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22.アホウマが仲間入り
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僕はじっと目の前の若馬を眺めていた。
体中が真っ黒な毛に覆われ、額以外に白い模様が一切ないというウマも珍しいものだと思う。競馬でも黒いウマはよく出てくるけど、大抵は白い部分があったりするからな。
そして何と言ってもデカイ。
コイツはまだ母馬から独り立ちしたばかりという感じだが、もう少し成長するとサラブレッドくらいまで大きくなりそうな感じがする。
「……ちなみに、角はあるのか?」
「あるよ」
コイツはそう答えると水色の角を額に現した。ドリルのような形をした40センチほどの角は美しい。
「じゃあ、リットウシグレというのはどうだろう?」
そう伝えると、若馬はにっこりと笑った。どうやら響きは気に入ってくれたようだ。
「何だかイイ感じの響きだね。どういう意味なんだい?」
「リットウは、立冬……僕の国の言葉で冬がはじまる時を現している。だいたい11月7日辺りかな? あと、もうひとつ意味がある」
「そっちは?」
僕は頷くと言った。
「僕の世界の競走馬たちには2か所の拠点があるんだけど、その片方が栗東市にあるんだ」
「時雨の意味は?」
「秋から冬にかけて、降ったり止んだりする雨。要するに季節を意味する言葉だな」
「なるほど。小生の角から着想を得たわけだね……それで行こう!」
そう頷くと、若馬の角が光りを放った。
どうやらリットウシグレ号として認められたよう……ん、んん!?
その直後に、リットウシグレ号の角に青い稲光のようなモノが走っていた。これって……もしかして……
「どうやら、勇者に名前を貰ったから小生も天啓を得たようだね」
「そうか、じゃあさっそく……彼女の容態を見てあげてくれ」
「わかった」
シグレ号がメリザンドに近づくと、彼女は肩口を見せた。
「……いかがでしょうか、一角獣殿?」
「…………」
彼は角を近づけると、しばらく険しい顔をしていた。
「かなり厄介な悪魔から呪いを受けてしまったようだね。今の小生には手に負えないな」
やっぱり、そう簡単にはいかないか。
そう落胆していると、一角獣シグレは言った。
「もっと、経験を積んだ一角獣を頼るのが一番かな……」
「知り合いにいい人はいるのか?」
シグレ号は少し考えた。
「角のサイズ75センチか90センチクラスの一角獣に診てもらうのが一番かな? このお姉さんが吸血鬼化しても困るから、小生もしばらく同行することにするよ」
そこまで言うと、シグレ号は現金な笑顔を見せた。
「あ、普段は単なるウマを装うから、飼い葉代とお世話はそっち持ちでお願いね!」
やはりそうなるのかと苦笑いしていたら、シグレ号はニヤニヤと笑った。
「じゃあ、ブラックゼラニウムだったね。とりに行こう!」
「あ、ああ……」
「チ○コチ○コチ○コ~ チ○コチ○コ~ オチ○チンたくさん~」
「ブラックゼラニウムを何だと思ってるんだお前は!」
「見てよ隊長、この一面のチ○コの森を!」
「意味わかんねーよ!」
「まあ、確かに……ここに生えている木はオスが多いですね」
その言葉を聞いて、僕は頭を抱えた。
「頭がいいんだか……悪いんだか……」
こうして、アタオカ馬というか……気性難オスウマが仲間になったワケだ。
とにかく問題は多そうだが、一角獣が仲間になったから僕のパーティーはまた強くなった。
先頭は僕、2番手がメリザンド、3番手がアビゲイル、最後尾をリットウシグレ号という配置にした。
ウマの耳はかなり動くし、嗅覚も人間の1000倍と聞いているから、コイツほど最後尾に適した奴もいないだろう。おまけに視界も広いし。
