20 / 36
20.有翼人女性の訪問
しおりを挟む
治療をすると、その冒険者は自分の手を動かしていた。
「本当に痺れがなくなった……こりゃすげえ!」
彼はそう言いながら、僕に謝礼の霊力の支払いをする。
「確かに後金も貰ったよ」
「じゃ、ありがとよ!」
そういうと冒険者たちは立ち去った。
治した後で後金を払わずに戦闘……ということも想定していたのだが、拍子抜けするくらいに商談もまとまったモノだと思う。
神社へと戻ると、フリーダも安心した様子で姿を現した。
「お疲れ様です」
「もしもの時のために、スタンバイしてくれていたんだね。ありがとう2人とも!」
そう言うとジルーもまた、物陰から姿を現した。
「冒険者って、荒くれ者や元犯罪者も多いからね。どうしても警戒しちゃうよ」
そんな話をしていると、おや……何か野鳥が、神社の屋根に止まったままこちらを眺めている。
前にも鳥が姿を現したことならあるが、今回のは癖が少ない。恐らく、魔王クラスの人間でも監視されていることにすら気付かないだろう。
「…………」
僕が視線を向けると、その鳥は気まずそうに少し視線をずらした。
「…………」
こちらとしても言いたいことくらいはあるが、ここは無言で見つめるのが一番効くだろう。
「チチチチチチ……」
その鳥はバツが悪そうな雰囲気をしたまま、身体の毛をいじると飛び去っていった。
「偵察……かな?」
ジルーが言うと、フリーダも頷いた。
「どこかの魔王の側近か、冒険者パーティーの探索系能力者……でしょうかね?」
どちらもあり得る話だ。
僕たちはしばらくの間、ゆっくりとしていると誰かが僕のダンジョンに入ってきた。
数は1人。匂いから……女性の有翼人か。
この様子だと、どこかの勢力の使者と考えるのが妥当なところだろうか。
間もなくジルーやフリーダも、女性の有翼人が入ってきたことに気が付いたようだ。
「ねえ、魔王さま……有翼人の女の人が入ってきたよ」
「先ほどの鳥の飼い主でしょうか?」
「恐らく……そうだろうね。どんな用事なんだろうね?」
一番現実的なケースは、どこか強力な魔王軍が脅迫として使者を送ってくる。
次にあり得そうなのは、そこそこの規模の勢力が、僕の治癒能力かフリーダのハイエルフの力を目当てに同盟を持ちかけてくるケース。
3番目辺りにあり得るのは、ケガか病気で苦しむ人間の権力者か冒険者パーティーが、治療をして欲しいと使者を出した感じだろうか。
さて、どれだろう。
15分ほどで、有翼人の若い女性は鳥居の前までやってきた。髪の毛は短くしているが、艶があって美しい。
「…………」
彼女は神社を興味深そうに眺めている。野鳥を用いて偵察しているのだろうが、使い魔を通して見える光景と、実際に自分の目で見る光景はけっこうと違うモノだ。
有翼人は、僕の前までやってくると敬礼した。
「お初にお目にかかります。私はカテリーナと言います」
「ようこそいらっしゃいました。今日はどういったご用件でしょうか?」
丁寧に答えを返すと、カテリーナは少し思い切った様子で言う。
「私を……臣下に加えては頂けませんか?」
有翼人カテリーナの言葉に、ジルーやフリーダは驚いていた。
ハッキリ言って、僕もええっ……と仰天しそうになっている。まさか、有翼人の女性で……これほど霊力のありそうな人が失業中だなんて信じられない話だ。
「ええと……本当に君、失業中なのかい?」
そう聞き返すと、カテリーナは恥ずかしそうに頷いた。
「はい。実は私……見聞を広めるために、ツーノッパ地域の各地を旅して回っていたのですが、そろそろ落ち着こうと思ったとき、仕官が難しくなっていることに気付かなくて……」
彼女の話を聞いていると、何となくだが事情を呑み込めたように感じた。
恐らく、カテリーナもまた何勢力も面接を受けたのだろうが、敵勢力と通じているのではないかと、採用担当者に勘繰られたのではないだろうか。
だけど彼女の匂いからは、他勢力のにおい……特に男の影のようなモノは感じない。
僕も頷きながら答える。
「なるほど。君の場合は情報収集の専門家として雇うことになるよ。エリアマスターになるには、しばらくかかると思うけど……我慢できるかい?」
その話を聞いたカテリーナは、「はい!」と即答した。
こちらの条件を呑んでくれたのだから、僕としても充分だ。
「よかった。歓迎するよ」
そう答えると、フリーダやジルーもカテリーナに話しかけていた。
こうやって見ていると、彼女たちは種族こそ違うが、仲の良い姉妹のように見えるから微笑ましい。
「えーと、エルフの貴女がジルーさん……ウェアウルフの貴女がフリーダさん」
「逆だよ逆! あたしがジルー!」
「わ、私がフリーダですよ!」
おや、少し……カテリーナには、マヌケなところがあるようだ。
【有翼人カテリーナ(寝ているジルーの眺める様子)】
