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27.勇者との直接対決
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森の中が夕闇に包まれたとき、ジルーは生唾を呑んだ。
彼女はまず、捨て駒としてアタックドッグ3匹を勇者マックスチームにけしかけると、その攻撃は読まれており、次々とエルフの魔法使いと、勇者に撃退された。
だが、ジルーには次の手がある。
彼女の次の一手は、ミニフェンリルだ。
攻撃指示を受けたミニフェンリルは、物陰から強襲。
マックス隊の戦士は、絶妙なタイミングでフォローに入り、けが人やエルフの魔法使いを守った。
3番目にジルーは、コボルドの伏兵4人を一斉に投入。
さすがの勇者も、この連続攻撃への対処には手間取っており、陣形に大きな隙ができた。
僕は満を持して勇者一行へと突進し、側面を取ることができたマックス隊の戦士に蹴りを見舞った。
「ごあふ……!」
マックス隊の戦士は、木の幹に突っ込んでいく。
僕は間髪を入れずに、角を光らせて炎魔法ファイアショットを放った。撃ち出した火の球の数は6発。
それらはホーミングしながら、木々の隙間を縫うように進んでいき、次々と戦士や格闘家などに当たっていく。
更に攻撃を加えようとしたら、勇者が突き攻撃を見舞ってきた。なんて鋭い攻撃だろう!
僕は完全に避けきれずに、大地の防御魔法がカウンター発動した。
「くっ……コイツ!」
勇者の突き攻撃は、しっかりと僕の喉元を捉えていた。
もし、大地魔法を習得していなければ、致命傷を受けていただろう。
選択を少し間違えていれば死……という事実を察すると、全身の毛が逆立ち、更に冷や汗も噴き出してくる。
僕もまた、勇者マックスを睨むと、殺気が湧き出してきた。その感情に任せるままに炎魔法を放つ。
至近距離から、高火力のファイアショットを放つと、勇者はとっさに盾でガードしたが、そのガードを突き破ったうえに、身体そのものを吹き飛ばして木に叩きつけ、更に鎧の一部も熱で焦がした。
どうやら、勇者は今の一撃で腕を捻ったらしく、さらに熱でドロドロになった盾の熱さに苦しみながらも、まだこちらを睨んてくる。
その勇者の精神力に、僕は寒気を感じた。
背中にもダメージがあったらしく、勇者は苦しそうに吐血していたが、それでも闘志は喪っていない。一体何が勇者マックスをそうさせるのかはわからない。
だけど……
「…………」
僕は何とか言葉を呑み込むと、勇者マックスを睨みつけた。
そして、更に炎魔法で勇者に追い打ちをかける。
敵が体勢を崩しているうちに徹底的に叩いておかないと、やられるのは僕たちの方だ。
「ファイアショット!」
次々と炎魔法を繰り出すと、先ほどまで倒れていた戦士は勇者を突き飛ばして盾となり、無数の炎魔法を受けて倒れ込んだ。
だけど、この程度では攻撃はやめない!
更に突進して勇者を攻めようとすると、誰かが僕の後ろ脚にしがみついて精一杯の妨害をしてきた。
「い、今のうちに……逃げてぇ!」
何としがみついていたのは、勇者パーティーの弓使いの女性だった。
勇者は自分をかばって攻撃を受けた戦士を一瞥すると、悔しそうな顔をしたまま仲間たちに号令を出す。
「撤収だ!」
彼の言葉を聞いた格闘家は、とても不満そうな表情をしたが、自分たちが劣勢な状況を理解したらしく、勇者やエルフの魔導師と共に撤収していく。
すると、道案内として来ていたブレーズ隊の2人も、ケガをした魔法使いを置いて逃げて行った。
「深追いはするな。逃げ遅れた連中を拘束してくれ」
コボルドたちは、僕の脚に縋りついているハンターの女性を取り押さえると、後ろ手縛りにして僕の前に引っ立てた。
完全に彼女は無力化されたので、僕は火傷を負った戦士を眺める。
「こ、殺せ……もう、俺は……助からん……」
僕は戦士の様子を眺めると、近くにいたコボルドの戦士に命令を出す。
「鎧などを外してくれ」
「ははっ!」
戦士の身体を診ると、確かに酷いケガを負っているのだが、元々が体力のある戦士なので治りそうに思えた。
僕は角を光らせ、戦士の身体を少しずつケアしていく。
「無駄だ……そんなことをする霊力が……あるんなら、隣の魔法使いの若造を……」
「無理に喋るな。身体に障るぞ」
「…………」
何といえばいいのだろう。
僕自身が炎系魔法の使い手なので、火傷でダメージを負ってしまった皮膚の蘇生の仕方が、何となくだがわかる。
およそ20分くらい治癒魔法を使い続けると、戦士の身体の火傷は完治とは言えないまでも、それなりに回復していた。
「お、驚いたな……あの状況から、ここまでリカバリーしてしまうなんて……」
戦士が自分の身体を眺めながら言うと、僕は小さく息を吐きながら捕虜3人を眺めた。
「さて、ミニオスカー……援護に感謝する」
「この前は、僕たちがお世話になったじゃありませんか」
僕は3人の捕虜に目を向けると、魔王さまらしい笑みを浮かべた。
「オスカーのヤツに伝えてくれ。捕虜を誰でも1人……好きな人物を譲るとね」
その言葉を聞いて、捕虜3人はハッとした顔をしていた。
僕がわざわざ侵略者を治療したのは、あくまで僕自身のために行ったことである。普通は援軍へのお礼はスペシャルポイントで支払うことが多いが……こういう謝礼の出し方も魔王らしいというものだ。
「わかりました。父を呼んできます!」
「わざわざ来てくれるのか……ありがたいな」
【フリーダのチャンスコネクターのイメージ】
彼女はまず、捨て駒としてアタックドッグ3匹を勇者マックスチームにけしかけると、その攻撃は読まれており、次々とエルフの魔法使いと、勇者に撃退された。
だが、ジルーには次の手がある。
彼女の次の一手は、ミニフェンリルだ。
攻撃指示を受けたミニフェンリルは、物陰から強襲。
マックス隊の戦士は、絶妙なタイミングでフォローに入り、けが人やエルフの魔法使いを守った。
3番目にジルーは、コボルドの伏兵4人を一斉に投入。
さすがの勇者も、この連続攻撃への対処には手間取っており、陣形に大きな隙ができた。
僕は満を持して勇者一行へと突進し、側面を取ることができたマックス隊の戦士に蹴りを見舞った。
「ごあふ……!」
マックス隊の戦士は、木の幹に突っ込んでいく。
僕は間髪を入れずに、角を光らせて炎魔法ファイアショットを放った。撃ち出した火の球の数は6発。
それらはホーミングしながら、木々の隙間を縫うように進んでいき、次々と戦士や格闘家などに当たっていく。
更に攻撃を加えようとしたら、勇者が突き攻撃を見舞ってきた。なんて鋭い攻撃だろう!
