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10.静かなひと時
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冒険者ギルド【ショートソード】に戻ると、受付嬢ソフィアが出迎えてくれた。
「お帰りなさい」
「ケレス草を持ってきたよ」
袋を差し出すと、ソフィアは中に入ったケレス草を1つ1つチェックしはじめた。
大地の精霊の力を借りて、株をたくさん増やしたと言っても、やはり株によっては小さいものもあり、きちんと1としてカウントしてもらえるかは不安だった。
一番小さな株を見ても、ソフィアは頷いたのでホッとした。
「十分な品質ですね。1日で全部集めたということは、群生している場所を見つけたのですか?」
「まばらに生えていたからね。メリィの力が無ければこうはいかなかったよ」
「今回はギルド内の依頼なので、即金でお支払いできます」
彼女はそういうと、僕たちに大銀貨1枚と小銀貨5枚を支払ってくれた。
「ところで、お二人は部屋の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。ちょうどいいねぐらを見つけましたから」
「そうですか。ではお気をつけて」
事務所を出ると、僕たちはギルドの中庭へと向かった。
ここは修練場にも近いので、朝や昼にはギルド員が稽古をしていることもあるらしいが、今は夕方なので誰もいなくなっている。
「じゃあ、お願いするよメリィ」
「はい!」
彼女が手を触れると、目の前の木の幹は歪んでいき、まずはメリィが……そして手を繋いでいる僕も木の中へと入った。
木の中は、僕が暮らしていたアパートになっており、何だか我が家に帰って来れたことにホッとしてしまう。
「とりあえず、お疲れ様……先にシャワーを浴びてきて。今のうちにご飯のセットとかしておくから」
そう伝えると、メリィは申し訳なさそうな顔をした。
「いつもご飯の支度をさせてしまって申し訳ありません。何かお役に立てることがあれば……」
「役なら仕事中に幾らでも立ったじゃないか。家の中にいるときくらいは休んでくれ」
そう伝えると、メリィは頬を赤らめながら嬉しそうに「はい……」と答えた。もしかしたら、家事全般の仕事は自分がやるべきことを思っているのかもしれない。
間もなくメリィが浴室に入ったので、僕はご飯をセットしたり、メリィが困らないように足ふきマットや、タオルなどを浴室の前に置いておいた。
そうだ。念のために周囲を警戒するためにもテレビはつけておこう。
テレビを付けると、見事な夕焼け空と帰り支度を進める農民の姿などが見えた。
ああ、そう言えばせっかく野菜を作っている人たちもいるんだから、ここに来る前に買っておけばよかった。明日は家に戻る前にしっかりと覚えていく。
少し様子を眺めていると、メリィが浴室から出てくる音が聞こえてきた。
「お待たせしました」
「ああ……」
そう言いながら振り返ると、彼女は濡れた髪を拭きながら僕の側に腰を下ろした。
普段から彼女は美人だけど、濡髪になるとより魅力が強調される。シャンプーやリンスの香りも彼女自身の匂いを引き立てて、このまま抱き寄せたくなる気分になる。
「ごはんが炊けるまで、もう少しかかるから、僕もシャワーを浴びてくるよ」
「わかりました」
そしてシャワーを浴びてから部屋へと戻ると、メリィはボールに野草を千切っては入れてサラダを作っていた。
「待たせたね……って、どこから持ってきたの、それ!?」
「修行しているときに、食べられる草を幾つか見つけたので、リューノがシャワーを浴びている間に増やしておきました」
横から見てみると、店で売っていそうな新鮮な葉物野菜がボールに入っていた。
これは、アレを入れるしかない。
「ちょっと待ってて。ちょうどいいモノがあるんだ」
僕はそういうと冷蔵庫から、ハムを出して包丁で細切りにすると、メリィの作っていたサラダに入れて混ぜ合わせた。更にドレッシングを2種類くらい用意すればカンペキだ。
一緒に食べると、メリィは驚いた様子でサラダやご飯を食べていた。
「す、凄いですね……肉だけでなく調味料までお持ちなんて!」
「あるモノは使わないとね」
食事が済むと、僕たちは片付けや歯磨きなどの身支度を整えて、早めに就寝することにした。
まだテレビの向こう側では、ギルド員や村人たちも起きて一杯やったりしているが、明日も修業したりギルドの評価を上げるには、早起きする必要がありそうだ。
電気を消そうとしたとき、メリィは思い出した様子で言った。
「そういえばあなた……」
「どうしたんだい?」
「女神さまのガチャというもので当てたアイテム……金貨や銀貨もありましたが、回収はしないのですか?」
「ああ、あれはあえてそのままにしておくよ。もし、お金を紛失してしまうことがあっても、女神さまに預けておけば安心だからね」
念のため、アイテムの回収に関して女神に聞いているが、特に期限はないと聞いている。向こうが善意を持ってくれているのなら、こちらも甘えて活用させてもらいたい。
「そろそろ電気を消してもいいかい?」
「大丈夫ですよ」
実はこのとき、テレビのモニターはほんの僅かな影を映していたのだが、僕もメリィも気づいてはいなかった。
【眠そうなメリザンド】
「お帰りなさい」
「ケレス草を持ってきたよ」
袋を差し出すと、ソフィアは中に入ったケレス草を1つ1つチェックしはじめた。
大地の精霊の力を借りて、株をたくさん増やしたと言っても、やはり株によっては小さいものもあり、きちんと1としてカウントしてもらえるかは不安だった。
一番小さな株を見ても、ソフィアは頷いたのでホッとした。
「十分な品質ですね。1日で全部集めたということは、群生している場所を見つけたのですか?」
「まばらに生えていたからね。メリィの力が無ければこうはいかなかったよ」
「今回はギルド内の依頼なので、即金でお支払いできます」
彼女はそういうと、僕たちに大銀貨1枚と小銀貨5枚を支払ってくれた。
「ところで、お二人は部屋の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。ちょうどいいねぐらを見つけましたから」
「そうですか。ではお気をつけて」
事務所を出ると、僕たちはギルドの中庭へと向かった。
ここは修練場にも近いので、朝や昼にはギルド員が稽古をしていることもあるらしいが、今は夕方なので誰もいなくなっている。
「じゃあ、お願いするよメリィ」
「はい!」
彼女が手を触れると、目の前の木の幹は歪んでいき、まずはメリィが……そして手を繋いでいる僕も木の中へと入った。
木の中は、僕が暮らしていたアパートになっており、何だか我が家に帰って来れたことにホッとしてしまう。
「とりあえず、お疲れ様……先にシャワーを浴びてきて。今のうちにご飯のセットとかしておくから」
そう伝えると、メリィは申し訳なさそうな顔をした。
「いつもご飯の支度をさせてしまって申し訳ありません。何かお役に立てることがあれば……」
「役なら仕事中に幾らでも立ったじゃないか。家の中にいるときくらいは休んでくれ」
そう伝えると、メリィは頬を赤らめながら嬉しそうに「はい……」と答えた。もしかしたら、家事全般の仕事は自分がやるべきことを思っているのかもしれない。
間もなくメリィが浴室に入ったので、僕はご飯をセットしたり、メリィが困らないように足ふきマットや、タオルなどを浴室の前に置いておいた。
そうだ。念のために周囲を警戒するためにもテレビはつけておこう。
テレビを付けると、見事な夕焼け空と帰り支度を進める農民の姿などが見えた。
ああ、そう言えばせっかく野菜を作っている人たちもいるんだから、ここに来る前に買っておけばよかった。明日は家に戻る前にしっかりと覚えていく。
少し様子を眺めていると、メリィが浴室から出てくる音が聞こえてきた。
「お待たせしました」
「ああ……」
そう言いながら振り返ると、彼女は濡れた髪を拭きながら僕の側に腰を下ろした。
普段から彼女は美人だけど、濡髪になるとより魅力が強調される。シャンプーやリンスの香りも彼女自身の匂いを引き立てて、このまま抱き寄せたくなる気分になる。
「ごはんが炊けるまで、もう少しかかるから、僕もシャワーを浴びてくるよ」
「わかりました」
そしてシャワーを浴びてから部屋へと戻ると、メリィはボールに野草を千切っては入れてサラダを作っていた。
「待たせたね……って、どこから持ってきたの、それ!?」
「修行しているときに、食べられる草を幾つか見つけたので、リューノがシャワーを浴びている間に増やしておきました」
横から見てみると、店で売っていそうな新鮮な葉物野菜がボールに入っていた。
これは、アレを入れるしかない。
「ちょっと待ってて。ちょうどいいモノがあるんだ」
僕はそういうと冷蔵庫から、ハムを出して包丁で細切りにすると、メリィの作っていたサラダに入れて混ぜ合わせた。更にドレッシングを2種類くらい用意すればカンペキだ。
一緒に食べると、メリィは驚いた様子でサラダやご飯を食べていた。
「す、凄いですね……肉だけでなく調味料までお持ちなんて!」
「あるモノは使わないとね」
食事が済むと、僕たちは片付けや歯磨きなどの身支度を整えて、早めに就寝することにした。
まだテレビの向こう側では、ギルド員や村人たちも起きて一杯やったりしているが、明日も修業したりギルドの評価を上げるには、早起きする必要がありそうだ。
電気を消そうとしたとき、メリィは思い出した様子で言った。
「そういえばあなた……」
「どうしたんだい?」
「女神さまのガチャというもので当てたアイテム……金貨や銀貨もありましたが、回収はしないのですか?」
「ああ、あれはあえてそのままにしておくよ。もし、お金を紛失してしまうことがあっても、女神さまに預けておけば安心だからね」
念のため、アイテムの回収に関して女神に聞いているが、特に期限はないと聞いている。向こうが善意を持ってくれているのなら、こちらも甘えて活用させてもらいたい。
「そろそろ電気を消してもいいかい?」
「大丈夫ですよ」
実はこのとき、テレビのモニターはほんの僅かな影を映していたのだが、僕もメリィも気づいてはいなかった。
【眠そうなメリザンド】
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