エッケハルトのザマァ海賊団 〜金と仲間を求めてゆっくり成り上がる〜

スィグトーネ

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39.芦毛の一角獣フォレストメモリー

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 港の大都市ポルガーの商会は、とても大きな納屋を持っていた。
 ミホノシュヴァルツ号と一緒に中へと入ると、担当者は微笑みながら言う。
「気に入ったモノがいましたら、納屋番号を仰ってください」
「わかりました」

 それにしても、納屋だけでなくウマまで手入れが行き届いている。いま桶に入っている夕食を食べているこのウマも、見事な毛並みだし筋肉もたっぷりだ。
 きっとお高いんだろうなと思いながら歩いていくと、ミホノシュヴァルツ号は歩みを止めた。
「……どうした?」
【奥から4番目の左の納屋……そこのウマをよく見せてくれ】


 その場所の前まで通りかかると、僕は担当者に言った。
「すみません。14番のウマをよく見せてください」
 言われた通りに伝えると、担当者も不思議そうな顔をしていた。理由は僕もよくわかる。この納屋には筋骨たくまし牡馬が何頭も揃っているし、牝馬にしたってもっと体格がよく元気な仔を産めそうなヤツがたくさんいる。

 本当にこの牝馬なのかと思いながらミホノシュヴァルツ号を見ると、彼は軽く鼻を鳴らしながらテレパシーを伝えてきた。
【間違いない……この牝馬を買ってくれ】
「わかった」

 すぐに担当者を見た。
「このウマを下さい」
「この牝馬ですね……大金貨10枚です」

 大金貨10枚を手渡すと担当者は領収書を出してくれた。取引成立だ。
 担当者は納屋を開けると、その牝馬の手綱を引きながら僕に手渡す。
「他に必要なモノはございますか?」
「そうですね……では、トウガラシやサンゴ、あと……ここはワインが有名でしたよね?」
「はい。今年のワインは特に出来が良く、自信をもってお勧めできます!」


 僕は、香辛料の1つであるトウガラシ、どこに行っても喜ばれるワインと砂金、そしてサンゴを買うことにした。
 お題は真珠で支払い、不足分を大金貨で支払う形にしたため、大金貨を節約できたのは幸いだ。
 
 こうして僕たちのコインは船にある分を含めて、プラチナ貨3枚、大金貨26枚、小金貨18枚となっている。
 砂金があるので、もう少し攻めた買い方をしろと言われるかもしれないが、仕入れたものが思うように売れないということもあり得るので、ほどほどが一番だろう。

 船に戻ってみると、マーチルたちが早くも新しく買った牝馬に注目していた。
「お帰り~ って、その牝馬も買ったの?」
「ああ、ミホノシュヴァルツ号が欲しがったからね」
「ほほう……シュヴァも隅に置けませんなぁ」
『うるさい』


 甲板に上がったところで、ミホノシュヴァルツ号は芦毛の牝馬に視線を向けていく。
『さて、そろそろ……何か喋ってくれてもいいんじゃないか?』
 そう伝えると、今まで普通のウマのようにしか見えなかった牝馬は、ガラっと雰囲気を変えた。まるでその雰囲気は、別の人格が乗り移ったようだ。
『わたくしの存在に気が付くなんて……さすがですね』

「き、君はいったい……?」
 そう聞いてみると、牝馬はしっかりと僕を見つめた。
『貴方がキャプテンですね。わたくしの名はフォレストメモリー。大地の加護を得た一角獣です』


 大地の一角獣という話を聞いていたオフィーリアは、恐る恐るという様子で質問した。
「大地の一角獣……! ということは、植物の成長を促進させたりすることも……?」
『可能です。まあ……とはいっても、船の上でできることと言えば、簡単な栽培程度ですが……』
「どんなものを作れるんだい?」
『豆と雨水があれば、そこからもやしと呼ばれる食べ物を作ることができます』

 もやし……聞いたことがない食べ物だけど、豆が原料となって作る食材なのだから栄養はありそうだ。
「早速、作ってもらっていいかい?」
『設備さえ整えれば可能です』

 どうやらもやしという食べ物は、船内の暗い場所でしか作れないようだ。船大工ニッパーや手の空いた有翼人たちに頼みながら、航行中に作ってもらうことにしよう。


 話がまとまったところで有翼人たちを見ると2人は帰っていったようだが、男性3人、女性1人も残っていた。これは凄い。僕はてっきり1人か2人残っていれば上出来だと思っていたのだけど、こんなに残ってくれるとは思わなかった。
「エッケハルト船長!」
「なんでしょう?」

 有翼人の中でも、特に体格の良い人が言った。
「我々も貴殿の海賊団に入れて欲しい!」
「役に立ってみせるよ!」

 これは……願ってもいない話だ。
 僕も頷きながら答える。
「歓迎する!」


 その話を聞いていたマーチルは、こちらを見た。
「ところで、これからどうするの?」
「そうだね……更に南に行ってもっと珍しいモノでも……」

 そんな話をしていたとき、ミホノシュヴァルツ号は視線を上げていた。どうやら、渡り鳥が1羽こちらに舞い降りてきているようだ。
『……なに!?』

「どうしたんだい?」
 質問をすると、ミホノシュヴァルツ号は深刻な顔をしていた。これはただことではなさそうだ。
『赤ひげ海賊団が、本格的な人魚狩りをするつもりらしい……早めに手を打つ必要がありそうだ』

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