42 / 43
37.リットウシグレ号の父親登場
しおりを挟む
ゆっくりと目を開けると、目の前にはシグレ号が分身していた。
ああ、まだ、意識が完全にもどっていないのか。
あれほど、お守りや札を使ったのだから、こうなってしまうのも仕方ない。
そう考えていると、声が聞こえてきた。
「どうだい、父さん?」
「心配はない。これは聖なる気に当たりすぎただけだ。2・3日も休んでいれば、元気になるだろう」
シグレ号の父さんという言葉に驚くと、その姿がはっきりと見えてくる。
シグレ号の隣にいたのは、鹿毛の一角獣だ。顔立ちはシグレ号にそっくりで、纏っている霊力からも、親子であることは明らかだ。
その一角獣は言った。
「念のため、その吸血鬼がいたという部屋に案内してくれ。浄化しておこう」
「頼もしいけど、気をつけてね。分身が物陰に潜んでいるかもしれない!」
シグレ号がいうと、父一角獣は少し気に入らなそうに答えた。
「お前は私を誰だと思っているんだ?」
「ジャストウェイブ……」
「わかっているのならいい」
ジャストウェイブ号は、グレードワンと言われる地域最強クラスの悪魔を撃退した実績のある一角獣だ。
彼はメリザンドの部屋へと入ると、まるで吸血鬼がいたという痕跡そのものを消すかのように、角を光らせながら丁寧に邪気を払って行ったそうだ。
実際に、何匹かコウモリ型のトークンが残っていて、逃げようとしていたが無駄だ。
ジャストウェイブクラスの一角獣になると、少し掠めただけでも羽がちぎれて蒸発し、目が合っただけでも下級悪魔なら跡形もなく消し飛ぶ。
そして翌日には、森へと帰っていったので、僕はお礼も言えないまま彼と別れてしまったことになった。
「……お礼くらい言いたかったな」
そう呟いたが、息子のリットウシグレ号が代わりに言った。
「これからも小生のことをよろしくって言ってたよ。それに、自分も異世界転移者の馬主が欲しかったって」
リットウシグレ号の話だと、ジャストウェイブ号には、まだまだこなさなければいけない仕事も多いようだ。
「そうか……冒険者を続けていれば、また会える日が来るかな?」
「それはもちろんだよ。小生も一角獣として経験を積んで、お父さんに恐れられる同業者にならないとね!」
その言葉を聞いて僕もその通りだと感じていた。リットウシグレ号ならできるだろうし、まだまだ若いんだ。僕のように躓かないで、真っ直ぐに伸びて欲しいと思う。
メリィもちょうど、麦粥を持ってきてくれた。
「よかった。すっかり顔色も良くなりましたね!」
「いつまでも寝てもいられないからね。せっかく問題が1つ片付いたんだ。これからはクレバスに入るような依頼も来るだろうし……早く筋トレをしてガチャを引かないとね」
「小生も努力しないとね。ところで……?」
「なんだ?」
「女神の石って……どういう効果なのかな、あれ?」
ああ、例の大大吉のアイテムか。
あれは確か、死んでしまった仲間を1日以内なら蘇らせるアイテムだ。まあ、バカ正直に言うのもアレだから、ちょっと茶化すかな。
「あれは保険だからな。なるべく使わないに越したことはない」
「曖昧な言い方だな~ 小生が食べちゃうぞ~」
「やらしー言葉に聞こえるからヤメレ」
そう言いながら僕たちが笑いあっていた頃、別の場所では険しい表情をしていた者がいた。
この吸血鬼は最近、魔王の仲間入りを果たしていた。
鬼は壊れた土人形を睨むと、気に入らなそうにつぶやいていく。
「まさか……俺様の呪いを打ち破った奴がいるとはな……」
その土人形を掴むと、吸血鬼は少し考えこんだ。
「誰だったか、この呪いをかけた奴は……くそ、こんなことになるのなら、きちんと日付と種族を記しておくべきだった!」
少し間が空いたが、鬼はまだ考えている。
「順番的には……有翼人かエルフと言った高等種族か。思い出せない……なんて言っている場合じゃないぞ。これは病気のようなモノなのだから、免疫を作られたら厄介だ」
鬼が力を込めると、その土人形はバラバラに崩れ去った。
「こうなったら、草の根を分けてでも探し出すしかなさそうだな。必ず……」
その目が赤黒く光った。
「息の根を止めてやる!」
