴブリン退治に慣れているのは彼女しかいないのです。それに……男だから安全というワケではないんですよ」
ギルド長の言葉を聞いて、スティレットは不思議そうな顔をしていた。
『どういうこと?』
「冒険者の中には、男色の趣味を持つ者もいれば、恋人や妻を持つ者を妬んで危害を加えようとする者もいます」
そこまで言うとフェリシティーは微笑んだ。
「だからこそ、ジルーは信用できます」
そう言われるとスティレットも頷いた。
『確かにそうだね。あのジルーという女の子……膝枕をしてもらってもいいくらい心が澄んでいる。他にそんなことを頼めるのは、ギルド長とオリヴィアくらいだよ』
オリヴィアも茶目っ気のある表情で言った。
「カイト様を忘れてもらっては困りますよ」
その言葉を聞いたスティレットは笑った。
『そんな現場を牝馬たちに見られたら、集団で襲われそうだな~』
スティレットの冗談を聞き、僕たちは笑い声を響かせた。
【ウェアウルフのジルー】
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