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29.堕天使を、赤ひげ団に擦り付けろ!

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 僕も隣で話を聞いていたオフィーリアも、渡り鳥の報告を聞いて唖然としていた。
 前方には赤ひげ団が待ち構え、後方からは堕天使一行がストーキングしてきている。僕たちは10人もいない海賊団なのだから、どっちとぶつかり合っても死活問題だと言うのに、このままでは挟み撃ちにされてしまう。

 だけど、この状況を僕はチャンス到来と感じていた。
 なぜなら僕たちには、人間よりも力強いゴーレムたちが付いているのである。
「……オフィーリア」
「はい」
 僕は少し離れた位置から話を聞いていたヤーシッチを見た。
「それからヤーシッチ」
「あ、ああ……なんだ?」
「今から僕の言う通りに船を動かしてくれ」


 オフィーリアとヤーシッチは、浅瀬だらけの海域でも手足のように船を操れる達人たちだ。彼女たちは当たり前のように僕の指示通りに船を動かしてくれた。
 具体的に何を指示したのかと言えば、まずは中途半端な迂回をしてもらった。

 僕はペースを下げながら堕天使海賊団との距離を縮めつつ、更に赤ひげ団の視界に入ることで、両者のターゲットになるように努めた。
 オフィーリアたちのコントロール能力なら、これくらいのことは容易くやってくれるので、堕天使海賊たちは獲物である僕たちに食いつくように距離を詰め、更に赤ひげ海賊団もカモである僕たちに食いつくように距離を縮めてくる。

「よし、ペースを一気に上げて!」
「はい!」
 オフィーリアは指示通り、ゴーレムたちに加速させると、一気に僕と他の2隻との間に距離が空いた。
 そうすると……堕天使海賊と赤ひげ海賊団はお互いが横並びとなり、先に堕天使海賊団が赤ひげ海賊団に攻撃を仕掛けた。

 距離が離れているため、何を言い合っているのかはわからないが「犯罪者どもめ!」だろうか。赤ひげ海賊団にも言い分があるらしく「うるせー堕天使!」と叫んでいるように感じる。


 僕たちは、一定の距離を取ったところで船を制止し、その戦いを見物していた。
 間もなく赤ひげ海賊団から、幾つものロープが投げられると、堕天使側からもロープが投げられ、お互いに相手の船の上に乗りこんでの乱戦が始まった。

 敵vs敵のやり取りを見てマーチルは喜んでいたが、冷静なヤーシッチは質問してきた。
「我々はどうするんだ?」
「洋上でこんなことをする犯罪者を放ってはおけないでしょ?」


 僕はエッケザックスの宝玉で、ミホノシュヴァルツ号は鳥を用いて、海賊たちの動向をチェックすることにした。堕天使も赤ひげ海賊も意地になっているらしく、船員の数が半分以下になっていても戦いを止めない。
 どちらも死者や負傷者であふれかえり、実質的に戦闘不能になったところで、僕はオフィーリアに指示を出した。
「連中を攻撃して船を制圧する……接近を!」
「はい!」
「みんなも、上陸準備を!」

 そう指示を出すと、ニッパーは頷いてからこちらを見た。
「で、どっちの船を襲うんだ?」
「勝つ方を狙いたいから、堕天使側だね!」



 堕天使側も赤ひげ側も、戦いに夢中になっているらしく、僕たちが接近していることに気付かなかったようだ。
 堕天使側が叫び声を上げたとき、僕たちの船は間近にまで近づいており、ヤーシッチ、ニッパー、マーチルはロープを投げて堕天使の船に乗り込み、僕もミホノシュヴァルツ号の背に乗って上空から飛び乗った。

 最初に堕天使の船に乗り込んだのは僕だ。
 着地と同時に、敵船員の1人を踏みつけて着地すると、間髪を入れずに2人目を剣で薙ぎ払い、敵の船員が近づいてくると、ミホノシュヴァルツ号が敵船員を纏めて2人ほど踏みつけながら着地。
 2人で乱闘しているうちに、ニッパー、マーチルが堕天使の船に上陸してくる。

 マーチルたちが、次々と船内へと入って制圧を進めると、僕とシュヴァルツ号は赤ひげ海賊団の船へと上陸を果たし、僕はそのまま船内へと突入した。
 その直後に、ヤーシッチも赤ひげ海賊団の船内へと入ると、すでに赤ひげ側も壊滅していたらしく、先に入り込んでいた堕天使たちと戦いになった。

 とはいっても相手も3人くらいしかいなかったので、僕たちは問題なく堕天使たちを倒し、2隻の船の船の制圧に成功した。


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