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33.人魚たちとの密約
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それから3日後。
ゴルティーナ島。人魚の拠点。
「長、アーヴィック王家から、使者がお見えです」
「大陸の大きな国の一つですね。海賊同様にこの島を支配するつもりでしょう。すぐにお帰り頂いて」
「それが……相手は一角獣なのです。神の使いを追い返してしまっていいのでしょうか?」
使者は一角獣という話を聞くと、その人魚の長もペンを止めて部下の方を見ました。
「そ、それは……無下に扱うわけにもいかないわね。わかったわ……お通しして」
御目通りの許された一角獣リッカシデン号は、いつもの茶色い毛並みではなく、白毛に近い灰色の姿をしていました。どうやら彼は、自在に自分の毛色を変えられる特殊能力……つまりアビリティを持っているようです。
「人魚のリーダー。今日は忙しいなか会ってくれてありがとう」
「一角獣殿が、このようなむさ苦しいところに、何用ですか?」
「質問があるんだけど、この島にたくさんの海賊たちが巣くっているけど、島から追い出す予定ある?」
その話を聞いた人魚の長は答えました。
「追い出したいのはヤマヤマですが、連中は戦慣れをしていて容易ではありません」
「じゃあ、連中を追い出したら、海賊が支配していた地域は小生ことリッカシデンの好きにして構わないかい?」
リッカシデン号が提案すると、部下の人魚は難色を示しました。
「そ、それは……元々、この島は我らの……」
「いいですよ」
部下は驚いて人魚の長を見ました。
「お、長!?」
「じゃあ、口約束だけだと、後で水掛け論になると困るから……書状で約束を交わしてもいいかい」
その言葉を聞いて、さすがの長も少し難色を示しました。さすがに書状を用いてアーヴィランドと契約するのは、抵抗があったようです。
「そ……それは……」
「ああ、あと……国王陛下からプレゼントがあるんだった」
リッカシデンは、ここで持ってきた250グラムの金塊を出しました。
実は人魚族は度重なる海賊との戦いで武器を破損したり、捕まった人魚の身代金の支払いがかさんで、経済的に困窮していたのです。
その情報を掴んでいたからこそ、リッカシデンは金塊をカードとして出したのでしょう。
シデン号が差し出した純度90パーセント以上と思われる金塊を見て、長だけでなく周囲の人魚たちも生唾を呑みました。
「これは、個人的な贈り物だから、書状を交わしたりしなくていいって仰ってしたよ。人魚族の未来のために好きに使って」
「わ、わかりました……書状を交わしましょう」
こうしてリッカシデン号は、人魚の長から一筆入れてもらい、島の東側の支配権とお互いの不可侵条約を締結しました。後で内容を確認すると、不可侵条約というより準同盟関係と言った方が近いかもしれません。
そして使者として向かってから6日後。
リッカシデン号は御城へと帰還しましたが、その時にはメアリーたちは冒険者や傭兵たちをおよそ140名ほど集めていました。
私はリッカシデン号が天馬の翼を畳むと、軽くブラッシングしながら、背中につけている【通信用のマナ・ストーン】に霊力を送りました。
これでまた、数日はリアルタイムでリッカシデン号の見聞きしたモノがわかります。
「戦士たちも無事に集まっているようだね」
「人魚族との約束はいかがでしたか?」
「無事におわったよ」
リッカシデン号の首にかかっている筒を確認すると、中には人魚の長が書いた契約書が出てきました。
ライアン皇太子は、しっかりと頷くと言います。
「よし、これはしっかりと王国側で保管させてもらおう」
「じゃあ小生は、船の調達が進んでいるかを確認してくるね」
その話を聞いたメアリーも頷きました。
「わかりました。私もすぐに戦士たちを率いて、港町に向かいます」
リッカシデン号は、一息つく間もなく南に向けて飛び立つと、その日のうちに港町へと降り立ちました。
さすがに陸路を使うのに比べて、空からなら直線的に迎えるので到着が早いです。
「どうだい、ルビー?」
「船なら予定通り、50ほど調達を完了しています。後は船を操れる戦士の登用です」
「わかった。それなら小生も手伝うよ」
シデン号の協力の甲斐あって、メアリーたちが戦士たちを率いて港町に着いた頃には、100名ほどの船乗り兼戦士たちを雇っており、ルビー隊を含めて250人の戦士たちが集まりました。
「じゃあみんな、海賊から僕たちの島を取り返すよ!」
「ああ……と、言いたいところですが、シデン号……」
「なんだい?」
シデン号が聞き返すと、船乗りたちは空を見ながら心配そうに言いました。
「あいにくですが、今夜から明日の朝まで嵐です……討伐はその後の方が……」
その話を聞いたシデン号は笑いました。
「何を言っているんだい。海賊たちが絶対に来ない……と思っているタイミングで上陸するからこそ、相手側の裏をかけるんだよ」
怯える船乗りたちなど気にする様子もなく、シデン号は言いました。
「アーヴィック国王に認められし一角獣の名において命ずる……出撃せよ!」
