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35.レナの城

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 間もなく一角獣リッカシデンは、古城の目立つところに、王国の旗を掲げました。
 海賊の旗が降ろされたことが、そもそも凄いことですが、我が国がこの島を領土化したのは、建国以来はじめてのことです。


「聞こえているかいレナ?」
 話しかけて来たので、もちろん応答します。
「ええ、どうやら国盗りが上手く行ったようですね」
「この城に関して、王はなにか言ってるかい?」

 念のために前もって確認していますが、国王の意見は変わっていませんでした。
 いいえ、正確には、海を隔てているので、自分の手では管理できないと考えているようでした。リッカシデンなら、背中の翼で自由に行き来できるので、彼に任せるのが一番かもしれません。

「最初に口約束した通り、好きにしていいみたいだよ」
「わかった。じゃあレナが城主ということで……」
 そう言われると、何だか嬉しくなりましたが、実際に頑張ったのはリッカシデンです。ここは、皇太子妃の名において彼を城主に任命すべきなのではないかと思いました。

「ありがとうございます。では……皇太子妃の名において、リッカシデン……貴方を城主に任命します!」
「わかった……小生なりに頑張ってみるよ」


 リッカシデンはそう言うと、私の配下の準騎士ルビーを見ました。
「ルビー隊には、この古城の修繕と北側の広場の開発をお願いしたいな」
「わかりました。先に古城の修繕に取り掛かりますが……北側の広場をどのように活用されるのですか?」
「そこには漁港を作って、難民や家を継げない次男や三男坊を受け入れようと思うんだ」

 その話を聞いて、とても現実的だと思いました。
 ここを拠点にするには、様々な食料が必要になります。畑を作るのも手ですが、目の前に海があるのだから、これを使わない手はありません。

 通信石の向こう側で頷いていると、傭兵の1人がリッカシデンの前に来ました。
 よく見ると、彼は10人以上の村娘たちを連れています。
「一角獣殿、地下牢を調べていたら……彼女たちが監禁されてましたよ」
「なるほど。ちょうどいいね……帰宅を希望するのか、ここに残って暮らすのかを聞いてみようかな」



 リッカシデンの話を聞いて、うんうんと頷いていると国王がやってきました。
 彼にリッカシデンのプランについて話すと、国王も満足そうに笑いながら言います。
「そうかそうか……その様子なら、人魚たちとも交易をしてサンゴや真珠なども輸入して欲しいものだ。漁村から港町に成長できるように、都市計画はしっかりとプランしておくように伝えてくれ」
「は、はい!」
「あと、必要なら建設作業の得意な重臣や部隊も送ろう。リッカシデンを城主として、このままレナが統治をしてくれ」
「わかりました」

 国王の指示をシデン号に伝えようとしたら、国王は立ち止まって言います。
「ああ、あと……1つ言い忘れた」
「なんでしょう?」
「その古城……クイーンレナ城と名前を変更しておくように」

 その言葉を聞いて、私は驚きの声を上げていました。
 さすがにそれは恥ずかしいので辞退しようとしていたら、通信石の中から声が聞こえてきます。
「リッカシデン、確かに承ったよ! みんな……わかってね。今日からここはレナ城だ!」
「賛成です!」
「はい!」
「承知しました!」


 ちょうど同じころ、ライアン皇太子も東側の小国たちを従えることに成功し、我が国の勢力は西の大国ガーディアス帝国に匹敵するほど大きくなりました。
 以降は、我が国が危機に瀕することもなく、私は74歳になるまで王妃として、夫や子供や孫たちを支え、その生涯を閉じます。


 そして臨終のあとに、目を開けると……そこは私の自室でした。
「…………」
「…………」

 その姿を見ると、まだ若かった時の私……23歳の私が目の前にいます。
 それだけでなく、散らかった部屋や、何気ない日常も広がっていました。
「今までのは……夢?」


 そうかもしれません。今までのは私がニート生活を続ける中で見た、長い夢だったのかもしれません。
 だけど、ひとつだけ……大きく違っているモノがありました。

「……一国の王妃ともあろう者が、こんなところでグウタラしている訳にはいかないよね」
 私は鏡に映った自分を見ると、しっかりとその姿を見据えます。
 そうすると……そこには王女だった頃の自分と同じ眼差しをした少女が現れました。

「私だって……役に立てることはあるんだ! まずは……外に出る」
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