2 / 43
2.エルフの少女との出逢い
しおりを挟む
こうして魂だけとなった僕は、女神の手の上に乗せられていた。
『では、今から異世界に行くわけですが……私から幾つか贈り物をしたいと思います』
「おお、もしかして……チート能力?」
そう聞き返すと、女神は苦笑しながら答えた。
『残念ながら、私のような下級神族では、アニメやライトノベルのような無双能力は授けられません』
彼女はそう言いながら、見覚えのある箱を差し出した。
「……これは?」
『貴方用に作った特製おみくじです。ゲームなどではガチャというモノがありますが、基本的にはあれと同じです。努力をすることで引けるようになります』
な、なるほど。努力をすればガチャれるのか。
何だか社畜の僕にはピッタリな能力に思えるぞ。
「ちなみに、僕が努力しまくってクジが無くなったら?」
『その都度、補充するようにしてありますので大丈夫ですよ』
そのガチャというか御神籤の箱を受け取ると、女神はにっこりと笑った。
『では東龍之介……異世界に行って、まずは良い奥さんを得なさい』
「は、はい……」
『これから行く世界では、我々は精霊という扱いになります……なので、精霊への信仰もぜひよろしくお願いします』
「わ、わかりました」
まあ、あれだけ悪口を言ったのだから、それくらいはしないと女神様に悪い気がする。
そんなことを考えていると、目の前が真っ白な光に包まれ、僕は目を瞑っていた。
――――――――
――――
――
―
そっと目を開けると、僕は何かを踏みつけていた。
周囲は昼間で、森の中にいるようだが、一体何を踏んでいるのだろう。
視線を下げると、僕は何と人間……それも山賊っぽい恰好をした男を踏みつぶしている。一体何だこれはと思ったとき、後ろから声が聞こえてきた。
「あの……貴方は?」
振り返ると、そこにはエルフの少女がいた。
しかし、彼女は後ろ手縛りにされ、連行されている最中という雰囲気だったのである。
僕は瞬間的に、踏みつぶしていた山賊から剣やナイフを取ると、少女を縛っていた縄を切った。
「ありがとうございます……」
お礼なんて聞いている場合ではない。
僕は更に山賊から、お金や上着などをはぎ取っていると、エルフの少女も負けじと山賊から白い衣服を奪い返していた。これはどうやら、ローブの上着のようなもののようだ。
「よし、コイツを縛り付けよう」
「手伝います。私を縛っていた縄を使ってください」
「うん!」
山賊を木に縛り付けると、僕は偶然助けたエルフの少女を見た。
少女の年齢は10代後半から、せいぜい20という感じだ。身長は少し高めで160~165。紫色の髪が美しく、耳を隠すためなのか白いフード付きのローブを被っている。
この長い耳なら、多くの物音を感じ取れる気がする。
「……近くにコイツの仲間は?」
「気配は遠いですが、早く離れた方がよさそうです」
「わかった。急ごう」
まだ状況はイマイチ呑み込めないが、急いでこの場を離れることにした。
エルフ少女の力なのか、彼女の側を歩いていると、下草や低木が勝手に動いて細い道ができていた。
周知を見渡すと、僕の背丈くらいの草木が生い茂っているので、僕一人では少し移動するだけでも、一苦労することがわかる。
「凄いね……これ、君の力なのかい?」
少女は照れながら答えた。
「は、はい。私たちエルフには……森渡りという特殊能力があります」
森渡りか……なんて思いながらエルフの少女の顔を間近で見ると、とても可愛かった。
顔立ちが整っているだけでなく、知性を感じさせる雰囲気と、男性を立てようと一方後ろを歩いている姿は、僕が大好きな大和撫子に通じるモノを感じる。
正直言って、今すぐに彼女にしたいレベルの女の子だけど、何の脈絡もなくそんなことをすればただのヘンタイだ。僕はなるべく気を落ち着かせながら答えた。
「……な、なるほど。森渡りなんだね……」
彼女はチラチラと僕を見ながら言った。
「先ほどは、助けて頂いてありがとうございます」
「いや、たまたまだよ……本当に足元にあの男がいただけだったから」
そのエルフの少女は、顔を少し赤らめている。
「それに、強い霊力をお持ちですね……」
霊力と聞いて、僕は自分の身体から流れているエネルギーのことだと察しがついた。隣を歩いているエルフの少女の方が強い霊力を持っているのだけど、そんな彼女からそう言ってもらえるのは嬉しい。
「あ、ありがとう……君こそ、凄く強い霊力だよね」
「私は……いいえ、ありがとうございます」
しばらく森の中を歩いていると、エルフの少女は僕を眺めてきた。
「ここまで距離が開けば大丈夫でしょう」
それはそうだと思った。いくら山賊たちでも、このうっそうとした森を自由に走り回ることはできないだろう。少し安心してから視線をエルフの少女に戻すと、彼女は真剣な顔をしていた。
「ところで、旅の方……お名前は何と?」
「東龍之介というよ」
その言葉を聞いたエルフの少女は、耳をピンとたてて頬を赤らめた。すると、彼女の白いローブまで桃色に変化していく。
一体、どうしたのだろう。
「そ、それは……あなたのフルネーム……でしょうか?」
「そ、そうだけど……」
エルフの少女は、顔を真っ赤にしたまま僕を見ている。
「なんて情熱的で……大胆な……」
「え……?」
そう聞き返すと、エルフの少女は真剣な表情で僕を見つめてきた。
「わかりました。このメリィ……喜んで、あなた様の妻になります!」
その言葉を聞いた僕は、ポカンとしたまま彼女を眺めていた。
もしかして、この世界って……フルネームを婚約者以外に言ってはいけない世界だったのか!?
