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12.感謝状を渡す
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僕が角を光らせていると、フリーダは紙を一枚出してくれた。
角の先からは細い炎のような光が出て、紙の一部を焦がしていく。
それは、人間のときに僕が書いていた文字のように、左利きの特徴のある書き方になりながら、言葉が続いていき、やがて文章が完成した。
「ジルー。この度の戦い……凄かったよ! これ、良ければ目を通して欲しい」
ジルーは僕の感謝状を受け取ると、文章を読み進めていき……やがて嬉しそうに微笑んでくれた。
「ありがとうございます……一角獣から褒められるなんて……夢みたい!」
フリーダもにっこりと笑った。
「私も努力しないと、ジルーにナンバー2の座を奪われてしまいますね」
「どちらかというと、フリーダさまは魔王様の奥さんという感じで、あたしは家来……かなぁ?」
そう言われると、フリーダは顔を真っ赤にして答えた。
「もう……あまり、からかわないでください!」
その答えを聞いた僕やジルーは笑い、フリーダも恥しそうに笑っていた。
とりあえず、ジルーは疲れているだろうから明日の朝まではお休みだ。
僕は彼女を自分の後方に下げ、残りの時間の守りを担当する事にした。
こうやって準備万端で待機しているときというのは、意外とゴブリンやコボルドも攻めてこないものである。
まあ、コボルドに関しては、先ほどオスカーとジルーにまとめて倒されていたから、襲いに来ないのもわかる気がするが……
昼が過ぎると、僕には新たにSPが9ポイント追加された。
これで94ポイントになったわけだが、まだまだマックスの370ポイントには遠いものである。
「そう言えばさ、フリーダ」
「なんでしょう?」
「僕たちの住むダンジョンの近くに、オスカー以外の魔族の縄張りもあるのかな?」
そう質問すると、彼女は頷く。
「マナの歪み具合から、同業者はいるでしょうね」
同業者と聞いて、僕は喜ぶべきか厄介な存在と見るべきか判断に困っていた。
同業者がいるということは、折あらばこちらに攻めてきて、設備やダンジョンそのものを壊される恐れがあるし、仲間もヘッドハンティングされたり、力づくで奪われる恐れもある。
しかし同業者が近くにいれば、冒険者たちが襲ってきた場合に、僕以外の魔王とやり合って敵同士で戦力を削り合ってくれるだろう。
ジルーも不思議そうな表情をしながら、フリーダに質問した。
「ちなみに、よくゴブリンとかコボルドが来るけど……これって、同業者が送ってきているのかな?」
「そうですね……同業者がけしかけて、こちらの様子を確認しているパターンと、失業中の者たちが単独で勝負を挑んでくるパターンがあります」
「な、なるほど……」
ジルーは、身体を軽くほぐすと言った。
「私もゴブリンたちに負けないように、素振りでもしているね」
そう言いながら、彼女は短剣を鞘から抜くと、刃先が赤い光を放った。
「え……? これって……」
「どうやら、あるじさまから感謝状を与えられた効果が出たようです」
フリーダの話によると僕のような魔王が感謝状を出すと、一定確率で特殊能力を閃かせることができるようだ。
因みにジルーが目覚めた付与能力は【ヒートダガー】。
文字通り、短刀の刃先に炎を灯し、刃先を見えづらくして命中率を上昇。更に掠めただけでも炎の追加ダメージを与えるという、戦士なら誰しもが欲しがる能力らしい。
「ヒートダガーは強力ですが、自分の精神力を消耗しますから、使うタイミングは吟味してくださいね」
「は、はい……フリーダさま!」
「使い慣れると、出力を調整して燃費をよくする……なんてこともできそうだよね」
僕がそう言うと、ジルーは嬉しそうに笑いながら答えた。
「まずは、使いどころを見極めるところから、やってみようと思います!」
ジルーは素振りをしたり、ヒートダガーの出力を調整して修業していたが、やがて休憩時間になると、こちらを見た。
「そういえば、魔王さま?」
「ん、どうしたんだい?」
「魔王さまはユニコーンだから、ケガや病気を治すこともできるのですか?」
その話を聞いて、僕は視線を上げて考えた。
そういえば、今までは誰もケガをすることもなかったので、気にしたこともなかったな。
「やったことないからわかんないなぁ……もしかしたら、バトル専門でヒールが苦手な一角獣もいるかもしれない」
そう答えると、フリーダとジルーは、本当にそうなのかと疑いの視線を送ってきた。
いや、だって、できないことはできないと、きちんと答えるのが日本人じゃん!
~一方その頃 冒険者街の酒場~
僕たちが仲間内で、和気あいあいとやっているとき、かつて僕たちを襲った冒険者パーティーは、冒険者街の酒場で言い合いをしていた。
「本当だって! ユニコーンにやられたんだよ!」
「またまた~」
「どうせ、凶暴な野生馬か何かに出くわして、ビビッて逃げたんだろ?」
「愛しのジルーちゃんも置いて行っちまって……可哀そうにねぇ! ケケケ……」
周りにいた冒険者たちは、ジルーを失った冒険者チームのメンバーを笑っていたが、1人だけ真顔でユニコーンの話を聞く男がいた。
「そのユニコーンがいたという話……本当か?」
「あ、ああ……本当だ! 一緒に討伐を手伝ってくれ!!」
そう冒険者は言ったが、その男は険しい顔をしながら言う。
「もし、本当にいたのなら場所だけ教えてくれ。情報料として大銀貨1枚を前金で、実際に居たら後金を更に1枚払おう」
「……わ、わかった。案内するぜ」
角の先からは細い炎のような光が出て、紙の一部を焦がしていく。
それは、人間のときに僕が書いていた文字のように、左利きの特徴のある書き方になりながら、言葉が続いていき、やがて文章が完成した。
「ジルー。この度の戦い……凄かったよ! これ、良ければ目を通して欲しい」
ジルーは僕の感謝状を受け取ると、文章を読み進めていき……やがて嬉しそうに微笑んでくれた。
「ありがとうございます……一角獣から褒められるなんて……夢みたい!」
フリーダもにっこりと笑った。
「私も努力しないと、ジルーにナンバー2の座を奪われてしまいますね」
「どちらかというと、フリーダさまは魔王様の奥さんという感じで、あたしは家来……かなぁ?」
そう言われると、フリーダは顔を真っ赤にして答えた。
「もう……あまり、からかわないでください!」
その答えを聞いた僕やジルーは笑い、フリーダも恥しそうに笑っていた。
とりあえず、ジルーは疲れているだろうから明日の朝まではお休みだ。
僕は彼女を自分の後方に下げ、残りの時間の守りを担当する事にした。
こうやって準備万端で待機しているときというのは、意外とゴブリンやコボルドも攻めてこないものである。
まあ、コボルドに関しては、先ほどオスカーとジルーにまとめて倒されていたから、襲いに来ないのもわかる気がするが……
昼が過ぎると、僕には新たにSPが9ポイント追加された。
これで94ポイントになったわけだが、まだまだマックスの370ポイントには遠いものである。
「そう言えばさ、フリーダ」
「なんでしょう?」
「僕たちの住むダンジョンの近くに、オスカー以外の魔族の縄張りもあるのかな?」
そう質問すると、彼女は頷く。
「マナの歪み具合から、同業者はいるでしょうね」
同業者と聞いて、僕は喜ぶべきか厄介な存在と見るべきか判断に困っていた。
同業者がいるということは、折あらばこちらに攻めてきて、設備やダンジョンそのものを壊される恐れがあるし、仲間もヘッドハンティングされたり、力づくで奪われる恐れもある。
しかし同業者が近くにいれば、冒険者たちが襲ってきた場合に、僕以外の魔王とやり合って敵同士で戦力を削り合ってくれるだろう。
ジルーも不思議そうな表情をしながら、フリーダに質問した。
「ちなみに、よくゴブリンとかコボルドが来るけど……これって、同業者が送ってきているのかな?」
「そうですね……同業者がけしかけて、こちらの様子を確認しているパターンと、失業中の者たちが単独で勝負を挑んでくるパターンがあります」
「な、なるほど……」
ジルーは、身体を軽くほぐすと言った。
「私もゴブリンたちに負けないように、素振りでもしているね」
そう言いながら、彼女は短剣を鞘から抜くと、刃先が赤い光を放った。
「え……? これって……」
「どうやら、あるじさまから感謝状を与えられた効果が出たようです」
フリーダの話によると僕のような魔王が感謝状を出すと、一定確率で特殊能力を閃かせることができるようだ。
因みにジルーが目覚めた付与能力は【ヒートダガー】。
文字通り、短刀の刃先に炎を灯し、刃先を見えづらくして命中率を上昇。更に掠めただけでも炎の追加ダメージを与えるという、戦士なら誰しもが欲しがる能力らしい。
「ヒートダガーは強力ですが、自分の精神力を消耗しますから、使うタイミングは吟味してくださいね」
「は、はい……フリーダさま!」
「使い慣れると、出力を調整して燃費をよくする……なんてこともできそうだよね」
僕がそう言うと、ジルーは嬉しそうに笑いながら答えた。
「まずは、使いどころを見極めるところから、やってみようと思います!」
ジルーは素振りをしたり、ヒートダガーの出力を調整して修業していたが、やがて休憩時間になると、こちらを見た。
「そういえば、魔王さま?」
「ん、どうしたんだい?」
「魔王さまはユニコーンだから、ケガや病気を治すこともできるのですか?」
その話を聞いて、僕は視線を上げて考えた。
そういえば、今までは誰もケガをすることもなかったので、気にしたこともなかったな。
「やったことないからわかんないなぁ……もしかしたら、バトル専門でヒールが苦手な一角獣もいるかもしれない」
そう答えると、フリーダとジルーは、本当にそうなのかと疑いの視線を送ってきた。
いや、だって、できないことはできないと、きちんと答えるのが日本人じゃん!
~一方その頃 冒険者街の酒場~
僕たちが仲間内で、和気あいあいとやっているとき、かつて僕たちを襲った冒険者パーティーは、冒険者街の酒場で言い合いをしていた。
「本当だって! ユニコーンにやられたんだよ!」
「またまた~」
「どうせ、凶暴な野生馬か何かに出くわして、ビビッて逃げたんだろ?」
「愛しのジルーちゃんも置いて行っちまって……可哀そうにねぇ! ケケケ……」
周りにいた冒険者たちは、ジルーを失った冒険者チームのメンバーを笑っていたが、1人だけ真顔でユニコーンの話を聞く男がいた。
「そのユニコーンがいたという話……本当か?」
「あ、ああ……本当だ! 一緒に討伐を手伝ってくれ!!」
そう冒険者は言ったが、その男は険しい顔をしながら言う。
「もし、本当にいたのなら場所だけ教えてくれ。情報料として大銀貨1枚を前金で、実際に居たら後金を更に1枚払おう」
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