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2.エッケハルトの特殊能力

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 僕にも特殊能力があったことは、嬉しいことではあった。
 あったけれど、今までの努力は何だったのだろうという失望感もある。あともう少しだけ早く知っていれば、追放されることもなかったかもしれない。
『いろいろと思うことはあるかもしれんが、自分の能力を知りたいと思わんか?』

 すぐに頷くと、ミホノシュヴァルツ号はその額から金色の光を放つ角を出現させた。やはりユニコーンは凄いなと思いながら見つめていると、僕の胸から大きな光のようなモノがあふれ出してくる。
 これはもしや……僕の魂だろうか!?

『アビリティとは……才能や技量という意味があるが、これは要するにお前の持つ魂自身に刻まれた記憶のようなモノだ』
「魂の……記憶?」
『まあ、お前自身が持って生まれた業というべきか……天命に直結しているような感じがする』
「な、なるほど!」
『その形が一般的ではない者ほど、鑑定が困難になり……能力がないと誤認されることも多い』


 シュヴァルツ号がそう言った直後、僕の胸からあふれ出した光は、見覚えのある形状へと変わっていった。
 光は徐々に剣の形へと変化していくと、僕はなんと一振りの剣を握っていたのである。
「……エッケザックス?」

 頭の中で思い浮かんだ名前を呟くと、シュヴァルツ号は剣を見ながら言った。
『小人が鍛えたという、凄く頑丈で強靭な剣のことか』
 その黒い瞳は、剣から僕へと動いてくる。
『神話のように、豪華な宝石が散りばめられているわけではないが……柄頭の宝玉をよく見て欲しい』
「……え?」

 言われた通りに刀身の柄頭……つまりグリップ部分の奥に目を向けると、そこにはNやSという文字と共に、簡単な周辺地図が記されている。
 試しに取り外せないか試してみると、それは剣から分離して方位磁石になることがわかった。
『宝剣を模ったモノを具現化できる人間は、過去に何人か見たことはあるが……いずれも能力なしと判定されている』
「判定が難しい……から?」
『正確に言えば、アビリティを調べる時期の問題なのかもしれん。一般的には15歳になったら教会や神殿で行うしきたりになっているが、まだ未熟な魂では宝剣を具現化することはできん』

 彼はそう言いながら、僕の手にある方位磁石に目を向けた。
『でもまあ、探索能力付きの剣を見たのは、吾もはじめてだがな』
「これがあれば……船旅も少しは快適なモノになるか?」
『ああ、もしかしたら本当に建前の方の宝物も見つけてしまうかもしれん……それによって、幸せになるか不幸なるかはわからんがな』

 まるで他人事のように言っているので、ついおかしくなって笑ってしまった。
「おいおい、仮にもお前の使命だろう?」
『金と女の方が、吾としては大事だからな』


 まあ何はともあれ、話もまとまったところだが、海賊になるには1つ大きな問題がある。
 そこをどう考えているのか、ミホノシュヴァルツ号に聞きたくなった。
「ところでさ……?」
『どうした?』
「海賊になるには船とかクルーとかが必要になると思うが……アテはあるのか?」

 質問をするとシュヴァルツ号は笑いながら答えた。
『簡単なことだ。海賊と言えば強奪……持っている者から奪い取ればいい』

 ほうほう、なかなかわかりやすい答えだが、僕は彼の言葉を思い返してみた。
 持っている者から奪え……ということは、ま・さ・か……
「ちょっ、それってまさか……!」
『海賊も様々な人々を襲っているだろう。ならば自分たちが襲われて命を落としても文句はあるまい』


 その言葉を聞いて、すげーことをいうお馬さんだと思った。
 海賊から船や財産を奪い取るなんて、そんなおもしろそうなこと……一生やる機会なんてないぞ。
「おもしろそうじゃないか! ところでどうやって海賊カモを探すんだ?」

 彼は目を細めると空を見た。
『そんなことは、渡り鳥たちがすぐに教えてくれるさ』
 

【エッケハルト】


 物語序盤であったとおり、Aランク冒険者パーティーをクビになった青年。
 今までは勤務態度もまじめで、これと言って問題も起こさなかったから置かれていたが、チームメイトからは一様にマジメ系クズだと思われていた。
 パーティーリーダーから見れば、序盤の人が足りない時期に入れてしまったものの、アビリティ無しのため使い物にならず、クビにしたくてもできない状況だった。

 田舎の孤児院出身でツテもないうえに、アビリティも今まではなかったため、冒険者になるまで、どこの事業主もエッケハルトを雇ってはくれなかった。

 ちなみに、この容姿からもわかるように、男女や女男は禁句。
 まあ殴ったりはしないんだけどね……
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