僕は完全に避けきれずに、大地の防御魔法がカウンター発動した。
「くっ……コイツ!」
勇者の突き攻撃は、しっかりと僕の喉元を捉えていた。
もし、大地魔法を習得していなければ、致命傷を受けていただろう。
選択を少し間違えていれば死……という事実を察すると、全身の毛が逆立ち、更に冷や汗も噴き出してくる。
僕もまた、勇者マックスを睨むと、殺気が湧き出してきた。その感情に任せるままに炎魔法を放つ。
至近距離から、高火力のファイアショットを放つと、勇者はとっさに盾でガードしたが、そのガードを突き破ったうえに、身体そのものを吹き飛ばして木に叩きつけ、更に鎧の一部も熱で焦がした。
どうやら、勇者は今の一撃で腕を捻ったらしく、さらに熱でドロドロになった盾の熱さに苦しみながらも、まだこちらを睨んてくる。
その勇者の精神力に、僕は寒気を感じた。
背中にもダメージがあったらしく、勇者は苦しそうに吐血していたが、それでも闘志は喪っていない。一体何が勇者マックスをそうさせるのかはわからない。
だけど……
「…………」
僕は何とか言葉を呑み込むと、勇者マックスを睨みつけた。
そして、更に炎魔法で勇者に追い打ちをかける。
敵が体勢を崩しているうちに徹底的に叩いておかないと、やられるのは僕たちの方だ。
「ファイアショット!」
次々と炎魔法を繰り出すと、先ほどまで倒れていた戦士は勇者を突き飛ばして盾となり、無数の炎魔法を受けて倒れ込んだ。
だけど、この程度では攻撃はやめない!
更に突進して勇者を攻めようとすると、誰かが僕の後ろ脚にしがみついて精一杯の妨害をしてきた。
「い、今のうちに……逃げてぇ!」
何としがみついていたのは、勇者パーティーの弓使いの女性だった。
勇者は自分をかばって攻撃を受けた戦士を一瞥すると、悔しそうな顔をしたまま仲間たちに号令を出す。
「撤収だ!」
彼の言葉を聞いた格闘家は、とても不満そうな表情をしたが、自分たちが劣勢な状況を理解したらしく、勇者やエルフの魔導師と共に撤収していく。
すると、道案内として来ていたブレーズ隊の2人も、ケガをした魔法使いを置いて逃げて行った。
「深追いはするな。逃げ遅れた連中を拘束してくれ」
コボルドたちは、僕の脚に縋りついているハンターの女性を取り押さえると、後ろ手縛りにして僕の前に引っ立てた。
完全に彼女は無力化されたので、僕は火傷を負った戦士を眺める。
「こ、殺せ……もう、俺は……助からん……」
僕は戦士の様子を眺めると、近くにいたコボルドの戦士に命令を出す。
「鎧などを外してくれ」
「ははっ!」
戦士の身体を診ると、確かに酷いケガを負っているのだが、元々が体力のある戦士なので治りそうに思えた。
僕は角を光らせ、戦士の身体を少しずつケアしていく。
「無駄だ……そんなことをする霊力が……あるんなら、隣の魔法使いの若造を……」
「無理に喋るな。身体に障るぞ」
「…………」
何といえばいいのだろう。
僕自身が炎系魔法の使い手なので、火傷でダメージを負ってしまった皮膚の蘇生の仕方が、何となくだがわかる。
およそ20分くらい治癒魔法を使い続けると、戦士の身体の火傷は完治とは言えないまでも、それなりに回復していた。
「お、驚いたな……あの状況から、ここまでリカバリーしてしまうなんて……」
戦士が自分の身体を眺めながら言うと、僕は小さく息を吐きながら捕虜3人を眺めた。
「さて、ミニオスカー……援護に感謝する」
「この前は、僕たちがお世話になったじゃありませんか」
僕は3人の捕虜に目を向けると、魔王さまらしい笑みを浮かべた。
「オスカーのヤツに伝えてくれ。捕虜を誰でも1人……好きな人物を譲るとね」
その言葉を聞いて、捕虜3人はハッとした顔をしていた。
僕がわざわざ侵略者を治療したのは、あくまで僕自身のために行ったことである。普通は援軍へのお礼はスペシャルポイントで支払うことが多いが……こういう謝礼の出し方も魔王らしいというものだ。
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