上 下
24 / 36

24.勇者マックスの戦略

しおりを挟む
 勇者が勢いに乗って襲ってくることもあり得るので、僕は更なる強化を考えていた。
 やはり、相手が強敵となると、最後にモノを言うのは接近戦だろう。

 僕は護身術を獲得すると身体中の筋肉が強化され、まるで騎士が愛用しているウマのような体格になった。
 フリーダも微笑みながら言った。
「凄く逞しくなられましたね」
「コイツは荷物運びに適任……って思われても困るけどね」

【SP164→64】

 1時間ほど軽い運動をして身体をほぐしていると、カテリーナがやってきた。
「魔王さま……勇者マックス一行ですが、先ほど入り込んだダンジョンを攻略したようです」
「どの程度の被害を受けていた?」
「お供の戦士と格闘家が軽いケガをした程度です。一方、攻撃を受けた追いはぎ魔王たちは全滅」
「なるほど……わかった、ミニオスカーが来たら教えてあげて欲しい」
「承知しました」

 さすがの勇者たちも、追いはぎ魔王の攻略には手を焼いたらしく、他のダンジョンゲートに手を出すことはなかった。
 だが、ダンジョンゲートが多すぎると思ったらしく、翌日は闇雲にダンジョンゲートの攻略はせずに、情報収集に徹しているようだ。
「魔王さま……」
「どうしたんだいカテリーナ?」
「どうやら勇者一行は、ジルー殿の古巣の冒険者チームと接触……我らの居場所が割れたようです」
「なるほど……いよいよ、ということか……」

 僕は自分のスペシャルポイントを確認した。
 残りは144だ。勇者一行の動向次第では、もう少し特殊能力を身に付けられそうだが……果たして、勇者マックスは、それを許してくれるだろうか。
「どうだい、すぐに攻めて来そうかい?」
「いいえ……どうやら勇者一行も、我々のことを一筋縄にはいかない相手と思っているようです」

 カテリーナのそばの木にハトが止まると、すぐに喋るように小さく鳴き声をあげた。
「……うん、わかった」
 彼女は再びこちらを見た。
「いま連絡があり、勇者一行はミスリル製の縄のようなモノを購入したそうです」

 なるほど。それは手綱とみて間違いないだろう。
 僕もまた頷いて答える。
「その様子だと、こっちに向かってくる可能性も高いね。ジルー、フリーダ」
「なに?」
「はい!」

 2人が来ると、僕はすぐに命令を出した。
「モンスターたちに迎撃命令を出してくれ。ミニオスカー以外の生き物が来たら、迷わず攻撃すること」
「「わかりました!」」
「その代わり、君たち2人は勇者に攻撃は仕掛けなくていい。身の危険を感じたら最優先でここまで撤退すること」
「はい!」
「承知しました!」

 僕は次にカテリーナを見る。
「カテリーナ」
「はい!」
「君はここに残りつつ、勇者一行の動きを教えて欲しい。恐らく……ジルーの元仲間は攻撃には加わらないと思うけど、来たら容赦なく攻撃する」
 そう伝えると、カテリーナはしっかりと敬礼する。
「承知しました」

 命令を出し終えると、僕は鏡を見た。
 この残っているスペシャルポイント144は、いざとなった時のために取っておきたい。土壇場で強力な能力に目覚めるかもしれないし、僕らが負けそうなときにも取引材料として使えるかもしれない。


 少しすると、カテリーナが言った。
「魔王さま……勇者マックス一行が樹海の入り口まで来ました。道案内として元ジルーの仲間たちも……」
「なるほど。その様子だと戦力は最大で8人だね」
「その通りです」

 僕は頷くと、改めて戦力を確認した。


 チームマックス
 チームリーダー:勇者マックス
 ブラックユニコーン軍
 チームリーダー:一角獣チャンスコネクター

 マックス隊
 勇者1、戦士1、格闘家1、エルフ魔導師1、弓使い1
 ブレーズ隊
 重戦士1、戦士1、魔法使い1


 ブラックユニコーン軍
 一角獣1、エルフ魔導師1、ウェアウルフ1、有翼人1
 ミニフェンリル1、コボルド8、アタックドッグ18
 トレント1、スライム2、ウッドパペット18


 戦力を確認していると、カテリーナのカラスが飛んできた。
 カラスの話を聞いていたカテリーナは、やがてこちらを見る。
「お喜び下さい魔王さま……」
「どうだった?」
「オスカー殿は、援軍としてミニオスカーを派遣して下さいました。それも2頭!」

 その言葉を聞いて、僕も嬉しく思った。
 ミニオスカーは魔王オスカーの分身だ。その実力は少なく見積もってもミニフェンリルと同等。オスカーの武術関係のスキルの習得次第では、それ以上の活躍が期待できる!

「いいニュースだ! すぐに神社内に配置しよう!」

 間もなく、ブラックユニコーン軍と勇者マックス隊の戦いがはじまろうとしていた。


【勇者マックス】
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

処理中です...