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11.ゴブリンの夜討ち
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僕もメリザンドも眠っていたが、僕は何やら不穏な空気を感じて起きた。
そしてテレビ画面を見ると、そこには妙な影が複数映っていることに気が付いた。
「メリィ……メリィ?」
揺すり起こすと、彼女は目を半目開きしたまま、ブサイクな顔をしながら起き上がった。
「なに……か?」
「……これって、なんだい?」
テレビ画面を指さすと、メリザンドは目をぱっちりと開けて慌てて飛び起きた。
「ゴブリンです。数も多いですね」
「やはりそうか」
僕が山賊から奪った剣を持ち、動きやすい自分の服に着替えていると、メリィも普段着ているローブを身に纏ってから、再びテレビ画面を見ていた。
そこでは、ゴブリンが少しずつ這い寄りながら、なるべく音を立てないように柵に穴をあけている。
柵が壊れると、ゴブリンたちは次々とギルドの中へと乗り込んできた。
「…………」
「…………」
僕とメリィはお互いに頷くと、木のアパートの中から出た。
まずはメリィが霊力を右手へと集中させ、性質変化を用いて大地系の範囲攻撃魔法を放った。
その物音はギルド中に響き、次々と窓を開ける音や「ゴブリンだぞ!」という声も響いてくる。
ゴブリンたちも、僕たちのことは無警戒だったらしく、慌てた様子で数匹が向かってきた。
今度は僕が応戦する番だ。
僕は剣を構えると、最初に来たゴブリンを一刀両断にした。
続いて2匹目も突っ込んできたが、こっちは左ひじに霊力を集中して、ゴブリンが近づくタイミングで電気魔法を発動。電気の筋はまっすぐにゴブリンの身体を捉えて感電させた。
僕はその間に体勢を立て直すと、3匹目も剣で斬り伏せた。やはりあの御神籤で剣士の記憶に触れているせいか、こいつらの動きがよく見える。
残る4匹目と5匹目も応戦しようとしたが、こいつらはメリィが炎魔法で立て続けになぎ倒した。
「気を付けて……ゴブリンはまだまだいるはずです!」
「ああ!」
僕とメリィは背中合わせになりながら、ゴブリンたちの動きを睨んだ。
ゴブリンには別動隊もいたらしく、すぐに僕の目の前に来ると、今度は包囲するように隊列を組んだ。
だけど無駄だ。メリィには広範囲攻撃魔法がある。
そう思った直後に、何か影のようなものが近づいてくるのに気が付いた。
とっさに剣を上方向に上げると。木から飛び降りてきたゴブリンが、そのまま剣に刺さりながら着地にも失敗してのたうち回っている。
その行動を見た他のゴブリンたちも、これがチャンスと言わんばかりに僕に襲い掛かってきた。
どうする。雷系魔法で一掃するか?
いや、ダメだ……メリィが一番近くにいるから、この状況だと彼女を感電させてしまう。なら、どうすればいい。
そう思ったとき、僕の脳裏に【例の剣士の記憶】が蘇った。
敵が複数人で剣士を取り囲んだ時、彼は確か……
――剣舞 つむじ風!
念じると同時に、僕の周囲には風が吹き荒れ、僕の剣は風の援護を受けて回転速度を上げた。
そして、剣そのものもカマイタチを纏いながら、近づいてきたゴブリンたちを一斉に薙ぎ払っていく。
僕の目の前と側面にいたゴブリンが全滅したとき、メリィも自分の正面にいたゴブリンを炎魔法でなぎ倒していた。
「まだ、新手はいる!?」
メリィはそう言いながら耳を頼りに周囲を探っていた。
僕は彼女ほど耳は良くない。なら……目を強化するしかない。
意識を目に集中すると、弱い電気のようなモノが走り、僕の視界は昼間のようによく周りが見えるようになっていた。これはもしや……雷系魔法の一つではないだろうか。
辺りを睨んでいると、僕はハッとしていた。
何と受付嬢ソフィアが、ゴブリンに捕まって連れ去られようとしている。距離が離れすぎているし、雑音も多いからメリィの耳では察知できないようだ。
僕は近くに落ちているゴブリンのナイフを取ると、そこに霊力を注ぎ込んだ。
――ロウソクの斧でも構わない。ありったけ大きな音を……!
