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26.ゴブリンを壊滅させた者
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僕は隊列を変更することにした。
先頭は僕、2番手がリットウシグレ号、そして最後尾はメリザンドとアビゲイルという陣形だ。
これは1-1-2という、バッグアタックやサイドアタックを警戒する陣形だ。中央にシグレ号を置けば、どこの方向から攻められても、彼の広い視野に引っかかることになる。
「どう、洞窟の中は?」
「大丈夫……ばっちりと見えるよ」
どうやら、ウマの目は暗いところでもよく見えるようだ。これなら安心して、洞窟の様子を調べることができる。
洞窟の中を歩き出すと、シグレ号は言った。
「ゴブリンの臭いが少しずつ強くなってきたね。それに……人のにおいも……」
「ということは、両方ともこの洞窟内にいるということか……」
そう言いながら歩みを進めていくと、僕は驚きのあまり歩みを止めていた。
何と、ゴブリンがスライムに絡めとられて捕食されかけているのだ。それも1匹や2匹だけじゃない。かなりの数がいる。
「なるほど。ゴブリンの巣は……こうして壊滅させられていたんだね」
「冷静に言っている場合か! すぐに冒険者を救い出して……」
「待って」
メリザンドは手で僕の言葉を制止すると、耳を澄まして何かを聞いていた。
彼女は、険しい顔をしながら目を開けていく。
「……この音色……まさか……」
「どうしたの?」
僕とシグレ号がお互いを見合うと、アビゲイルが慌てて僕たちを突き飛ばした。
その直後に、彼女はスライムに圧し掛かられ、あっという間にからめとられていく。
「くっ……」
慌ててスライムを電気で威嚇しようとしたが、すぐにシグレ号に止められた。
「待って、電撃するとお姉ちゃんまで感電してしまう!」
「くっ!」
僕が舌打ちをした直後に、足音が聞こえてきた。
姿を現したのはエルフだった。女は笛を片手に持ちながら、どこか人を人とも思わない不気味な笑みを浮かべながら僕たちを眺めてくる。
「なかなか意気がいいわね」
「お前は何者だ!?」
そう聞き返すと、女は不敵な笑みを浮かべていた。
「スライム使い……聞いたことくらいはあるでしょう?」
僕たちが身構えると、メリザンドは僕たちの前に手をかざして静止した。
よく見ると、彼女の足にもスライムがまとわりついている。
「すぐに、ギルド長たちを呼んでください……我々の手には余る相手です」
すぐに彼女の言葉を否定しようとしたが、スライム使いの言葉を聞いて僕は唾を呑んでいた。
その身体から流れ出ている力は、まるで霊力とは言えないほどおぞましい色をしていた。姿かたちはどう見ても人間なのに、中に入っているのが全くの別物。
いいや、はっきり言って悪魔が人間の皮を被っているという感じさえする。
「行こう、シグレ号!」
「うん!」
2人で逃げ出すと、メリザンドは複数のファイアショットを放つが、その攻撃はことごとくスライム使いが操るスライムによって阻まれた。
それだけでなく、スライム使いは笛を楽し気に吹きながら、スライムを使役してメリザンドにけしかけていく。
そもそも液体のスライムに、炎系の攻撃は効き目がなく、メリザンドはスライム使いに決定打を与えられないまま、足元に忍び寄ったスライムに纏わりつかれ、彼女は転倒した。
「これで実力の違いはわかったでしょう? いい加減に無駄な抵抗はやめなさい……でないと」
スライム使いは、既に捕らわれていたアビゲイルのアゴを掴むと、その口と鼻にスライムを近づけた。
「私は彼女を窒息させることもできるのよ?」
「ダメ、口車に乗っては……私のことは……むぐっ!」
「誰が喋れと言ったの? もっと恥ずかしい格好させるよ?」
「くっ……」
メリザンドは険しい顔をしながら両手を上げると、スライム使いはメリザンドのローブを眺めた。
「へぇ……ミスリルのローブなんて、なかなかいいモノ持ってるじゃない」
「…………」
「私に寄越しなさい」
メリザンドが震える手でローブを手渡すと、スライム使いの足音が響いた。
「コレクションに相応しい、芸術的な作品にしてあげる……ふふ、楽しみね」
「余裕ね。あの2人を放っておいてもいいの?」
「ご心配なく。この洞窟の外へは一歩も出られないわ」
その言葉を聞いたメリザンドからは、みるみる血の気が引いていく。
「まさか……入り口にまで仕掛けを!?」
「無臭のスライムを岩に擬態させておくことなんて、私にとっては朝飯前よ」
そこまで言うと、スライム使いは嗤った。
「炎使いだからって抵抗しないほうがいいわよ。スライムは燃えないけど、下着くらいには着火するからね」
