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33.堕天使たちの再来

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 間もなく、僕たちは仕入れを済ませると船へと戻った。
 このエディンペガ地域の名産品と言えば、良質な石炭とウイスキーなどの酒だ。酒蔵は幸いにも無事だったし、石炭も海賊の攻撃を受けた商会から安値で買うことができた。どうやら、保管場所に困っていたようである。

 他にもヤギや羊の毛で作られた衣服なども有名なのだが、冬が近いことに加えて都市が攻撃を受けたせいで品薄となっている。こちらは……仕方ないので諦めることにしよう。

「ヤギや羊の衣服が手に入らなかったのは残念だな。また……機会があったら来ようかな?」
 そう呟くと、隣で石炭を運んでいるベンジャミンも頷く。
「私もそれをお勧めするよ。あれはいいものだから」

 石炭やお酒を船の倉庫へと入れると、僕たちは一息ついた。
 お酒はどこに行っても喜ばれるし、石炭は掘り出せる鉱山も少ないので、どの町に行っても高値で売れるという素敵なシロモノだ。

 僕は船長室に戻ると、金庫の中に残ったお金を保管した。
 プラチナ貨は3枚。大金貨は11枚。小金貨17枚ほどに減っている。こうしてみると、様々なモノを仕入れたんだなとしみじみ思う。
「じゃあ、男部屋に案内するよ」
「ああ、すまない」


 男部屋は現在、僕、ニッパー、ヤーシッチ、そしてベンジャミンの4人で使う感じだ。
 この船を強奪した時に比べて、きれいに掃除もしたから変な臭いも少なくなっているが、やはり酒やタバコの臭いは少し残ってしまっている。
 鼻の良いミホノシュヴァルツ号は、この臭いが嫌いらしく未だに甲板で寝ているのだ。
「ここにハンモックをかけて寝ているんだよ」
「なるほど。これが私の分か……」

 説明をしていると、ドワーフのニッパーが笑いながら言った。
「ちなみに、すぐ隣が女子部屋だが……覗こうとか思うなよ。おっかない娘が3人ほどいるぞ?」
「いや、騎士なんだから、はしたないことはしないだろ!」

 そうツッコミを入れると、すぐに男部屋のドアが開いてマーチルが笑ったまま入ってきた。
「おっかない娘ってだあれのことかなぁ?」
「ん~ とりあえず、お前さんのようなカマセネコのことじゃあないな~」
「誰がカマセじゃー!」

 ちなみにおっかない女とは、個人的にはオフィーリア、エリン、リーゼのことだと思う。
 オフィーリアの説明は不要だろう。エリンは怒らせてストライキを起こされると洋上で水攻めを受けることになるし、リーゼは料理番だから食事に何を仕込まれるかわからない。

 まあ、冗談はこれくらいにして、僕は仲間たちを見た。
「とりあえず、今日はもう遅いから、今日は寄港したままゆっくりと休んで、明日は朝日と共に出港しようと思う」
「わかった。じゃあ……今日は美味い酒でも呑んで、ゆっくりと休むか~」
「もう、飲み過ぎはダメだよニッパー!」

 マーチルの言葉を聞いて、ヤーシッチやベンジャミンは笑っていた。


 その後、僕たちはミホノシュヴァルツ号に飼い葉や水などを振る舞ってから夕食となった。
 新たな仲間ベンジャミンが加わったので、リーゼも腕を振るって普段よりも多くの食事を用意してくれている。特に酒が好きなニッパーやエリンは晩酌を楽しみ、僕もワインを片手にチーズを食べて幸せな気分になった。
「あまり深酒するなよ。また敵が来るかもしれないからな」
「あのねえニッパー。そういうアンタが一番飲んでるじゃない」

 どうだこうだ言いながらディナーを楽しむと、僕たちは寝室で就寝することにした。
 宵の口の時間では、港町の人々も起きているので、堕天使たちが襲撃してくる危険性も低い。むしろ港の人たちが寝静まった後の方が危ないのである。


 しばらく眠っていると、ふと意識が戻った。
 普段なら、そろそろ交代の時間となるはずである。ゆっくりと起き上がって様子を確認してみると、まだヤーシッチが寝ていた。
 そうか。仲間が1人加わったから、見張りの時間も変わっているんだな。

 そう思いながらまた寝ようとしたとき、港町の警鐘が鳴り響いた。
 驚いてハンモックから起き上がると同時に、ハルフリーダの声が響いてくる。
「みんな、起きて! 敵が……敵の船団が来ているよ!!」

 ヤーシッチたちも素早く立ち上がると、僕たちは駆け足で甲板へと出た。
 ハルフリーダの指先を見ると、真夜中の海上に何隻もの船がある。その正体はどう見ても、堕天使の海賊船だ。

「すぐに船を出す……戦闘準備を!」
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