その僕の行動を見ていたメリィは、すぐに耳を塞いだ。さすがに何も言わなくても察してくれたようだ。
僕は思い切り、ソフィアを連れ去ろうとしているゴブリンに向かってナイフを投げつけると、ナイフは山なりになりながら飛んでいき、地面に突き刺さると同時に爆竹の数倍の轟音を立てた。
その音に驚いたゴブリンたちは、次々とソフィアを放り投げて逃げ出し、僕たちが駆け寄るとソフィアは半泣きになりながら、メリィにすり寄っていた。
「残ったゴブリンをせん滅しよう。まだまだ油断できない!」
このゴブリンの襲撃は、ショートソード側に3人のけが人を出す程度の損失で済んだが、連中の狡猾さを知るには十分すぎた。
【ナイフを投げつける瞬間】
本名:東龍之介
固有特殊能力1:女神の御神籤
本作の主人公。雷系の精霊から加護を得ているため、雷系魔法を得意とする。
元居た世界では、給料も少ないうえに女性慣れもしていなかったため、結婚を諦めていたがそのことでコンプレックスを持っている。
初めての実戦経験や、ガチャの影響により能力が僅かながら強化された。
経験 C ★★
近接攻撃能力 C ★★★★
中距離攻撃能力 C ★★
遠距離攻撃能力 E
物理防御力 C ★★
魔法防御力 C ★★★
スタミナ・体力 C ★★
素早さ C ★★★
技量・要領良さ B ★★★★★
索敵能力 C ★★
そしてテレビ画面を見ると、そこには妙な影が複数映っていることに気が付いた。
「メリィ……メリィ?」
揺すり起こすと、彼女は目を半目開きしたまま、ブサイクな顔をしながら起き上がった。
「なに……か?」
「……これって、なんだい?」
テレビ画面を指さすと、メリザンドは目をぱっちりと開けて慌てて飛び起きた。
「ゴブリンです。数も多いですね」
「やはりそうか」
僕が山賊から奪った剣を持ち、動きやすい自分の服に着替えていると、メリィも普段着ているローブを身に纏ってから、再びテレビ画面を見ていた。
そこでは、ゴブリンが少しずつ這い寄りながら、なるべく音を立てないように柵に穴をあけている。
柵が壊れると、ゴブリンたちは次々とギルドの中へと乗り込んできた。
「…………」
「…………」
僕とメリィはお互いに頷くと、木のアパートの中から出た。
まずはメリィが霊力を右手へと集中させ、性質変化を用いて大地系の範囲攻撃魔法を放った。
その物音はギルド中に響き、次々と窓を開ける音や「ゴブリンだぞ!」という声も響いてくる。
ゴブリンたちも、僕たちのことは無警戒だったらしく、慌てた様子で数匹が向かってきた。
今度は僕が応戦する番だ。
僕は剣を構えると、最初に来たゴブリンを一刀両断にした。
続いて2匹目も突っ込んできたが、こっちは左ひじに霊力を集中して、ゴブリンが近づくタイミングで電気魔法を発動。電気の筋はまっすぐにゴブリンの身体を捉えて感電させた。
僕はその間に体勢を立て直すと、3匹目も剣で斬り伏せた。やはりあの御神籤で剣士の記憶に触れているせいか、こいつらの動きがよく見える。
残る4匹目と5匹目も応戦しようとしたが、こいつらはメリィが炎魔法で立て続けになぎ倒した。
「気を付けて……ゴブリンはまだまだいるはずです!」
「ああ!」
僕とメリィは背中合わせになりながら、ゴブリンたちの動きを睨んだ。
ゴブリンには別動隊もいたらしく、すぐに僕の目の前に来ると、今度は包囲するように隊列を組んだ。
だけど無駄だ。メリィには広範囲攻撃魔法がある。
そう思った直後に、何か影のようなものが近づいてくるのに気が付いた。
とっさに剣を上方向に上げると。木から飛び降りてきたゴブリンが、そのまま剣に刺さりながら着地にも失敗してのたうち回っている。
その行動を見た他のゴブリンたちも、これがチャンスと言わんばかりに僕に襲い掛かってきた。
どうする。雷系魔法で一掃するか?
いや、ダメだ……メリィが一番近くにいるから、この状況だと彼女を感電させてしまう。なら、どうすればいい。
そう思ったとき、僕の脳裏に【例の剣士の記憶】が蘇った。
敵が複数人で剣士を取り囲んだ時、彼は確か……
――剣舞 つむじ風!
念じると同時に、僕の周囲には風が吹き荒れ、僕の剣は風の援護を受けて回転速度を上げた。
そして、剣そのものもカマイタチを纏いながら、近づいてきたゴブリンたちを一斉に薙ぎ払っていく。
僕の目の前と側面にいたゴブリンが全滅したとき、メリィも自分の正面にいたゴブリンを炎魔法でなぎ倒していた。
「まだ、新手はいる!?」
メリィはそう言いながら耳を頼りに周囲を探っていた。
僕は彼女ほど耳は良くない。なら……目を強化するしかない。
意識を目に集中すると、弱い電気のようなモノが走り、僕の視界は昼間のようによく周りが見えるようになっていた。これはもしや……雷系魔法の一つではないだろうか。
辺りを睨んでいると、僕はハッとしていた。
何と受付嬢ソフィアが、ゴブリンに捕まって連れ去られようとしている。距離が離れすぎているし、雑音も多いからメリィの耳では察知できないようだ。
僕は近くに落ちているゴブリンのナイフを取ると、そこに霊力を注ぎ込んだ。
――ロウソクの斧でも構わない。ありったけ大きな音を……!
その僕の行動を見ていたメリィは、すぐに耳を塞いだ。さすがに何も言わなくても察してくれたようだ。
僕は思い切り、ソフィアを連れ去ろうとしているゴブリンに向かってナイフを投げつけると、ナイフは山なりになりながら飛んでいき、地面に突き刺さると同時に爆竹の数倍の轟音を立てた。
その音に驚いたゴブリンたちは、次々とソフィアを放り投げて逃げ出し、僕たちが駆け寄るとソフィアは半泣きになりながら、メリィにすり寄っていた。
「残ったゴブリンをせん滅しよう。まだまだ油断できない!」
このゴブリンの襲撃は、ショートソード側に3人のけが人を出す程度の損失で済んだが、連中の狡猾さを知るには十分すぎた。
【ナイフを投げつける瞬間】
本名:東龍之介
固有特殊能力1:女神の御神籤
本作の主人公。雷系の精霊から加護を得ているため、雷系魔法を得意とする。
元居た世界では、給料も少ないうえに女性慣れもしていなかったため、結婚を諦めていたがそのことでコンプレックスを持っている。
初めての実戦経験や、ガチャの影響により能力が僅かながら強化された。
経験 C ★★
近接攻撃能力 C ★★★★
中距離攻撃能力 C ★★
遠距離攻撃能力 E
物理防御力 C ★★
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