「ねえ、知ってるかいアビゲイル?」
「なあに?」
「植物ってね、花の部分を顔に例える人が多いけど、実際に頭や口に当たるのは根っこの方なんだよ」
「そ、そうなの!?」
なんとなく、コイツが何を言おうとしているのか……わかるぞ。
「つまり何か? ブラックゼラニウムは、足が臭いから虫が逃げていくとでも言いたいのか?」
先回りして答えを言ってみると、このアホウマはニヤッと笑った。
「ほほう……小生の先回りをするとは、お主……なかなかできるな!」
「お前に褒められても嬉しくねえっての!」
そう突き放すと、このアホウマはニヤニヤと笑っていた。
「ちなみにね、お花はチ○コに当たる部分だから、香りを楽しむのは……」
「だから、やめろバカ! 僕の仔羊たちに余計なことを吹き込むな!」
アビゲイルは噴き出すように笑いだしていたが、メリザンドは普段通りの表情で答えた。
「いや、よく知っているなと……感心していました」
もう少し歩くと、シグレ号は鼻をスンスンと動かした。
「ねえ、ブラックゼラニウムのにおいがするよ」
「どこだ?」
「じゃあ、小生が先頭を歩いていい?」
間もなくクマが目の前に現れたが、シグレ号を見ると一目散に逃げだした。
さすがのクマも、こんなサラブレッドのような大きさの一角獣を相手にケンカを売るつもりはないようだ。そして僕たちは少し瘴気の強くなった場所で、ブラックゼラニウムを見つけた。
「見た目は、ローズゼラニウムを真っ黒にした感じだな」
「はい。瘴気を受け続けたことで、突然変異したモノだと考えられます」
メリザンドは、ブラックゼラニウムを大地の精霊の力で増やすと、増えた株を次々と回収して、2株だけ残してこちらを見た。
「では、戻りましょう」
「ああ!」
【仲間になったリットウシグレ号】
名前:リットウシグレ(栗東時雨or立冬時雨)
いざとなったときは有能だが、普段はしょうもない発言ばかりする残念一角獣。
主人公たちをつけ回していた理由も、何か重要な目的があったからではなく、ストーキングごっこという遊びだったと本人は言う。
所有アビリティ等は、一切不明。
経験 ?
近接攻撃能力 ?
中距離攻撃能力 ?
遠距離攻撃能力 E
物理防御力 ?
魔法防御力 ?
スタミナ・体力 ?
素早さ ?
技量・要領良さ ?
索敵能力 ?
体中が真っ黒な毛に覆われ、額以外に白い模様が一切ないというウマも珍しいものだと思う。競馬でも黒いウマはよく出てくるけど、大抵は白い部分があったりするからな。
そして何と言ってもデカイ。
コイツはまだ母馬から独り立ちしたばかりという感じだが、もう少し成長するとサラブレッドくらいまで大きくなりそうな感じがする。
「……ちなみに、角はあるのか?」
「あるよ」
コイツはそう答えると水色の角を額に現した。ドリルのような形をした40センチほどの角は美しい。
「じゃあ、リットウシグレというのはどうだろう?」
そう伝えると、若馬はにっこりと笑った。どうやら響きは気に入ってくれたようだ。
「何だかイイ感じの響きだね。どういう意味なんだい?」
「リットウは、立冬……僕の国の言葉で冬がはじまる時を現している。だいたい11月7日辺りかな? あと、もうひとつ意味がある」
「そっちは?」
僕は頷くと言った。
「僕の世界の競走馬たちには2か所の拠点があるんだけど、その片方が栗東市にあるんだ」
「時雨の意味は?」
「秋から冬にかけて、降ったり止んだりする雨。要するに季節を意味する言葉だな」
「なるほど。小生の角から着想を得たわけだね……それで行こう!」
そう頷くと、若馬の角が光りを放った。
どうやらリットウシグレ号として認められたよう……ん、んん!?
