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20.リューノ隊の結成
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一角獣が連れてきた有翼人の少女と、少し面接をしてみた。
彼女の名前はアビゲイルというらしい。元々はツーノッパ王国の北側にある島国の出身らしいが、海峡を越えて冒険者として修業をしているのだという。
さすがに一角獣が世話を焼いただけのことはあって、まじめそうだし普段から弓矢や風魔法などの武芸もしっかりと行っているようだ。
「わかった……君もギルドに入れないかギルド長に相談してみるよ」
そう伝えると、その有翼人の少女はとても喜んでいた。
翌朝に彼女のことを紹介すると、受付嬢ソフィアはすぐにギルド長を呼んでくれた。
ギルド長は少女と面接をしている間、有翼人の女の子が来ているのが珍しいらしく、ギルド長班の先輩たちが会議室の前に立って聞き耳を立てていた。
「……何やってるんですか、先輩たち?」
「しーーっ!」
「今いいところなんだ……」
その直後にドアが開くと、彼らはドミノ倒しになって、仁王立ちするギルド長に笑いかけていた。
「いつまでも油売ってないで……修業でもして来い!」
「は、はい!」
先輩たちが走る去ると、ギルド長は表情を戻して僕を見た。
「それから、リューノ君」
「はい?」
「彼女を3人目の隊員として、部隊を結成するのはどうだろう?」
「ぼ、僕が隊長ですか!?」
驚いて聞き返すと、彼はしっかりと頷いた。
「メリザンド君とアビゲイル君がいれば、かなり融通の利くパーティーになると思う」
僕は2人を見てみた。
メリザンドはエルフなので、森を歩く際には重宝するし食料が心許なくなったときも、植物を用いて食つなぐことができる。
そしてアピゲイルは有翼人なので、谷や絶壁にロープを張ることができるし、高い場所に生えている木の実などを取ることもできる。
隊長になれば、今まで以上に自由に動き回ることもできるだろうし、弱者男性だった僕がリーダーになる機会なんて、これを逃せば二度とないことだろう。
「わかりました。やってみます」
その言葉を聞くと、メリザンドやアビゲイルは嬉しそうな顔をしてくれた。
「では、よろしくお願いします隊長!」
「メリィも、リューノのことを精一杯支えます!」
その言葉を聞いて、僕は彼らをとても頼もしく感じた。
「よろしく頼むよ、2人とも!」
ギルド長も満足そうに笑いながら僕に言った。
「リューノのパーティーは、第4部隊として活躍してもらおう。パーティー参加なら受付で斡旋できるクエストも増えるから、方針が決まったらソフィアと相談してみてくれ」
「ご期待に沿えるように努力します!」
そう答えると、メリィやアビィも右手で胸に手を当てて敬礼の姿勢を取った。
晴れてギルドへと入れたアビィだが、最初の問題はやはり彼女の部屋をどうするかということだ。元々が冒険者修行と出稼ぎだから、実家は側にはないだろうし、帰る家があるのなら一角獣がここまで案内することもないだろう。
「メリィ、彼女の部屋だけど……」
「それなら、私にお任せください!」
メリザンドの言う通りに後をついて行くと、彼女はいつも通りに僕たちが過ごしている木の前まで来た。
確かに現実的ではあるけど、ワンルームの部屋に3人はさすがに狭いような感じもするし、夜に僕たちが行っていることを考えると、アビゲイルに悪い気もした。
「ではあなた。私とアビィの手を取ってください」
「……こうかい?」
2人の手を握った状態で、メリザンドが木の中へと入ると、その先には見慣れた玄関があった。
3人で使うには狭いが、仕方ないかと思いながら部屋へと入ると……あれ? 廊下になっている。
「え……これって、もしかして!?」
「はい。3人で入ったので、部屋がほんの少しだけ拡張されているんです」
彼女はそう言いながらドアの1つを開けると、そこには初めて見る部屋があった。