ああ、まだ、意識が完全にもどっていないのか。
あれほど、お守りや札を使ったのだから、こうなってしまうのも仕方ない。
そう考えていると、声が聞こえてきた。
「どうだい、父さん?」
「心配はない。これは聖なる気に当たりすぎただけだ。2・3日も休んでいれば、元気になるだろう」
シグレ号の父さんという言葉に驚くと、その姿がはっきりと見えてくる。
シグレ号の隣にいたのは、鹿毛の一角獣だ。顔立ちはシグレ号にそっくりで、纏っている霊力からも、親子であることは明らかだ。
その一角獣は言った。
「念のため、その吸血鬼がいたという部屋に案内してくれ。浄化しておこう」
「頼もしいけど、気をつけてね。分身が物陰に潜んでいるかもしれない!」
シグレ号がいうと、父一角獣は少し気に入らなそうに答えた。
「お前は私を誰だと思っているんだ?」
「ジャストウェイブ……」
「わかっているのならいい」
ジャストウェイブ号は、グレードワンと言われる地域最強クラスの悪魔を撃退した実績のある一角獣だ。
彼はメリザンドの部屋へと入ると、まるで吸血鬼がいたという痕跡そのものを消すかのように、角を光らせながら丁寧に邪気を払って行ったそうだ。
実際に、何匹かコウモリ型のトークンが残っていて、逃げようとしていたが無駄だ。
ジャストウェイブクラスの一角獣になると、少し掠めただけでも羽がちぎれて蒸発し、目が合っただけでも下級悪魔なら跡形もなく消し飛ぶ。
そして翌日には、森へと帰っていったので、僕はお礼も言えないまま彼と別れてしまったことになった。
「……お礼くらい言いたかったな」
そう呟いたが、息子のリットウシグレ号が代わりに言った。
「これからも小生のことをよろしくって言ってたよ。それに、自分も異世界転移者の馬主が欲しかったって」
リットウシグレ号の話だと、ジャストウェイブ号には、まだまだこなさなければいけない仕事も多いようだ。
「そうか……冒険者を続けていれば、また会える日が来るかな?」
「それはもちろんだよ。小生も一角獣として経験を積んで、お父さんに恐れられる同業者にならないとね!」
その言葉を聞いて僕もその通りだと感じていた。リットウシグレ号ならできるだろうし、まだまだ若いんだ。僕のように躓かないで、真っ直ぐに伸びて欲しいと思う。
メリィもちょうど、麦粥を持ってきてくれた。
「よかった。すっかり顔色も良くなりましたね!」
「いつまでも寝てもいられないからね。せっかく問題が1つ片付いたんだ。これからはクレバスに入るような依頼も来るだろうし……早く筋トレをしてガチャを引かないとね」
「小生も努力しないとね。ところで……?」
「なんだ?」
「女神の石って……どういう効果なのかな、あれ?」
ああ、例の大大吉のアイテムか。
あれは確か、死んでしまった仲間を1日以内なら蘇らせるアイテムだ。まあ、バカ正直に言うのもアレだから、ちょっと茶化すかな。
「あれは保険だからな。なるべく使わないに越したことはない」
「曖昧な言い方だな~ 小生が食べちゃうぞ~」
「やらしー言葉に聞こえるからヤメレ」
そう言いながら僕たちが笑いあっていた頃、別の場所では険しい表情をしていた者がいた。
この吸血鬼は最近、魔王の仲間入りを果たしていた。
鬼は壊れた土人形を睨むと、気に入らなそうにつぶやいていく。
「まさか……俺様の呪いを打ち破った奴がいるとはな……」
その土人形を掴むと、吸血鬼は少し考えこんだ。
「誰だったか、この呪いをかけた奴は……くそ、こんなことになるのなら、きちんと日付と種族を記しておくべきだった!」
少し間が空いたが、鬼はまだ考えている。
「順番的には……有翼人かエルフと言った高等種族か。思い出せない……なんて言っている場合じゃないぞ。これは病気のようなモノなのだから、免疫を作られたら厄介だ」
鬼が力を込めると、その土人形はバラバラに崩れ去った。
「こうなったら、草の根を分けてでも探し出すしかなさそうだな。必ず……」
その目が赤黒く光った。
「息の根を止めてやる!」
10
お気に入りに追加
835
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる