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15.クレバスへの挑戦
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クレバスへの出発当日。
僕とメリザンドが事務所へと行くと、ギルド長の姿がすでにあった。
「おはようございます!」
「おはよう。今日は我々以外にあと3人来る予定だ」
このギルドには、僕らを含めて17人のギルドメンバーがいる。
その中でも、ギルド長が率いる第1部隊は、他の2部隊よりも実力があると聞いている。
「お待たせしました」
姿を見せたのは3人とも男性で、年齢が他の部隊の一般隊員よりも高いようだ。それに……身体から流れ出ている霊力の量や質が、他の部隊員とは違う。
さすがに隊長をしていた黒人戦士やオオカミ族の戦士ほどではないが、それよりも少し劣るというくらいの力がありそうだ。
「じゃあ、隊列を組んで進むぞ。リューノは私の後ろ、メリィはリューノの後ろに付いてくれ」
「わかりました」
それぞれがどんなポジションなのかは、並び順を見ればおおよそ見当がついた。
先頭に立つのはオオカミ族の戦士。とはいっても、昨日いた隊長ではなく、その弟という感じの男性だ。
彼は要するに斥候役。オオカミ族は鼻が利くため適任だろう。
2番目に立つのがギルド長。第1部隊でも他に類を見ない強さを持っている。
恐らく司令塔をしつつ、敵と交戦するポジションだ。
3番目が僕。この安全な位置取りは、要するに新人研修席と言ったところか。
ただ、真ん中だけあって、側面攻撃を受けた際は真っ先に反応しないといけない。
4番目がメリザンド。僕と同じく新人研修席2。
しかし、ここは魔法使いを配置する場所でもある。特に挟み撃ちを受けた場合は、彼女の手腕1つで受ける被害が変わるだろう。
5番目が弓使いの男性。飛び道具が専門だろうけど、よく見ると腰にはナイフも下げている。
敵が正面から襲ってきたときは弓矢でけん制し、バッグアタックをかけられたらナイフで交戦するポジションだ。状況に応じた対応を求められる難しさがある。
最後尾……つまりしんがりがヒョウ族の男性。彼は短剣を2本使って戦うタイプのようだ。
一見安全そうに見えて、実は一番危険な場所が最後尾だ。前方や側面から敵が襲ってきた際も、的確な判断をしなければならないので、実質的に2番手と言える戦士を配置している。
「では、行くぞ……」
「はい!」
パーティーはまず、僕たちが薬草収集をしている森へと入った。
どうやら、この森はクレバスの入り口というのか、クレバスの外側に広がるシロモノらしく、ここを真っ直ぐに進んでいくとクレバスにたどり着くようだ。
ちなみにクレバスには、3つの目的で向かっている。
まずは、冬獣夏草という冬眠中の獣を捕食するキノコを手に入れること。これが1つ目のクエストだ。なんでもこのキノコは、栄養価が高く病気に効くようだ。
次に、ヒカリゴケという暗闇とある光を当てると光を放つコケを手に入れること。これは魔法素材として需要があるシロモノのようだ。
3番目に、レッドスライムを手に入れること。スライムと聞くとザコモンスターを連想することが多いが、この世界では強敵のようだ。何せ物理攻撃がほぼ効かず、魔法で倒すしかないらしい。
「それにしても……進みやすいな」
オオカミ族の戦士が言うと、隊長であるギルド長も頷いた。
「ああ、エルフがいるおかげで……草木が勝手に道を作ってくれている」
「これは、1日で30株も薬草が採れたのも頷けるな」
メリザンドの能力の恩恵を受けた僕たちは、予定よりも早く最初の関門へと到達した。
それは、紫の森と言われる場所である。
「マックスギルド長……」
「どうしたのかな、メリィ?」
「植物の様子がおかしいのですし、瘴気の濃度も上がってきましたが……もしかして?」
その言葉を聞いたギルド長は「鋭いな……」と呟くと言った。
「そろそろ通称2階層と言われる、紫の森に入る。全員……今以上に気を付けてくれ」
「はい!」
どうやらクレバスからは風に乗って多量の瘴気が運ばれてきているので、徐々に植物の色が紫色に変色しはじめるようだ。
この森の厄介なところは、いきなり紫になることじゃなく、徐々に紫に変わっていくため、気が付いたら紫の森に踏み込んでいるところにある。
周囲の木々の葉っぱが紫色に変わったとき、僕の身体にも変化があった。
なんと体中の毛穴が逆立ち、更に霊力が体の周囲に膜のような光を放っている。
「な……なんだこれ!?」
そう呟くと、全員が歩みを止めた。
最初に解説してくれたのはギルド長のマックスだった。
「それは一種の防御反応だ、クレバスの瘴気から身を守るために霊力が反応しているんだ」
「それだけスムーズに防御に移行できるんだから、リューノはセンスがあるな!」
ヒョウ族の戦士が言うと、ハンターも頷いた。
「ああ、そこの弟君は、これがなかなか発動しなくて苦労したんだ」
「む、昔の話っすよ……先輩たち!」
どうやら、オオカミ族の通称弟君は、この中では僕たちの次に新参者のようだ。
「これがきちんと発動しないと、幻覚を見たり病気になったりする。全員……身体を鳴らすために20分ほど休憩を取るぞ」
