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19.達成報酬と新たな仲間
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入浴を終えて休憩室に戻ると、まだメリザンドは待機していた。
やはり冒険者世界は男尊女卑の考えが根強いため、メリィも気を遣って僕たちを先に入浴させたのだろう。
「気を遣わせてしまってすまないね」
「いいえ。先に入って頂いた方がゆっくりできますので……」
彼女はそう言いながら、どこかルンルンとした様子でギルドの露天風呂へと向かった。普段一緒にいるアパートではシャワーくらいしか浴びられないから、今日くらいはゆっくりと身体の疲れを取って欲しい。
「ちょうどいいところにいたね、リューノ君……」
そう呼び止めたのはギルド長だった。
彼は、すでに他のパーティーメンバーの取り分を決めており、僕の分も割り振っていた。
どうやら、僕の取り分はハンターの男性と同じ金額だった。新人なのに彼と同じ金額なのは、スライムの捕獲で一役買ったからだという。
というか……メリィはともかく、僕が貰えることに驚いた。
こういう中世世界となると、有力者に上前を全てはねられて、末端の戦士や新人の手元には雀の涙さえも残らないなんてことがザラにあると思ったからだ。
「ギルド長や隊長の役職の人が2割しか取らないなんて珍しいよな。普通は3割……酷いときは半分くらい持って行くこともあるんだぜ?」
ハンターの男性が言うと、ヒョウ族の双剣士も頷いた。
「本当に末端の戦士って、ぞんざいに扱われるもんな」
やはり、彼らから話を聞くと、新人や末端の戦士はほとんど謝礼は貰えないらしい。
それでも、隊長やギルド長について行くのは、スキルアップのためだったり、休日中に内職代わりに個人や少人数のチームメイトとクエストを受けることを黙認してくれるからだという。
メリザンドが風呂から出ると、僕たちは木の中にあるアパートへと戻ることにした。
「今日も1日お疲れ様」
そう労うと、メリィは少し疲れた表情をしていたけれど、微笑んでくれた。
「色々なことがあって大変でしたね……だけど、前にあなたの仰っていた通り、クレバスを直に見れたのが何よりもの収穫だと思います」
僕は彼女の肩口を見ると、少し心配になった。
「ところで、吸血鬼に噛まれた場所……なにか異常を感じたりはするかい?」
質問をすると、メリザンドは自分の肩にそっと手を触れた。
「……特にこれと言って問題はありません」
「それは良かった!」
僕がメリザンドと、お互いの生存を喜び合っているとき、冒険者街のあるギルドでは、ある少女が冒険者から性的な嫌がらせを受けていた。
性的な嫌がらせと言っても、尻を触られたり、女と言えばお茶くみ……のような、ふた昔前の日本で見られたようなステレオタイプのセクハラではない。
部隊の成功報酬を分けて欲しければ、俺と付き合えと部隊長から言われるようなレベルである。ちなみにその隊長にはすでに妻と子もいて、付き合えば不倫の関係になるような状況だ。
「お断りします!」
その少女が答えると、隊長は言った。
「じゃあ、テメーはクビだ! 今すぐに寮からも出て行きやがれ!」
「……今まで、お世話になりました」
当然のことながら、この中世のような世界に労働者を守るような法律も、労働組合もない。
ギルドの上層部や、警察の代わりにいる兵士たちに掛け合っても、クビになるようなことをしたお前が悪いと言われて終了なのだ。
冒険者社会というのは、モラハラ男の凶暴さと粗暴さを濃縮したような世界と先輩たちも言っていたが……こういう話を聞くと、本当にその通りだと思う。
その少女は、まもなくつまみ出されると、今にも泣きそうな顔をしながら夜の冒険者街を歩いていた。当然のことながら、彼女に救いの手を差し伸べるようなギルドも冒険者もいない。
その足取りのまま、冒険者街の外れまで来たとき、森の藪が動き……中から何かが現れた。
「……えっ!? な、なに……?」
姿を現したのはなんと一角獣だった。黒い毛並みをした一角獣は青々とした角を光らせながら少女に声をかける。
『キュウーン、ググググググ……』
これは野生のボス馬が、群れからはぐれそうになっているメスに対して使う鳴き声である。
人間の言葉に直すと、こらこらどこに行くんだ? ここから先に行くと食べられちゃうぞ。と言ったところだろうか。
その少女は瞳に涙をためると、やがて身体を震わせて泣きはじめた。
すると、その一角獣はそっと寄り添い、少し落ち着くのを待ってから彼女を案内していく。
なぜ、こんな話を僕がしているのかといえば、その少女と一角獣のやり取りをテレビ越しに眺めていたからだ。
2人で頷くと、木の外へと出て……そこで僕たちは一角獣や少女と対面した。
少女は画面で見た通り、有翼人だった。
一角獣は僕たちの姿を見ると、少女に優しく声をかけてからゆっくりと立ち去っていく。ここまでお膳立てしたのだから、あとは自分で何とかしろということなのだろう。
僕としては一角獣とも話をしたかったのだが、彼は遠目で見ているだけで、僕たちが対応している間に帰ってしまっていた。
【有翼人の少女】
やはり冒険者世界は男尊女卑の考えが根強いため、メリィも気を遣って僕たちを先に入浴させたのだろう。
「気を遣わせてしまってすまないね」
「いいえ。先に入って頂いた方がゆっくりできますので……」
彼女はそう言いながら、どこかルンルンとした様子でギルドの露天風呂へと向かった。普段一緒にいるアパートではシャワーくらいしか浴びられないから、今日くらいはゆっくりと身体の疲れを取って欲しい。
「ちょうどいいところにいたね、リューノ君……」
そう呼び止めたのはギルド長だった。
彼は、すでに他のパーティーメンバーの取り分を決めており、僕の分も割り振っていた。
どうやら、僕の取り分はハンターの男性と同じ金額だった。新人なのに彼と同じ金額なのは、スライムの捕獲で一役買ったからだという。
というか……メリィはともかく、僕が貰えることに驚いた。
こういう中世世界となると、有力者に上前を全てはねられて、末端の戦士や新人の手元には雀の涙さえも残らないなんてことがザラにあると思ったからだ。
「ギルド長や隊長の役職の人が2割しか取らないなんて珍しいよな。普通は3割……酷いときは半分くらい持って行くこともあるんだぜ?」
ハンターの男性が言うと、ヒョウ族の双剣士も頷いた。
「本当に末端の戦士って、ぞんざいに扱われるもんな」
やはり、彼らから話を聞くと、新人や末端の戦士はほとんど謝礼は貰えないらしい。
それでも、隊長やギルド長について行くのは、スキルアップのためだったり、休日中に内職代わりに個人や少人数のチームメイトとクエストを受けることを黙認してくれるからだという。
メリザンドが風呂から出ると、僕たちは木の中にあるアパートへと戻ることにした。
「今日も1日お疲れ様」
そう労うと、メリィは少し疲れた表情をしていたけれど、微笑んでくれた。
「色々なことがあって大変でしたね……だけど、前にあなたの仰っていた通り、クレバスを直に見れたのが何よりもの収穫だと思います」
僕は彼女の肩口を見ると、少し心配になった。
「ところで、吸血鬼に噛まれた場所……なにか異常を感じたりはするかい?」
質問をすると、メリザンドは自分の肩にそっと手を触れた。
「……特にこれと言って問題はありません」
「それは良かった!」
僕がメリザンドと、お互いの生存を喜び合っているとき、冒険者街のあるギルドでは、ある少女が冒険者から性的な嫌がらせを受けていた。
性的な嫌がらせと言っても、尻を触られたり、女と言えばお茶くみ……のような、ふた昔前の日本で見られたようなステレオタイプのセクハラではない。
部隊の成功報酬を分けて欲しければ、俺と付き合えと部隊長から言われるようなレベルである。ちなみにその隊長にはすでに妻と子もいて、付き合えば不倫の関係になるような状況だ。
「お断りします!」
その少女が答えると、隊長は言った。
「じゃあ、テメーはクビだ! 今すぐに寮からも出て行きやがれ!」
「……今まで、お世話になりました」
当然のことながら、この中世のような世界に労働者を守るような法律も、労働組合もない。
ギルドの上層部や、警察の代わりにいる兵士たちに掛け合っても、クビになるようなことをしたお前が悪いと言われて終了なのだ。
冒険者社会というのは、モラハラ男の凶暴さと粗暴さを濃縮したような世界と先輩たちも言っていたが……こういう話を聞くと、本当にその通りだと思う。
その少女は、まもなくつまみ出されると、今にも泣きそうな顔をしながら夜の冒険者街を歩いていた。当然のことながら、彼女に救いの手を差し伸べるようなギルドも冒険者もいない。
その足取りのまま、冒険者街の外れまで来たとき、森の藪が動き……中から何かが現れた。
「……えっ!? な、なに……?」
姿を現したのはなんと一角獣だった。黒い毛並みをした一角獣は青々とした角を光らせながら少女に声をかける。
『キュウーン、ググググググ……』
これは野生のボス馬が、群れからはぐれそうになっているメスに対して使う鳴き声である。
人間の言葉に直すと、こらこらどこに行くんだ? ここから先に行くと食べられちゃうぞ。と言ったところだろうか。
その少女は瞳に涙をためると、やがて身体を震わせて泣きはじめた。
すると、その一角獣はそっと寄り添い、少し落ち着くのを待ってから彼女を案内していく。
なぜ、こんな話を僕がしているのかといえば、その少女と一角獣のやり取りをテレビ越しに眺めていたからだ。
2人で頷くと、木の外へと出て……そこで僕たちは一角獣や少女と対面した。
少女は画面で見た通り、有翼人だった。
一角獣は僕たちの姿を見ると、少女に優しく声をかけてからゆっくりと立ち去っていく。ここまでお膳立てしたのだから、あとは自分で何とかしろということなのだろう。
僕としては一角獣とも話をしたかったのだが、彼は遠目で見ているだけで、僕たちが対応している間に帰ってしまっていた。
【有翼人の少女】
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