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31.崖に生えるレア薬草
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隊列を組みながら進むこと1時間半。
僕たちは、目的地である崖へとやってきた。ここまで深く入り込んだなら山雀のハーブもありそうだ。
アビゲイルも、メリザンドにそっと質問していた。
「あの、メリィさん……ここに来るまでに、エルフの道の力無しなら……どれくらいかかるのですか?」
「そうですね……獣人系なら4時間ほど、人間系なら6時間半といった感じでしょうか」
確かに、道なき道を進みながらとなれば、それくらいの時間はかかるだろう。
「そうなると……ここで採取を終える頃には夕暮れ時ということもあるんだね」
「そうですね。こういう特殊な薬草が生える場所には、草食獣が集まります。するともちろん……肉食獣も目を付けるでしょう」
なるほど。手早く作業を終わらせるに限るな。
「シグレ号……どうだい? ハーブの匂いは?」
「バッチリするよ。問題は小生では取れないことかな?」
僕はすぐに、アビゲイルを見た。
「あそこに生えているヤツだけど……行ける?」
「ええ、やってみます!」
彼女は翼を広げると、そのまま飛び上がっていき、僕の指さした薬草を取って戻ってきた。
「……これでいいですか?」
「うん、じゃあ……今度はメリィ」
「アビィ……地面に植えてください」
「はい」
アビゲイルとメリザンドが山雀のハーブを植えると、メリザンドはそのまま手をかざして成長を促進した。
それは瞬く間に根を張って株を増やしていき、みるみる20株以上に増殖していく。
もうそろそろかなと思ったとき、隣で見ていたリットウシグレ号が意見した。
「もっともっと増やして……できれば50株以上!」
「え!? そんなに?」
「必ず必要になるよ……できるだけたくさん頼むよ!」
「え、ええ……」
メリザンドはシグレ号の言う通り、株をさらに増やしていき63株まで増やした。25株を要求されているにしては、ずいぶんたくさん回収したものだと思う。
「じゃあ、8株を残して……55株を回収するよ」
「そうだね。それだけあれば……何とか足りるかな?」
「……どういうことだ?」
僕が聞き返してみると、シグレ号は遠くを眺めながら答えた。
「じきにわかるよ」
間もなく僕たちは、来た道を戻りはじめると、早くも後ろから足音が聞こえてきた。
振り返ると……そこには真っ白な毛並みをした一角獣が立っている。そのユニコーンは親しそうにシグレ号に話しかけてきた。
「おい、ジャストの倅!」
「……誰かと思えば、シールドシップさん!」
その言葉を聞いて驚いた。
シールドシップと言えば、グレードワンと言われる悪魔を退治した一角獣だ。そんな高貴な一角獣がまさか目の前に出てくるとは……
驚いていると、その一角獣はシグレ号に近づいた。
「その草を集めてるってことは……仕事か」
「そうだよ。これから依頼主に届けるところなんだ」
「そうか……お前のことだから、多く回収してんだろ。3株ほどくれ!」
その言葉を聞いて、意外と普通なんだなと思った。
何せシールドシップ号は、破天荒なウマだと聞いているからだ。ぶっ飛んだところがあるのだから、袋ごと寄越せとか、俺様も連れてけ……これから依頼主とやらと話を付けるとか言い出しそうな雰囲気すらある。
どうやら、そう思っていたのは僕だけではなかったらしく、リットウシグレ号も意外そうな表情をしていた。
「え、ああ……いいよ。メリィお姉さん」
「はい」
シップ号に3株を差し出すと、彼はうんうんと頷きながら満足そうにしていた。
「いや~ 助かるよ……マジで感謝感謝!」
「それ……もしかして、持ち帰って栽培して増やすとか?」
シグレ号が質問すると、シップ号は笑いながら答える。
「いいや……俺様だってそこまで、根気強くはねえよ。どっちかっていうと……B○A対策だな!」
「ば、○BA対策?」
わざと○の位置をずらすシグレ号もどうかと思うが、シップ号は特に気にする様子もなく頷いていた。
「そうそう、BB○対策! あまり大きな声じゃ言えないんだけどさぁ……」
「うん」
「最近、俺様……クソ○BA牝馬に付き纏われててよぉ……しかも1頭じゃねーんだよぉ」
その言葉を聞いたシグレ号の目が点になっていく。シップ号の言葉は彼にとっても意外だったようである。
「そ、そうなんですか……」
「だから、ちょうどいい練習相手が来たって喜んでたんだけど……あいつら、揃いも揃ってノロマなんだよ! だから、もっとやる気を出すように、貴重な薬草を3つほど背中に括り付けておく!」
そういう使い方もあるのかと感心していたら、シールドシップ号は耳をピンと立てた。
「じゃあな、ジャストの子倅……しっかりやれよ!」
「う、うん……ありがと」
「あーばーーよーーーー!」
そう言うとシップ号は逃げ出し、その後に複数の牝馬の声が聞こえてきた。
シールドシップ号は牝馬にモテるという話はけっこう聞くが、モテすぎるのも問題があるようだ。
「じゃ、じゃあ……今度こそ帰ろう」
「ええ……」
【ユニコーンの格付け】
レベル1 新馬・未勝利
レベル2 1勝又は霊力500クラス
レベル3 2勝又は霊力1000クラス
レベル4 3勝又は霊力1600クラス
レベル5 リステッドクラス又はオープンクラス
レベル6 重臣デーモン撃破
レベル7 四天王デーモン撃破
レベル8 グレードワンデーモン撃破