「はい!」
【ギルド長のマックス】
僕とメリザンドが事務所へと行くと、ギルド長の姿がすでにあった。
「おはようございます!」
「おはよう。今日は我々以外にあと3人来る予定だ」
このギルドには、僕らを含めて17人のギルドメンバーがいる。
その中でも、ギルド長が率いる第1部隊は、他の2部隊よりも実力があると聞いている。
「お待たせしました」
姿を見せたのは3人とも男性で、年齢が他の部隊の一般隊員よりも高いようだ。それに……身体から流れ出ている霊力の量や質が、他の部隊員とは違う。
さすがに隊長をしていた黒人戦士やオオカミ族の戦士ほどではないが、それよりも少し劣るというくらいの力がありそうだ。
「じゃあ、隊列を組んで進むぞ。リューノは私の後ろ、メリィはリューノの後ろに付いてくれ」
「わかりました」
それぞれがどんなポジションなのかは、並び順を見ればおおよそ見当がついた。
先頭に立つのはオオカミ族の戦士。とはいっても、昨日いた隊長ではなく、その弟という感じの男性だ。
彼は要するに斥候役。オオカミ族は鼻が利くため適任だろう。
2番目に立つのがギルド長。第1部隊でも他に類を見ない強さを持っている。
恐らく司令塔をしつつ、敵と交戦するポジションだ。
3番目が僕。この安全な位置取りは、要するに新人研修席と言ったところか。
ただ、真ん中だけあって、側面攻撃を受けた際は真っ先に反応しないといけない。
4番目がメリザンド。僕と同じく新人研修席2。
しかし、ここは魔法使いを配置する場所でもある。特に挟み撃ちを受けた場合は、彼女の手腕1つで受ける被害が変わるだろう。
5番目が弓使いの男性。飛び道具が専門だろうけど、よく見ると腰にはナイフも下げている。
敵が正面から襲ってきたときは弓矢でけん制し、バッグアタックをかけられたらナイフで交戦するポジションだ。状況に応じた対応を求められる難しさがある。
最後尾……つまりしんがりがヒョウ族の男性。彼は短剣を2本使って戦うタイプのようだ。
一見安全そうに見えて、実は一番危険な場所が最後尾だ。前方や側面から敵が襲ってきた際も、的確な判断をしなければならないので、実質的に2番手と言える戦士を配置している。
「では、行くぞ……」
「はい!」
パーティーはまず、僕たちが薬草収集をしている森へと入った。
どうやら、この森はクレバスの入り口というのか、クレバスの外側に広がるシロモノらしく、ここを真っ直ぐに進んでいくとクレバスにたどり着くようだ。
ちなみにクレバスには、3つの目的で向かっている。
まずは、冬獣夏草という冬眠中の獣を捕食するキノコを手に入れること。これが1つ目のクエストだ。なんでもこのキノコは、栄養価が高く病気に効くようだ。
次に、ヒカリゴケという暗闇とある光を当てると光を放つコケを手に入れること。これは魔法素材として需要があるシロモノのようだ。
3番目に、レッドスライムを手に入れること。スライムと聞くとザコモンスターを連想することが多いが、この世界では強敵のようだ。何せ物理攻撃がほぼ効かず、魔法で倒すしかないらしい。
「それにしても……進みやすいな」
オオカミ族の戦士が言うと、隊長であるギルド長も頷いた。
「ああ、エルフがいるおかげで……草木が勝手に道を作ってくれている」
「これは、1日で30株も薬草が採れたのも頷けるな」
メリザンドの能力の恩恵を受けた僕たちは、予定よりも早く最初の関門へと到達した。
それは、紫の森と言われる場所である。
「マックスギルド長……」
「どうしたのかな、メリィ?」
「植物の様子がおかしいのですし、瘴気の濃度も上がってきましたが……もしかして?」
その言葉を聞いたギルド長は「鋭いな……」と呟くと言った。
「そろそろ通称2階層と言われる、紫の森に入る。全員……今以上に気を付けてくれ」
「はい!」
どうやらクレバスからは風に乗って多量の瘴気が運ばれてきているので、徐々に植物の色が紫色に変色しはじめるようだ。
この森の厄介なところは、いきなり紫になることじゃなく、徐々に紫に変わっていくため、気が付いたら紫の森に踏み込んでいるところにある。
周囲の木々の葉っぱが紫色に変わったとき、僕の身体にも変化があった。
なんと体中の毛穴が逆立ち、更に霊力が体の周囲に膜のような光を放っている。
「な……なんだこれ!?」
そう呟くと、全員が歩みを止めた。
最初に解説してくれたのはギルド長のマックスだった。
「それは一種の防御反応だ、クレバスの瘴気から身を守るために霊力が反応しているんだ」
「それだけスムーズに防御に移行できるんだから、リューノはセンスがあるな!」
ヒョウ族の戦士が言うと、ハンターも頷いた。
「ああ、そこの弟君は、これがなかなか発動しなくて苦労したんだ」
「む、昔の話っすよ……先輩たち!」
どうやら、オオカミ族の通称弟君は、この中では僕たちの次に新参者のようだ。
「これがきちんと発動しないと、幻覚を見たり病気になったりする。全員……身体を鳴らすために20分ほど休憩を取るぞ」
「はい!」
【ギルド長のマックス】
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