ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ

文字の大きさ
上 下
36 / 43

31.崖に生えるレア薬草

しおりを挟む
 隊列を組みながら進むこと1時間半。
 僕たちは、目的地である崖へとやってきた。ここまで深く入り込んだなら山雀のハーブもありそうだ。

 アビゲイルも、メリザンドにそっと質問していた。
「あの、メリィさん……ここに来るまでに、エルフの道の力無しなら……どれくらいかかるのですか?」
「そうですね……獣人系なら4時間ほど、人間系なら6時間半といった感じでしょうか」

 確かに、道なき道を進みながらとなれば、それくらいの時間はかかるだろう。
「そうなると……ここで採取を終える頃には夕暮れ時ということもあるんだね」
「そうですね。こういう特殊な薬草が生える場所には、草食獣が集まります。するともちろん……肉食獣も目を付けるでしょう」

 なるほど。手早く作業を終わらせるに限るな。
「シグレ号……どうだい? ハーブの匂いは?」
「バッチリするよ。問題は小生では取れないことかな?」


 僕はすぐに、アビゲイルを見た。
「あそこに生えているヤツだけど……行ける?」
「ええ、やってみます!」
 彼女は翼を広げると、そのまま飛び上がっていき、僕の指さした薬草を取って戻ってきた。

「……これでいいですか?」
「うん、じゃあ……今度はメリィ」
「アビィ……地面に植えてください」
「はい」

 アビゲイルとメリザンドが山雀のハーブを植えると、メリザンドはそのまま手をかざして成長を促進した。
 それは瞬く間に根を張って株を増やしていき、みるみる20株以上に増殖していく。

 もうそろそろかなと思ったとき、隣で見ていたリットウシグレ号が意見した。
「もっともっと増やして……できれば50株以上!」
「え!? そんなに?」
「必ず必要になるよ……できるだけたくさん頼むよ!」
「え、ええ……」


 メリザンドはシグレ号の言う通り、株をさらに増やしていき63株まで増やした。25株を要求されているにしては、ずいぶんたくさん回収したものだと思う。
「じゃあ、8株を残して……55株を回収するよ」
「そうだね。それだけあれば……何とか足りるかな?」
「……どういうことだ?」

 僕が聞き返してみると、シグレ号は遠くを眺めながら答えた。
「じきにわかるよ」


 間もなく僕たちは、来た道を戻りはじめると、早くも後ろから足音が聞こえてきた。
 振り返ると……そこには真っ白な毛並みをした一角獣が立っている。そのユニコーンは親しそうにシグレ号に話しかけてきた。
「おい、ジャストの倅!」
「……誰かと思えば、シールドシップさん!」

 その言葉を聞いて驚いた。
 シールドシップと言えば、グレードワンと言われる悪魔を退治した一角獣だ。そんな高貴な一角獣がまさか目の前に出てくるとは……

 驚いていると、その一角獣はシグレ号に近づいた。
「その草を集めてるってことは……仕事か」
「そうだよ。これから依頼主に届けるところなんだ」
「そうか……お前のことだから、多く回収してんだろ。3株ほどくれ!」


 その言葉を聞いて、意外と普通なんだなと思った。
 何せシールドシップ号は、破天荒なウマだと聞いているからだ。ぶっ飛んだところがあるのだから、袋ごと寄越せとか、俺様も連れてけ……これから依頼主とやらと話を付けるとか言い出しそうな雰囲気すらある。

 どうやら、そう思っていたのは僕だけではなかったらしく、リットウシグレ号も意外そうな表情をしていた。
「え、ああ……いいよ。メリィお姉さん」
「はい」

 シップ号に3株を差し出すと、彼はうんうんと頷きながら満足そうにしていた。
「いや~ 助かるよ……マジで感謝感謝!」
「それ……もしかして、持ち帰って栽培して増やすとか?」

 シグレ号が質問すると、シップ号は笑いながら答える。
「いいや……俺様だってそこまで、根気強くはねえよ。どっちかっていうと……B○A対策だな!」
「ば、○BA対策?」

 わざと○の位置をずらすシグレ号もどうかと思うが、シップ号は特に気にする様子もなく頷いていた。
「そうそう、BB○対策! あまり大きな声じゃ言えないんだけどさぁ……」
「うん」
「最近、俺様……クソ○BA牝馬に付き纏われててよぉ……しかも1頭じゃねーんだよぉ」

 その言葉を聞いたシグレ号の目が点になっていく。シップ号の言葉は彼にとっても意外だったようである。
「そ、そうなんですか……」
「だから、ちょうどいい練習相手が来たって喜んでたんだけど……あいつら、揃いも揃ってノロマなんだよ! だから、もっとやる気を出すように、貴重な薬草を3つほど背中に括り付けておく!」

 そういう使い方もあるのかと感心していたら、シールドシップ号は耳をピンと立てた。
「じゃあな、ジャストの子倅……しっかりやれよ!」
「う、うん……ありがと」
「あーばーーよーーーー!」

 そう言うとシップ号は逃げ出し、その後に複数の牝馬の声が聞こえてきた。
 シールドシップ号は牝馬にモテるという話はけっこう聞くが、モテすぎるのも問題があるようだ。

「じゃ、じゃあ……今度こそ帰ろう」
「ええ……」


【ユニコーンの格付け】

レベル1 新馬・未勝利
レベル2 1勝又は霊力500クラス
レベル3 2勝又は霊力1000クラス
レベル4 3勝又は霊力1600クラス
レベル5 リステッドクラス又はオープンクラス
レベル6 重臣デーモン撃破
レベル7 四天王デーモン撃破
レベル8 グレードワンデーモン撃破
レベル9 G1外征成功クラス又は霊力100000クラス


※どこの階級に属するかは、モデルとなったウマを思い浮かべてみてください。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...