部屋全てが木でできており、ランプが2つ下がっているという、中世ヨーロッパを思い浮かべる造りになっている。そして、キリスト教を思わせる十字架と、質素なベッドと、窓ガラスの代わりに雨戸だけの窓がある。
何だかファンタジーに出て来そうな部屋だと思っていたら、アビゲイルは懐かしそうに言った。
「故郷の……私の部屋と……同じ!」
彼女は不思議そうにメリザンドを見た。
「どういうことなのですか?」
「私の固有特殊能力……つまりアビリティは【霊樹の邸宅】。仲間が最も快適だと思う部屋を提供できるの」
どうやらアビリティというのは、神様から贈られるその人だけの特殊能力のようなモノで、どんな神様を後ろ盾にしているかで、得られる能力の種類や数に違いがあるようだ。
キリスト教を連想させる十字架がある……ということは、アビゲイルの能力は……
「もしかしてアビゲイルの能力って……治癒術だったりする?」
そう聞くと、彼女は表情を曇らせた。
「……どうしても、答えなければなりませんか?」
顔を赤らめながら言うと、僕は慌てて首を振った。
「個人的な興味で聞いただけだから、答えたくなければいいよ」
そう答えると、彼女はホッとしていた。
何やらうかつには立ち入っていけない感じがする。
【その後のアビゲイル】
アビゲイル
固有特殊能力1:エンジェルブースト
身長161センチメートル 体重52キログラム
本作のサブヒロイン。異世界の宗教ミリズス教を信仰している女の子。
一人前の有翼人の戦士となるために、修業を兼ねて中堅冒険者ギルドに在籍していたが、上司のセクハラによって強引に解雇され、成り行きでショートソードに身を寄せることになる。
能力エンジェルブーストを使うと霊力が大幅に上昇する。また、イラストの中で耳が尖っているときは気を高ぶらせているとき。普段は人間の耳をしている。
ちなみにミリズス教は一神教だが、キリスト教(プロテスタント)とギリシャ神話と仏教と神道を足して4で割ったような宗教である。
経験 C ★★★★
近接攻撃能力 C ★★★
中距離攻撃能力 B ★★★★
遠距離攻撃能力 B ★★★★★
物理防御力 C ★★
魔法防御力 B ★★★★★
スタミナ・体力 C ★★★★
素早さ B ★★★★★
技量・要領良さ B ★★★★★
索敵能力 C ★★★★
彼女の名前はアビゲイルというらしい。元々はツーノッパ王国の北側にある島国の出身らしいが、海峡を越えて冒険者として修業をしているのだという。
さすがに一角獣が世話を焼いただけのことはあって、まじめそうだし普段から弓矢や風魔法などの武芸もしっかりと行っているようだ。
「わかった……君もギルドに入れないかギルド長に相談してみるよ」
そう伝えると、その有翼人の少女はとても喜んでいた。
翌朝に彼女のことを紹介すると、受付嬢ソフィアはすぐにギルド長を呼んでくれた。
ギルド長は少女と面接をしている間、有翼人の女の子が来ているのが珍しいらしく、ギルド長班の先輩たちが会議室の前に立って聞き耳を立てていた。
「……何やってるんですか、先輩たち?」
「しーーっ!」
「今いいところなんだ……」
その直後にドアが開くと、彼らはドミノ倒しになって、仁王立ちするギルド長に笑いかけていた。
「いつまでも油売ってないで……修業でもして来い!」
「は、はい!」
先輩たちが走る去ると、ギルド長は表情を戻して僕を見た。
「それから、リューノ君」
「はい?」
「彼女を3人目の隊員として、部隊を結成するのはどうだろう?」
「ぼ、僕が隊長ですか!?」
驚いて聞き返すと、彼はしっかりと頷いた。
「メリザンド君とアビゲイル君がいれば、かなり融通の利くパーティーになると思う」
僕は2人を見てみた。
メリザンドはエルフなので、森を歩く際には重宝するし食料が心許なくなったときも、植物を用いて食つなぐことができる。
そしてアピゲイルは有翼人なので、谷や絶壁にロープを張ることができるし、高い場所に生えている木の実などを取ることもできる。
隊長になれば、今まで以上に自由に動き回ることもできるだろうし、弱者男性だった僕がリーダーになる機会なんて、これを逃せば二度とないことだろう。
「わかりました。やってみます」
その言葉を聞くと、メリザンドやアビゲイルは嬉しそうな顔をしてくれた。
「では、よろしくお願いします隊長!」
「メリィも、リューノのことを精一杯支えます!」
その言葉を聞いて、僕は彼らをとても頼もしく感じた。
「よろしく頼むよ、2人とも!」
ギルド長も満足そうに笑いながら僕に言った。
「リューノのパーティーは、第4部隊として活躍してもらおう。パーティー参加なら受付で斡旋できるクエストも増えるから、方針が決まったらソフィアと相談してみてくれ」
「ご期待に沿えるように努力します!」
そう答えると、メリィやアビィも右手で胸に手を当てて敬礼の姿勢を取った。
晴れてギルドへと入れたアビィだが、最初の問題はやはり彼女の部屋をどうするかということだ。元々が冒険者修行と出稼ぎだから、実家は側にはないだろうし、帰る家があるのなら一角獣がここまで案内することもないだろう。
「メリィ、彼女の部屋だけど……」
「それなら、私にお任せください!」
メリザンドの言う通りに後をついて行くと、彼女はいつも通りに僕たちが過ごしている木の前まで来た。
確かに現実的ではあるけど、ワンルームの部屋に3人はさすがに狭いような感じもするし、夜に僕たちが行っていることを考えると、アビゲイルに悪い気もした。
「ではあなた。私とアビィの手を取ってください」
「……こうかい?」
2人の手を握った状態で、メリザンドが木の中へと入ると、その先には見慣れた玄関があった。
3人で使うには狭いが、仕方ないかと思いながら部屋へと入ると……あれ? 廊下になっている。
「え……これって、もしかして!?」
「はい。3人で入ったので、部屋がほんの少しだけ拡張されているんです」
彼女はそう言いながらドアの1つを開けると、そこには初めて見る部屋があった。
部屋全てが木でできており、ランプが2つ下がっているという、中世ヨーロッパを思い浮かべる造りになっている。そして、キリスト教を思わせる十字架と、質素なベッドと、窓ガラスの代わりに雨戸だけの窓がある。
何だかファンタジーに出て来そうな部屋だと思っていたら、アビゲイルは懐かしそうに言った。
「故郷の……私の部屋と……同じ!」
彼女は不思議そうにメリザンドを見た。
「どういうことなのですか?」
「私の固有特殊能力……つまりアビリティは【霊樹の邸宅】。仲間が最も快適だと思う部屋を提供できるの」
どうやらアビリティというのは、神様から贈られるその人だけの特殊能力のようなモノで、どんな神様を後ろ盾にしているかで、得られる能力の種類や数に違いがあるようだ。
キリスト教を連想させる十字架がある……ということは、アビゲイルの能力は……
「もしかしてアビゲイルの能力って……治癒術だったりする?」
そう聞くと、彼女は表情を曇らせた。
「……どうしても、答えなければなりませんか?」
顔を赤らめながら言うと、僕は慌てて首を振った。
「個人的な興味で聞いただけだから、答えたくなければいいよ」
そう答えると、彼女はホッとしていた。
何やらうかつには立ち入っていけない感じがする。
【その後のアビゲイル】
アビゲイル
固有特殊能力1:エンジェルブースト
身長161センチメートル 体重52キログラム
本作のサブヒロイン。異世界の宗教ミリズス教を信仰している女の子。
一人前の有翼人の戦士となるために、修業を兼ねて中堅冒険者ギルドに在籍していたが、上司のセクハラによって強引に解雇され、成り行きでショートソードに身を寄せることになる。
能力エンジェルブーストを使うと霊力が大幅に上昇する。また、イラストの中で耳が尖っているときは気を高ぶらせているとき。普段は人間の耳をしている。
ちなみにミリズス教は一神教だが、キリスト教(プロテスタント)とギリシャ神話と仏教と神道を足して4で割ったような宗教である。
経験 C ★★★★
近接攻撃能力 C ★★★
中距離攻撃能力 B ★★★★
遠距離攻撃能力 B ★★★★★
物理防御力 C ★★
魔法防御力 B ★★★★★
スタミナ・体力 C ★★★★
素早さ B ★★★★★
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