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ガンスーンの海賊デビュー

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 俺ことコーモノは、ガンスーンのヤローと一緒に子分集めを続けていた。
 それにしてもコイツって、本当にヤバいヤツだ。町の不良から本物の犯罪者まで、手当たり次第に声をかけるだけじゃなく、とにかくならず者に海賊になりたいと思わせちまう。

 そして、総勢32名になったところで、ガンスーンは言った。
「よし、お前ら……いよいよ海賊船をゲットする時が来たぜ!」
「おーーー!」

 俺はそのキップのいい発言に首を傾げたくなった。
 海賊船と言ったって、この辺りに30人以上の人間が乗れるような規模の船など通っていただろうか。そもそもガンスーンには探索能力はないはずだし、手下にした不良共もひいき目に見て出来ることは槍働きくらいだ。

 そんなことを考えている間にも、ガンスーンは手下を率いて漁村へと向かった。
 おいおい、漁村で何をするつもりだと思っていたら、このバカはマヌケにも叫んでいる。
「よっし、頂いてやるぜ……舟を!」
「おおおおおお!」

 その光景を見て、俺はポカンとしていた。
 おい。お前らはこれから魚でも釣りに行くというのか。いや、それとも、ここまで全員がノリノリだと何だか俺の方が間違っているかのような錯覚さえ覚える。

 …………
 …………


 俺の不安をよそにバカ集団は、漁民たちの商売道具である舟をかっぱらうと、そのまま海へと漕ぎだした。
 このコーモノもその一人なんだけどよ、なんで3人1組になって、こんな小さな渡し舟に乗って大海原に漕ぎ出さなといけないんだ。
 これって、笹でできた舟で大河を渡り切ろうとするほど無謀は話だぞ!

 そんなことを考えていたら、オール漕ぎに慣れていない仲間同士の舟がぶつかり合っていた。
「おいテメエ! 真っ直ぐに漕げよ!」
「そういうテメーこそ、曲がってるじゃねえか!」

「おいー、なんでさっきからグルグル回ってるんだ? どういうことこれ?」
「なーがーーさーーーれーーーーるーーーーー!」


 よく考えてもみれば、こいつらの大半が町の不良なのだから、真っ直ぐに舟を漕げるはずがない。
 11隻で漕ぎ出した俺たち海賊団は、まず2隻が明後日の方角に流されていき、1隻がグルグルと回って陸へと押し戻され、1隻が浅瀬に乗り上げて沈没し、更に1隻が別方向に流されていく。

 そして、よく見たら舟の数も半分以下になっていやがった。
「おい、ガンスーン……仲間の数が半分以下になってるぞ!?」
「ああん?」

 ガンスーンは、周りの仲間が減っていることに気が付いたようだ。だけどコイツは、ゲスじみた笑みを浮かべながらほざきやがる。
「ついてこれないヤツのことなんざ放っておけ!」

 コイツめ……遂に本性を現しやがった。
「ど、どこに行くんだー!」
 直後に1隻が変な方向に向かって行くも、ガンスーンは無視した様子で進んでいく。
 おい、もう……舟は4隻しかねえんだぞ。クルーの数が12人まで減っていることを何とも思わないのかコイツは。
「さあ、行け……大海原に!」


 威勢よく叫んだところで、ガンスーンの船は浅瀬に乗り上げ、舟ごと転覆した。
 特に鎧を着たまま立って調子に乗っていたガンスーンは、モロに海中に落ちてバタバタと暴れている。
「あぼうげぎおydかかくcせぶ!」

 確か、ついてこれない奴のことなんて放っておけばいいんだったな。
 近くにいた仲間が、どうする? と言いたそうにしていたので、俺は指示を出すことにした。
「前船長の指示通りだ。ついてこれないヤツのことなんざ放っておけ。行くぞ!」
「へ、へい!」

「た、たぶごぶ!」
「邪魔なんだよ!」
 手下の1人が、舟にしがみつこうとするガンスーンの脳天にオールを打ち付けると、さすがのガンスーンも気絶したのか、そのままゴミのように流れて行った。
 まあ、岸の方向に向かっているし、運が良ければ助かるんじゃないだろうか。知らんけど。


 こうして、俺は5人の手下を率いながら、手近な海岸へと戻ることにした。
「何だか元の木阿弥っすね」
「まあ、下手に独立するより……どこかの海賊団に入れてもらう方が現実的かもな」

 海賊団も、チームによっては雇用契約をしっかりと結んでくれて、福利厚生もしっかりしている所はあると聞く。そういう海賊団にきちんと認めてもらうところからか。
「とりあえず、パブにでも行って情報収集でもするか!」
「へい!」

【ならず者のコモーノ】
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