レベル9 G1外征成功クラス又は霊力100000クラス
※どこの階級に属するかは、モデルとなったウマを思い浮かべてみてください。
僕たちは、目的地である崖へとやってきた。ここまで深く入り込んだなら山雀のハーブもありそうだ。
アビゲイルも、メリザンドにそっと質問していた。
「あの、メリィさん……ここに来るまでに、エルフの道の力無しなら……どれくらいかかるのですか?」
「そうですね……獣人系なら4時間ほど、人間系なら6時間半といった感じでしょうか」
確かに、道なき道を進みながらとなれば、それくらいの時間はかかるだろう。
「そうなると……ここで採取を終える頃には夕暮れ時ということもあるんだね」
「そうですね。こういう特殊な薬草が生える場所には、草食獣が集まります。するともちろん……肉食獣も目を付けるでしょう」
なるほど。手早く作業を終わらせるに限るな。
「シグレ号……どうだい? ハーブの匂いは?」
「バッチリするよ。問題は小生では取れないことかな?」
僕はすぐに、アビゲイルを見た。
「あそこに生えているヤツだけど……行ける?」
「ええ、やってみます!」
彼女は翼を広げると、そのまま飛び上がっていき、僕の指さした薬草を取って戻ってきた。
「……これでいいですか?」
「うん、じゃあ……今度はメリィ」
「アビィ……地面に植えてください」
「はい」
アビゲイルとメリザンドが山雀のハーブを植えると、メリザンドはそのまま手をかざして成長を促進した。
それは瞬く間に根を張って株を増やしていき、みるみる20株以上に増殖していく。
もうそろそろかなと思ったとき、隣で見ていたリットウシグレ号が意見した。
「もっともっと増やして……できれば50株以上!」
「え!? そんなに?」
「必ず必要になるよ……できるだけたくさん頼むよ!」
「え、ええ……」
メリザンドはシグレ号の言う通り、株をさらに増やしていき63株まで増やした。25株を要求されているにしては、ずいぶんたくさん回収したものだと思う。
「じゃあ、8株を残して……55株を回収するよ」
「そうだね。それだけあれば……何とか足りるかな?」
「……どういうことだ?」
僕が聞き返してみると、シグレ号は遠くを眺めながら答えた。
「じきにわかるよ」
間もなく僕たちは、来た道を戻りはじめると、早くも後ろから足音が聞こえてきた。
振り返ると……そこには真っ白な毛並みをした一角獣が立っている。そのユニコーンは親しそうにシグレ号に話しかけてきた。
「おい、ジャストの倅!」
「……誰かと思えば、シールドシップさん!」
その言葉を聞いて驚いた。
シールドシップと言えば、グレードワンと言われる悪魔を退治した一角獣だ。そんな高貴な一角獣がまさか目の前に出てくるとは……
驚いていると、その一角獣はシグレ号に近づいた。
「その草を集めてるってことは……仕事か」
「そうだよ。これから依頼主に届けるところなんだ」
「そうか……お前のことだから、多く回収してんだろ。3株ほどくれ!」
その言葉を聞いて、意外と普通なんだなと思った。
何せシールドシップ号は、破天荒なウマだと聞いているからだ。ぶっ飛んだところがあるのだから、袋ごと寄越せとか、俺様も連れてけ……これから依頼主とやらと話を付けるとか言い出しそうな雰囲気すらある。
どうやら、そう思っていたのは僕だけではなかったらしく、リットウシグレ号も意外そうな表情をしていた。
「え、ああ……いいよ。メリィお姉さん」
「はい」
シップ号に3株を差し出すと、彼はうんうんと頷きながら満足そうにしていた。
「いや~ 助かるよ……マジで感謝感謝!」
「それ……もしかして、持ち帰って栽培して増やすとか?」
シグレ号が質問すると、シップ号は笑いながら答える。
「いいや……俺様だってそこまで、根気強くはねえよ。どっちかっていうと……B○A対策だな!」
「ば、○BA対策?」
わざと○の位置をずらすシグレ号もどうかと思うが、シップ号は特に気にする様子もなく頷いていた。
「そうそう、BB○対策! あまり大きな声じゃ言えないんだけどさぁ……」
「うん」
「最近、俺様……クソ○BA牝馬に付き纏われててよぉ……しかも1頭じゃねーんだよぉ」
その言葉を聞いたシグレ号の目が点になっていく。シップ号の言葉は彼にとっても意外だったようである。
「そ、そうなんですか……」
「だから、ちょうどいい練習相手が来たって喜んでたんだけど……あいつら、揃いも揃ってノロマなんだよ! だから、もっとやる気を出すように、貴重な薬草を3つほど背中に括り付けておく!」
そういう使い方もあるのかと感心していたら、シールドシップ号は耳をピンと立てた。
「じゃあな、ジャストの子倅……しっかりやれよ!」
「う、うん……ありがと」
「あーばーーよーーーー!」
そう言うとシップ号は逃げ出し、その後に複数の牝馬の声が聞こえてきた。
シールドシップ号は牝馬にモテるという話はけっこう聞くが、モテすぎるのも問題があるようだ。
「じゃ、じゃあ……今度こそ帰ろう」
「ええ……」
【ユニコーンの格付け】
レベル1 新馬・未勝利
レベル2 1勝又は霊力500クラス
レベル3 2勝又は霊力1000クラス
レベル4 3勝又は霊力1600クラス
レベル5 リステッドクラス又はオープンクラス
レベル6 重臣デーモン撃破
レベル7 四天王デーモン撃破
レベル8 グレードワンデーモン撃破
レベル9 G1外征成功クラス又は霊力100000クラス
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