「…………」
まもなく、メリザンドは両手を上げた。
【捕まったメリザンドとアビゲイル】
先頭は僕、2番手がリットウシグレ号、そして最後尾はメリザンドとアビゲイルという陣形だ。
これは1-1-2という、バッグアタックやサイドアタックを警戒する陣形だ。中央にシグレ号を置けば、どこの方向から攻められても、彼の広い視野に引っかかることになる。
「どう、洞窟の中は?」
「大丈夫……ばっちりと見えるよ」
どうやら、ウマの目は暗いところでもよく見えるようだ。これなら安心して、洞窟の様子を調べることができる。
洞窟の中を歩き出すと、シグレ号は言った。
「ゴブリンの臭いが少しずつ強くなってきたね。それに……人のにおいも……」
「ということは、両方ともこの洞窟内にいるということか……」
そう言いながら歩みを進めていくと、僕は驚きのあまり歩みを止めていた。
何と、ゴブリンがスライムに絡めとられて捕食されかけているのだ。それも1匹や2匹だけじゃない。かなりの数がいる。
「なるほど。ゴブリンの巣は……こうして壊滅させられていたんだね」
「冷静に言っている場合か! すぐに冒険者を救い出して……」
「待って」
メリザンドは手で僕の言葉を制止すると、耳を澄まして何かを聞いていた。
彼女は、険しい顔をしながら目を開けていく。
「……この音色……まさか……」
「どうしたの?」
僕とシグレ号がお互いを見合うと、アビゲイルが慌てて僕たちを突き飛ばした。
その直後に、彼女はスライムに圧し掛かられ、あっという間にからめとられていく。
「くっ……」
慌ててスライムを電気で威嚇しようとしたが、すぐにシグレ号に止められた。
「待って、電撃するとお姉ちゃんまで感電してしまう!」
「くっ!」
僕が舌打ちをした直後に、足音が聞こえてきた。
姿を現したのはエルフだった。女は笛を片手に持ちながら、どこか人を人とも思わない不気味な笑みを浮かべながら僕たちを眺めてくる。
「なかなか意気がいいわね」
「お前は何者だ!?」
そう聞き返すと、女は不敵な笑みを浮かべていた。
「スライム使い……聞いたことくらいはあるでしょう?」
僕たちが身構えると、メリザンドは僕たちの前に手をかざして静止した。
よく見ると、彼女の足にもスライムがまとわりついている。
「すぐに、ギルド長たちを呼んでください……我々の手には余る相手です」
すぐに彼女の言葉を否定しようとしたが、スライム使いの言葉を聞いて僕は唾を呑んでいた。
その身体から流れ出ている力は、まるで霊力とは言えないほどおぞましい色をしていた。姿かたちはどう見ても人間なのに、中に入っているのが全くの別物。
いいや、はっきり言って悪魔が人間の皮を被っているという感じさえする。
「行こう、シグレ号!」
「うん!」
2人で逃げ出すと、メリザンドは複数のファイアショットを放つが、その攻撃はことごとくスライム使いが操るスライムによって阻まれた。
それだけでなく、スライム使いは笛を楽し気に吹きながら、スライムを使役してメリザンドにけしかけていく。
そもそも液体のスライムに、炎系の攻撃は効き目がなく、メリザンドはスライム使いに決定打を与えられないまま、足元に忍び寄ったスライムに纏わりつかれ、彼女は転倒した。
「これで実力の違いはわかったでしょう? いい加減に無駄な抵抗はやめなさい……でないと」
スライム使いは、既に捕らわれていたアビゲイルのアゴを掴むと、その口と鼻にスライムを近づけた。
「私は彼女を窒息させることもできるのよ?」
「ダメ、口車に乗っては……私のことは……むぐっ!」
「誰が喋れと言ったの? もっと恥ずかしい格好させるよ?」
「くっ……」
メリザンドは険しい顔をしながら両手を上げると、スライム使いはメリザンドのローブを眺めた。
「へぇ……ミスリルのローブなんて、なかなかいいモノ持ってるじゃない」
「…………」
「私に寄越しなさい」
メリザンドが震える手でローブを手渡すと、スライム使いの足音が響いた。
「コレクションに相応しい、芸術的な作品にしてあげる……ふふ、楽しみね」
「余裕ね。あの2人を放っておいてもいいの?」
「ご心配なく。この洞窟の外へは一歩も出られないわ」
その言葉を聞いたメリザンドからは、みるみる血の気が引いていく。
「まさか……入り口にまで仕掛けを!?」
「無臭のスライムを岩に擬態させておくことなんて、私にとっては朝飯前よ」
そこまで言うと、スライム使いは嗤った。
「炎使いだからって抵抗しないほうがいいわよ。スライムは燃えないけど、下着くらいには着火するからね」
「…………」
まもなく、メリザンドは両手を上げた。
【捕まったメリザンドとアビゲイル】
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