その直後に、リットウシグレ号の角に青い稲光のようなモノが走っていた。これって……もしかして……
「どうやら、勇者に名前を貰ったから小生も天啓を得たようだね」
「そうか、じゃあさっそく……彼女の容態を見てあげてくれ」
「わかった」
シグレ号がメリザンドに近づくと、彼女は肩口を見せた。
「……いかがでしょうか、一角獣殿?」
「…………」
彼は角を近づけると、しばらく険しい顔をしていた。
「かなり厄介な悪魔から呪いを受けてしまったようだね。今の小生には手に負えないな」
やっぱり、そう簡単にはいかないか。
そう落胆していると、一角獣シグレは言った。
「もっと、経験を積んだ一角獣を頼るのが一番かな……」
「知り合いにいい人はいるのか?」
シグレ号は少し考えた。
「角のサイズ75センチか90センチクラスの一角獣に診てもらうのが一番かな? このお姉さんが吸血鬼化しても困るから、小生もしばらく同行することにするよ」
そこまで言うと、シグレ号は現金な笑顔を見せた。
「あ、普段は単なるウマを装うから、飼い葉代とお世話はそっち持ちでお願いね!」
やはりそうなるのかと苦笑いしていたら、シグレ号はニヤニヤと笑った。
「じゃあ、ブラックゼラニウムだったね。とりに行こう!」
「あ、ああ……」
「チ○コチ○コチ○コ~ チ○コチ○コ~ オチ○チンたくさん~」
「ブラックゼラニウムを何だと思ってるんだお前は!」
「見てよ隊長、この一面のチ○コの森を!」
「意味わかんねーよ!」
「まあ、確かに……ここに生えている木はオスが多いですね」
その言葉を聞いて、僕は頭を抱えた。
「頭がいいんだか……悪いんだか……」
こうして、アタオカ馬というか……気性難オスウマが仲間になったワケだ。
とにかく問題は多そうだが、一角獣が仲間になったから僕のパーティーはまた強くなった。
先頭は僕、2番手がメリザンド、3番手がアビゲイル、最後尾をリットウシグレ号という配置にした。
ウマの耳はかなり動くし、嗅覚も人間の1000倍と聞いているから、コイツほど最後尾に適した奴もいないだろう。おまけに視界も広いし。
「ねえ、知ってるかいアビゲイル?」
「なあに?」
「植物ってね、花の部分を顔に例える人が多いけど、実際に頭や口に当たるのは根っこの方なんだよ」
「そ、そうなの!?」
なんとなく、コイツが何を言おうとしているのか……わかるぞ。
「つまり何か? ブラックゼラニウムは、足が臭いから虫が逃げていくとでも言いたいのか?」
先回りして答えを言ってみると、このアホウマはニヤッと笑った。
「ほほう……小生の先回りをするとは、お主……なかなかできるな!」
「お前に褒められても嬉しくねえっての!」
そう突き放すと、このアホウマはニヤニヤと笑っていた。
「ちなみにね、お花はチ○コに当たる部分だから、香りを楽しむのは……」
「だから、やめろバカ! 僕の仔羊たちに余計なことを吹き込むな!」
アビゲイルは噴き出すように笑いだしていたが、メリザンドは普段通りの表情で答えた。
「いや、よく知っているなと……感心していました」
もう少し歩くと、シグレ号は鼻をスンスンと動かした。
「ねえ、ブラックゼラニウムのにおいがするよ」
「どこだ?」
「じゃあ、小生が先頭を歩いていい?」
間もなくクマが目の前に現れたが、シグレ号を見ると一目散に逃げだした。
さすがのクマも、こんなサラブレッドのような大きさの一角獣を相手にケンカを売るつもりはないようだ。そして僕たちは少し瘴気の強くなった場所で、ブラックゼラニウムを見つけた。
「見た目は、ローズゼラニウムを真っ黒にした感じだな」
「はい。瘴気を受け続けたことで、突然変異したモノだと考えられます」
メリザンドは、ブラックゼラニウムを大地の精霊の力で増やすと、増えた株を次々と回収して、2株だけ残してこちらを見た。
「では、戻りましょう」
「ああ!」
【仲間になったリットウシグレ号】
名前:リットウシグレ(栗東時雨or立冬時雨)
いざとなったときは有能だが、普段はしょうもない発言ばかりする残念一角獣。
主人公たちをつけ回していた理由も、何か重要な目的があったからではなく、ストーキングごっこという遊びだったと本人は言う。
所有アビリティ等は、一切不明。
経験 ?
近接攻撃能力 ?
中距離攻撃能力 ?
遠距離攻撃能力 E
物理防御力 ?
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スタミナ・体力 ?
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技量・要領良さ ?
索敵能力 ?
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