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21.冒険者街の噂

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 翌日。
 この日も僕は、自分のスペシャルポイントを確認していた。


【SP244/440】
―――――――――――――――――――
100P 魔将軍の求人票作成
100P 分身召喚(最大2頭まで)
100P 狛犬の台生成(分身が必要)
100P 手水屋の生成
 50P エリアマスター除名チケット
  5P ゴブリン召喚
 10P 従者の首輪
 10P 宝箱設置
 50P 鍵付き宝箱設置
 30P 大銀貨5枚生成
 50P 小金貨1枚生成

―――――――――――――――――――

 僕が少し唸りながら考えていると、フリーダが歩いてきた。
「どうなさいましたか?」
「そろそろ、手水屋辺りを生成しようかと思ってね」

 そう提案すると、フリーダも頷いた。
「賛成です。スペシャルポイントも充分にあるので、きっと役立つと思います」
「じゃあ、やってみようかな?」

【SP244→144】
 手水屋を生成してみると、鳥居と本殿の間くらいに現れた。
 さすがに本殿がそれほど大きくないので、小さな神社についているようなサイズだったが、小さいが屋根も付いているうえに、水もきちんと流れていて、柄杓も3つほど置いてある。
「…………」
 手水屋があると、本当にザ・神社という雰囲気が出るものだ。

 隣にいるフリーダも、満足そうに微笑んでいた。
「この雰囲気……何だか、我ら森エルフの神殿に似ています」
「そういえば、エルフって精霊を信仰しているよね」
「はい」
「そう考えると……僕たちと似ているところがあるかもしれない」

 彼女と話していると、どうして異世界転生や転移をした人間が、エルフと恋に落ちることがあるのかわかる気がした。
 元々エルフと日本人は、自然や神様に対しての価値観や考え方が似ているのだ。
「なるほど……水の精霊の援助を受けて、水が湧き水のように出てくる設備ですね……」

 フリーダは、手水屋の水をじっと眺めながら呟く。
「精霊が直接用意して下さった水だから、この水は飲める……素晴らしいです!」
 彼女は興味深そうに僕を見てきた。
「ところで、これはどのような設備なのでしょうか?」
「ああ、これはね……」


 それから5分ほど、僕はフリーダと手水屋のことについて話をしていると、有翼人のカテリーナがやってきた。
 彼女もまた、手水屋に視線をチラチラと向けながら、こちらに話をしてくる。
「あの……興味深い話を耳にしたのですが、お時間はよろしいでしょうか?」

 僕とフリーダはすぐにカテリーナを見た。
「あ、ああ……大丈夫だよ。ちょうど終わったところだし」
 フリーダも頷いたので、カテリーナは安心したようだ。
「実は、冒険者街の偵察を行っていたのですが……気になる噂を耳にしまして……」
「噂? どんな話だい?」
「何でも、勇者称号を持つ冒険者が……近々、冒険者街に来て魔王討伐をすると……」
 勇者称号と聞いたとき、手水屋の水面に映った僕の表情は、険しいモノになっていった。


 勇者と魔王は対象的な存在なので、このツーノッパではよく比較される。
 例えば勇者は、ツーノッパ王国が認定している資格だ。王族や貴族だったとしても、合格率が5000人に1人という超難関試験をパスしないと名乗れない。
 一方魔王は、その気になれば子供でも名乗ることができる。別に誰かが管理しているワケではないので、名乗ったところで教会関係者に注意されるくらいなのだ。

 また勇者は義に重んじ、騎士のように常に弱い者の味方でなければならない。見た目も大事なので、身だしなみから気にする勇者も多い。
 一方で魔王は、残虐非道な振る舞いをしようが、自分なりの正義を貫こうが自由だ。100人いれば100通りの考えを持つのが魔王なので、要は実力があればいい。

「なるほど……もし噂通りに勇者が来れば、いろいろと大変だね」
「はい。どんな勇者なのかは、わかりませんので……調査を続けます」
「わかった。最優先でお願いしたい!」
 そう伝えると、カテリーナは口笛を吹いた。
 すると彼女の周りには、水鳥から小鳥まで様々な野鳥が集まってくる。
「調査をお願い!」

 そう伝えて飛び立たせると、野鳥たちはバラバラの方向に飛び立った。
 彼女たちの手腕に期待したい。


【主人公たちのいる樹海】
 主人公たちの住む森は、西側に冒険者街があり、東側にモンスターの町がある。
 そのため、実力のある魔王ほどモンスターの町に近い位置にダンジョンを作り、新参者の魔王ほど冒険者街の近くにダンジョンを作るようになる。

 主人公チャンスコネクターは新参者の魔王のため、序盤はよく冒険者や下剋上を狙うコボルドやゴブリンに狙われたが、最近は新たな新参者が増え始めたため、あまり襲撃を受けなくなったという経緯もある。
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