「ええええええええ!?」
こうして、シデン号の海賊討伐作戦が始まりました。
ゴルティーナ島。人魚の拠点。
「長、アーヴィック王家から、使者がお見えです」
「大陸の大きな国の一つですね。海賊同様にこの島を支配するつもりでしょう。すぐにお帰り頂いて」
「それが……相手は一角獣なのです。神の使いを追い返してしまっていいのでしょうか?」
使者は一角獣という話を聞くと、その人魚の長もペンを止めて部下の方を見ました。
「そ、それは……無下に扱うわけにもいかないわね。わかったわ……お通しして」
御目通りの許された一角獣リッカシデン号は、いつもの茶色い毛並みではなく、白毛に近い灰色の姿をしていました。どうやら彼は、自在に自分の毛色を変えられる特殊能力……つまりアビリティを持っているようです。
「人魚のリーダー。今日は忙しいなか会ってくれてありがとう」
「一角獣殿が、このようなむさ苦しいところに、何用ですか?」
「質問があるんだけど、この島にたくさんの海賊たちが巣くっているけど、島から追い出す予定ある?」
その話を聞いた人魚の長は答えました。
「追い出したいのはヤマヤマですが、連中は戦慣れをしていて容易ではありません」
「じゃあ、連中を追い出したら、海賊が支配していた地域は小生ことリッカシデンの好きにして構わないかい?」
リッカシデン号が提案すると、部下の人魚は難色を示しました。
「そ、それは……元々、この島は我らの……」
「いいですよ」
部下は驚いて人魚の長を見ました。
「お、長!?」
「じゃあ、口約束だけだと、後で水掛け論になると困るから……書状で約束を交わしてもいいかい」
その言葉を聞いて、さすがの長も少し難色を示しました。さすがに書状を用いてアーヴィランドと契約するのは、抵抗があったようです。
「そ……それは……」
「ああ、あと……国王陛下からプレゼントがあるんだった」
リッカシデンは、ここで持ってきた250グラムの金塊を出しました。
実は人魚族は度重なる海賊との戦いで武器を破損したり、捕まった人魚の身代金の支払いがかさんで、経済的に困窮していたのです。
その情報を掴んでいたからこそ、リッカシデンは金塊をカードとして出したのでしょう。
シデン号が差し出した純度90パーセント以上と思われる金塊を見て、長だけでなく周囲の人魚たちも生唾を呑みました。
「これは、個人的な贈り物だから、書状を交わしたりしなくていいって仰ってしたよ。人魚族の未来のために好きに使って」
「わ、わかりました……書状を交わしましょう」
こうしてリッカシデン号は、人魚の長から一筆入れてもらい、島の東側の支配権とお互いの不可侵条約を締結しました。後で内容を確認すると、不可侵条約というより準同盟関係と言った方が近いかもしれません。
そして使者として向かってから6日後。
リッカシデン号は御城へと帰還しましたが、その時にはメアリーたちは冒険者や傭兵たちをおよそ140名ほど集めていました。
私はリッカシデン号が天馬の翼を畳むと、軽くブラッシングしながら、背中につけている【通信用のマナ・ストーン】に霊力を送りました。
これでまた、数日はリアルタイムでリッカシデン号の見聞きしたモノがわかります。
「戦士たちも無事に集まっているようだね」
「人魚族との約束はいかがでしたか?」
「無事におわったよ」
リッカシデン号の首にかかっている筒を確認すると、中には人魚の長が書いた契約書が出てきました。
ライアン皇太子は、しっかりと頷くと言います。
「よし、これはしっかりと王国側で保管させてもらおう」
「じゃあ小生は、船の調達が進んでいるかを確認してくるね」
その話を聞いたメアリーも頷きました。
「わかりました。私もすぐに戦士たちを率いて、港町に向かいます」
リッカシデン号は、一息つく間もなく南に向けて飛び立つと、その日のうちに港町へと降り立ちました。
さすがに陸路を使うのに比べて、空からなら直線的に迎えるので到着が早いです。
「どうだい、ルビー?」
「船なら予定通り、50ほど調達を完了しています。後は船を操れる戦士の登用です」
「わかった。それなら小生も手伝うよ」
シデン号の協力の甲斐あって、メアリーたちが戦士たちを率いて港町に着いた頃には、100名ほどの船乗り兼戦士たちを雇っており、ルビー隊を含めて250人の戦士たちが集まりました。
「じゃあみんな、海賊から僕たちの島を取り返すよ!」
「ああ……と、言いたいところですが、シデン号……」
「なんだい?」
シデン号が聞き返すと、船乗りたちは空を見ながら心配そうに言いました。
「あいにくですが、今夜から明日の朝まで嵐です……討伐はその後の方が……」
その話を聞いたシデン号は笑いました。
「何を言っているんだい。海賊たちが絶対に来ない……と思っているタイミングで上陸するからこそ、相手側の裏をかけるんだよ」
怯える船乗りたちなど気にする様子もなく、シデン号は言いました。
「アーヴィック国王に認められし一角獣の名において命ずる……出撃せよ!」
「ええええええええ!?」
こうして、シデン号の海賊討伐作戦が始まりました。
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