「本当に痺れがなくなった……こりゃすげえ!」
彼はそう言いながら、僕に謝礼の霊力の支払いをする。
「確かに後金も貰ったよ」
「じゃ、ありがとよ!」
そういうと冒険者たちは立ち去った。
治した後で後金を払わずに戦闘……ということも想定していたのだが、拍子抜けするくらいに商談もまとまったモノだと思う。
神社へと戻ると、フリーダも安心した様子で姿を現した。
「お疲れ様です」
「もしもの時のために、スタンバイしてくれていたんだね。ありがとう2人とも!」
そう言うとジルーもまた、物陰から姿を現した。
「冒険者って、荒くれ者や元犯罪者も多いからね。どうしても警戒しちゃうよ」
そんな話をしていると、おや……何か野鳥が、神社の屋根に止まったままこちらを眺めている。
前にも鳥が姿を現したことならあるが、今回のは癖が少ない。恐らく、魔王クラスの人間でも監視されていることにすら気付かないだろう。
「…………」
僕が視線を向けると、その鳥は気まずそうに少し視線をずらした。
「…………」
こちらとしても言いたいことくらいはあるが、ここは無言で見つめるのが一番効くだろう。
「チチチチチチ……」
その鳥はバツが悪そうな雰囲気をしたまま、身体の毛をいじると飛び去っていった。
「偵察……かな?」
ジルーが言うと、フリーダも頷いた。
「どこかの魔王の側近か、冒険者パーティーの探索系能力者……でしょうかね?」
どちらもあり得る話だ。
僕たちはしばらくの間、ゆっくりとしていると誰かが僕のダンジョンに入ってきた。
数は1人。匂いから……女性の有翼人か。
この様子だと、どこかの勢力の使者と考えるのが妥当なところだろうか。
間もなくジルーやフリーダも、女性の有翼人が入ってきたことに気が付いたようだ。
「ねえ、魔王さま……有翼人の女の人が入ってきたよ」
「先ほどの鳥の飼い主でしょうか?」
「恐らく……そうだろうね。どんな用事なんだろうね?」
一番現実的なケースは、どこか強力な魔王軍が脅迫として使者を送ってくる。
次にあり得そうなのは、そこそこの規模の勢力が、僕の治癒能力かフリーダのハイエルフの力を目当てに同盟を持ちかけてくるケース。
3番目辺りにあり得るのは、ケガか病気で苦しむ人間の権力者か冒険者パーティーが、治療をして欲しいと使者を出した感じだろうか。
さて、どれだろう。
15分ほどで、有翼人の若い女性は鳥居の前までやってきた。髪の毛は短くしているが、艶があって美しい。
「…………」
彼女は神社を興味深そうに眺めている。野鳥を用いて偵察しているのだろうが、使い魔を通して見える光景と、実際に自分の目で見る光景はけっこうと違うモノだ。
有翼人は、僕の前までやってくると敬礼した。
「お初にお目にかかります。私はカテリーナと言います」
「ようこそいらっしゃいました。今日はどういったご用件でしょうか?」
丁寧に答えを返すと、カテリーナは少し思い切った様子で言う。
「私を……臣下に加えては頂けませんか?」
有翼人カテリーナの言葉に、ジルーやフリーダは驚いていた。
ハッキリ言って、僕もええっ……と仰天しそうになっている。まさか、有翼人の女性で……これほど霊力のありそうな人が失業中だなんて信じられない話だ。
「ええと……本当に君、失業中なのかい?」
そう聞き返すと、カテリーナは恥ずかしそうに頷いた。
「はい。実は私……見聞を広めるために、ツーノッパ地域の各地を旅して回っていたのですが、そろそろ落ち着こうと思ったとき、仕官が難しくなっていることに気付かなくて……」
彼女の話を聞いていると、何となくだが事情を呑み込めたように感じた。
恐らく、カテリーナもまた何勢力も面接を受けたのだろうが、敵勢力と通じているのではないかと、採用担当者に勘繰られたのではないだろうか。
だけど彼女の匂いからは、他勢力のにおい……特に男の影のようなモノは感じない。
僕も頷きながら答える。
「なるほど。君の場合は情報収集の専門家として雇うことになるよ。エリアマスターになるには、しばらくかかると思うけど……我慢できるかい?」
その話を聞いたカテリーナは、「はい!」と即答した。
こちらの条件を呑んでくれたのだから、僕としても充分だ。
「よかった。歓迎するよ」
そう答えると、フリーダやジルーもカテリーナに話しかけていた。
こうやって見ていると、彼女たちは種族こそ違うが、仲の良い姉妹のように見えるから微笑ましい。
「えーと、エルフの貴女がジルーさん……ウェアウルフの貴女がフリーダさん」
「逆だよ逆! あたしがジルー!」
「わ、私がフリーダですよ!」
おや、少し……カテリーナには、マヌケなところがあるようだ。
【有翼人カテリーナ(寝ているジルーの眺める様子)】
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる