ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ

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18.ギルドへの帰路

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 残る最後の目的であるレッドスライムだったが、その周囲を少し探索すれば向こうから現れてくれた。
「おい、来たぞ……リューノ君!」
「任せてください!」

 僕はあえて冬虫夏草ならぬ冬獣夏草の入った袋を振ると、レッドスライムは這いながらこちらに向かってきた。レッドスライムは、ギルド長やメリザンドの炎魔法さえモノともせずに向かってきたが、想定内だ。

 レッドスライムが足元まで来たところで、僕は手を近づけて至近距離から電撃を放った。
 さすがにグリーンスライムよりも強力で、1撃では倒せなかったが、逃げようとしたところで更に1発を浴びせると、レッドスライムも気絶したと見えて動かなくなった。

「あのレッドスライムが……たったの2発かよ……」
「雷系の魔法って……本当にスライムキラーだよな」
 オオカミ族の戦士と、ヒョウ族の戦士が青い顔をしながら言っていると、ギルド長はビンを出しながら言った。
「気を抜くのはスライムをビンに詰めてからにしてくれ。死んだふりをしていることや、仲間が来ることもある」
「わ、わかりました!」


 レッドスライムをビンに入れると、ギルド長は少しだけ安心した様子でフタを閉めた。
 これで、光ゴケとレッドスライムと冬獣夏草の全てを収集することができた。
「では、急がずに戻ろう。焦ったり気を緩めることがないようにな?」
「はい!」

 再び隊列を組み直すと、ヒョウ族の双剣士は表情を引き締めた。
 彼の担当する最後尾というポジションは、帰りこそ本番だ。忍び寄られたモンスターから攻撃を受けることも多いと、ギルド長も話していた。


 僕らは、辺りを警戒しながら来た道を引き返していく。
 歩みを進めるごとに、少しずつ瘴気も弱まっていくが、まだ気を抜いていい状況ではない。

 先輩たちが霊力を弱めたのは、木の葉が緑色になって瘴気もほとんど感じなくなってからだった。
「このあたりで休憩しよう」

 休憩と言っても、座っていいワケではなく、立ったまま水分補給をするだけだ。
 それでも、最後尾でずっと気を張っていたヒョウ族の双剣士は汗を拭いながら、大きく深呼吸をしている。

 その様子を見ていたギルド長も、彼の様子をしばらく見てから移動を再開した。
 もう少しコンディションが悪かったら、別の人と交代もあり得たのかもしれない。


 この後も、とくに問題は起こらずに、僕たちは冒険者街までたどり着いた。
「……あの妙な視線も、さすがに感じなくなりなりましたね」
 ハンターの男性が言うと、最後尾をずっと守っていたヒョウ族の双剣士も頷いた。
「正直言って、何をする訳でもなく監視してきたから、かなり不気味だった。一体……あれは何だろうな?」

 ギルド長も、森を眺めながら言った。
「わからんが、とりあえず全員が無事でよかった」
「ギルドに戻りましょう!」


 事務所へと戻ると、受付嬢ソフィアはとても安心した様子で僕たちを出迎えてくれた。
「お帰りなさい皆さん!」
「ただいま。注文通り……全てのモノを揃えてきた」
「すぐに、マーズロッドのミラさんに伝えてきます!」

 ギルドへと戻ると、パーティーメンバーたちは安堵したらしく、壁に寄りかかったり、椅子に座ってくつろいでいた。
 その様子を見た、ヒョウ族の双剣士は彼らを注意する。
「こらこら、我々は瘴気の濃い場所から戻ったばかりだぞ! 衣服を脱いで、身体もきれいに洗う前にギルドのモノに触っちゃダメだろう!!」


 その言葉を聞いて、僕もシャキッとしていた。
 それはそうだ。僕たちはこの世の地獄のすぐそばまで行ってきたんだ。あそこには、どんな病原体が潜んでいるかわからない。

 ギルド長も言った。
「検品の立会は私がやっておくから、お前たちは早く身体を洗ってこい。特にリューノは衣服を処分した方がいいこもしれない」

 確かにそうだ。
 僕は一度、スライムに呑まれかけている。何でも吸い込んで栄養にするスライムの粘液に絡め取られたのだから、この山賊の服ともお別れしないといけない。


 まもなく僕は、山賊の服を残らず処分すると、ギルドの風呂へと行き、まずは灰を使って身体をきれいに洗い流した。

 その様子を見ていた先輩たちも、僕の入浴を許可してくれたので、やっと湯船に浸かることができる。
「いきなりスライム付けなんて、新入りもついてないな」
「逆に言えば、運が良かったと思います」
「ああ、普通ならああなっちまったら、まず助からないからな」
 やはり、雷の能力に目覚めたのは、幸いなことだったようだ。


 先輩の1人である、オオカミ族の戦士は言った。
「でもまあ、お前さん……なかなか優秀で助かるよ。もしかしたら、固定メンバーに選ばれるかもな」
 その話を聞いていたハンターの男性も頷いた。
「あの活躍ならあり得るな……そのまま、他のギルドから声がかかってトントン拍子に出世するかも!」
「まさか~!」

 その会話を聞いていた、ヒョウ族の双剣士も少しだけ意地悪な顔で言った。
「ちなみに、冒険者には同性愛者も多いから、気を付けろよ」

 その場では、笑って聞き流したが、よくよく考えると、けっこう怖いことを言われていたことが理解できた。

【ヒョウ族の双剣士】
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