【主人公が賊を潰した瞬間】
『では、今から異世界に行くわけですが……私から幾つか贈り物をしたいと思います』
「おお、もしかして……チート能力?」
そう聞き返すと、女神は苦笑しながら答えた。
『残念ながら、私のような下級神族では、アニメやライトノベルのような無双能力は授けられません』
彼女はそう言いながら、見覚えのある箱を差し出した。
「……これは?」
『貴方用に作った特製おみくじです。ゲームなどではガチャというモノがありますが、基本的にはあれと同じです。努力をすることで引けるようになります』
な、なるほど。努力をすればガチャれるのか。
何だか社畜の僕にはピッタリな能力に思えるぞ。
「ちなみに、僕が努力しまくってクジが無くなったら?」
『その都度、補充するようにしてありますので大丈夫ですよ』
そのガチャというか御神籤の箱を受け取ると、女神はにっこりと笑った。
『では東龍之介……異世界に行って、まずは良い奥さんを得なさい』
「は、はい……」
『これから行く世界では、我々は精霊という扱いになります……なので、精霊への信仰もぜひよろしくお願いします』
「わ、わかりました」
まあ、あれだけ悪口を言ったのだから、それくらいはしないと女神様に悪い気がする。
そんなことを考えていると、目の前が真っ白な光に包まれ、僕は目を瞑っていた。
――――――――
――――
――
―
そっと目を開けると、僕は何かを踏みつけていた。
周囲は昼間で、森の中にいるようだが、一体何を踏んでいるのだろう。
視線を下げると、僕は何と人間……それも山賊っぽい恰好をした男を踏みつぶしている。一体何だこれはと思ったとき、後ろから声が聞こえてきた。
「あの……貴方は?」
振り返ると、そこにはエルフの少女がいた。
しかし、彼女は後ろ手縛りにされ、連行されている最中という雰囲気だったのである。
僕は瞬間的に、踏みつぶしていた山賊から剣やナイフを取ると、少女を縛っていた縄を切った。
「ありがとうございます……」
お礼なんて聞いている場合ではない。
僕は更に山賊から、お金や上着などをはぎ取っていると、エルフの少女も負けじと山賊から白い衣服を奪い返していた。これはどうやら、ローブの上着のようなもののようだ。
「よし、コイツを縛り付けよう」
「手伝います。私を縛っていた縄を使ってください」
「うん!」
山賊を木に縛り付けると、僕は偶然助けたエルフの少女を見た。
少女の年齢は10代後半から、せいぜい20という感じだ。身長は少し高めで160~165。紫色の髪が美しく、耳を隠すためなのか白いフード付きのローブを被っている。
この長い耳なら、多くの物音を感じ取れる気がする。
「……近くにコイツの仲間は?」
「気配は遠いですが、早く離れた方がよさそうです」
「わかった。急ごう」
まだ状況はイマイチ呑み込めないが、急いでこの場を離れることにした。
エルフ少女の力なのか、彼女の側を歩いていると、下草や低木が勝手に動いて細い道ができていた。
周知を見渡すと、僕の背丈くらいの草木が生い茂っているので、僕一人では少し移動するだけでも、一苦労することがわかる。
「凄いね……これ、君の力なのかい?」
少女は照れながら答えた。
「は、はい。私たちエルフには……森渡りという特殊能力があります」
森渡りか……なんて思いながらエルフの少女の顔を間近で見ると、とても可愛かった。
顔立ちが整っているだけでなく、知性を感じさせる雰囲気と、男性を立てようと一方後ろを歩いている姿は、僕が大好きな大和撫子に通じるモノを感じる。
正直言って、今すぐに彼女にしたいレベルの女の子だけど、何の脈絡もなくそんなことをすればただのヘンタイだ。僕はなるべく気を落ち着かせながら答えた。
「……な、なるほど。森渡りなんだね……」
彼女はチラチラと僕を見ながら言った。
「先ほどは、助けて頂いてありがとうございます」
「いや、たまたまだよ……本当に足元にあの男がいただけだったから」
そのエルフの少女は、顔を少し赤らめている。
「それに、強い霊力をお持ちですね……」
霊力と聞いて、僕は自分の身体から流れているエネルギーのことだと察しがついた。隣を歩いているエルフの少女の方が強い霊力を持っているのだけど、そんな彼女からそう言ってもらえるのは嬉しい。
「あ、ありがとう……君こそ、凄く強い霊力だよね」
「私は……いいえ、ありがとうございます」
しばらく森の中を歩いていると、エルフの少女は僕を眺めてきた。
「ここまで距離が開けば大丈夫でしょう」
それはそうだと思った。いくら山賊たちでも、このうっそうとした森を自由に走り回ることはできないだろう。少し安心してから視線をエルフの少女に戻すと、彼女は真剣な顔をしていた。
「ところで、旅の方……お名前は何と?」
「東龍之介というよ」
その言葉を聞いたエルフの少女は、耳をピンとたてて頬を赤らめた。すると、彼女の白いローブまで桃色に変化していく。
一体、どうしたのだろう。
「そ、それは……あなたのフルネーム……でしょうか?」
「そ、そうだけど……」
エルフの少女は、顔を真っ赤にしたまま僕を見ている。
「なんて情熱的で……大胆な……」
「え……?」
そう聞き返すと、エルフの少女は真剣な表情で僕を見つめてきた。
「わかりました。このメリィ……喜んで、あなた様の妻になります!」
その言葉を聞いた僕は、ポカンとしたまま彼女を眺めていた。
もしかして、この世界って……フルネームを婚約者以外に言ってはいけない世界だったのか!?
【主人公が賊を潰した瞬間】
10
お気に入りに追加
831
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…


クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。


劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる