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2.令嬢の生活
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貴族令嬢の部屋には鏡があり、あたしは自分の姿を映してみた。
そこにはブロンドの髪の若い白人女性がいる。
日本人だった時のあたしも、けっこうな美しさだったけれど……この姿もなかなかアリな話だと思う。
しかも、年齢もあのウマの言った通り15歳くらいの少女にまで若返っているし、45歳の頃のあたしは、老いに逆らうような気持ちで、歳を取った方が女は魅力があると言い続けて来たけど……やっぱり女は若さが第一ね。
「お嬢様……」
振り返ると、そこにはメイドが立っていた。
やはり、貴族令嬢と言えば、それに仕える使用人たちよね。
「おはよう。どうしたの?」
「朝食の準備が整っております」
「頂こうかしら。持ってきて下さる?」
「畏まりました」
間もなくメイドたちは、パン、スープ、肉料理、デザートのフルーツといった御馳走を運んできてくれた。
フランス料理のように1つずつ持ってきて欲しいのだけど、まあ、これだけ豪華なのだから許すわ。
「では、拙くはありますが……今日も演奏させて頂きます」
「ええ、お願い」
メイドの1人は器用にハープを演奏してくれたから、あたしは朝食の時間を満喫できた。
本当に貴族令嬢の生活って……いいものね。しかもあたし……テーブルマナーを習ったこともなかったのに、特に意識しなくても出来てる。これもウマのビジネスとやらのサービスかしら。
ふふ……あのウマ、なかなか気が利くじゃない。
「…………」
だけど、一つだけ疑問も残るわね。
どうしてこんなに至れり尽くせりなのに、この貴族令嬢は自殺なんてしたのかしら。
食事が終わると、メイドはにっこりを笑いながら言った。
「お嬢様。先日の件は残念でしたが……お気を強くお持ちください」
彼女は冊子を出した。
「この国には皇太子さま以外にも……高貴な生まれの殿方は沢山います。我ら伯爵家に相応しいお相手を探して参りました」
その言葉を聞いてあたしは理解した。
どうやら、この伯爵令嬢とやらは、皇太子のことが好きだったんだけど、きっとふられてしまったのでしょう。本当にバカな女だと思うわ。こんな夢のような生活をしていたというのに。
「……とりあえず見せて」
「ははっ!」
冊子を開いてみると、伯爵家の長男や次男、侯爵家や子爵家の男たち、それ以外にもお金持ちの商人とか、騎士の男性とか、とても凛々しい人たちが揃っていた。
「決めたわ。この人に会いたい」
「こちらの方は、王家の縁戚に当たる方ですね……わかりました。すぐに手配します」
お見合いの話が決まると、次にメイドたちはあたしのお肌の手入れをしたり、マッサージをして血行を良くしてくれたりしている。
お貴族様だから当たり前なんだけど、なんだかとても優雅な気分。
これを日本にいたときにするとなれば、マッサージだけでも1万円近く取られるもんね。まだボンクラオヤジが生きていた時は、お小遣いも少ないけどもらっていたけど……アイツが死んでからは本当に久しぶりな気がする。
マッサージが終わると、メイドは言った。
「ではお嬢さま。健康のためにお庭を散歩しましょう」
「ええ、案内して」
この伯爵家のお屋敷は、お庭も手入れが行き届いていた。
様々な植物が植えられていて、御池には魚が泳いでいるし、木の枝には小鳥がさえずっている。
私は1時間ほどお散歩を楽しむと昼食を楽しんで、そこからはダンスのお稽古。更に竪琴の練習をしたら優雅な1日は終わった。
そして貴族令嬢の生活をして3日目。
メイドはお見合い用の冊子を持ってやってきた。
「お嬢様」
「なあに?」
「先日のお見合いの件ですが、ご子息様がお会いしたいと仰っています」
それはそうだろうと頷いていた。
なにせこれほど美しく、更に生まれも良いあたしが断られるはずないもの。
「わかったわ。わたくしもなるべく早くご子息様とお会いしたい」
「畏まりました」
そのメイドは、すぐに手配をして2日後に、こちらから出向くことになった。
男なんだからそっちが来なさいと思うけれど、向こうの方が家格が上だから気を遣わないといけないみたい。あのウマも言っていたけど、本当に貴族の世界って面倒ね。
少しうんざりとしてしまったけれど、2日後にご子息の屋敷に向かうと、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。
あたしの生家である伯爵家のお屋敷も大きかったけど、このご子息のお屋敷は倍くらいの大きさがある。
というか……これって城よね!?
あたしたちは執事に案内されながら御城の中に入ると、待合室に待たされ……やがてご子息が姿を現した。
銀髪で艶のある髪。背丈が高いだけでなく筋肉もある身体。そして鋭さと優しさの同居した顔。肖像画で見たモノよりも実物の方が美しいものね。
「おお……彼女が……」
「はい。伯爵家のご令嬢です」
凛々しい彼は、あたしを眺めると、満足そうに頷いた。
「気に入った。今からこの娘は私の嫁だ」
ま、まあ……! なんと強引な!!
だけど、そんなところが男らしくて素敵!!
「は……はい!」
後日、式典を開くことなった。
【令嬢の結婚相手】
そこにはブロンドの髪の若い白人女性がいる。
日本人だった時のあたしも、けっこうな美しさだったけれど……この姿もなかなかアリな話だと思う。
しかも、年齢もあのウマの言った通り15歳くらいの少女にまで若返っているし、45歳の頃のあたしは、老いに逆らうような気持ちで、歳を取った方が女は魅力があると言い続けて来たけど……やっぱり女は若さが第一ね。
「お嬢様……」
振り返ると、そこにはメイドが立っていた。
やはり、貴族令嬢と言えば、それに仕える使用人たちよね。
「おはよう。どうしたの?」
「朝食の準備が整っております」
「頂こうかしら。持ってきて下さる?」
「畏まりました」
間もなくメイドたちは、パン、スープ、肉料理、デザートのフルーツといった御馳走を運んできてくれた。
フランス料理のように1つずつ持ってきて欲しいのだけど、まあ、これだけ豪華なのだから許すわ。
「では、拙くはありますが……今日も演奏させて頂きます」
「ええ、お願い」
メイドの1人は器用にハープを演奏してくれたから、あたしは朝食の時間を満喫できた。
本当に貴族令嬢の生活って……いいものね。しかもあたし……テーブルマナーを習ったこともなかったのに、特に意識しなくても出来てる。これもウマのビジネスとやらのサービスかしら。
ふふ……あのウマ、なかなか気が利くじゃない。
「…………」
だけど、一つだけ疑問も残るわね。
どうしてこんなに至れり尽くせりなのに、この貴族令嬢は自殺なんてしたのかしら。
食事が終わると、メイドはにっこりを笑いながら言った。
「お嬢様。先日の件は残念でしたが……お気を強くお持ちください」
彼女は冊子を出した。
「この国には皇太子さま以外にも……高貴な生まれの殿方は沢山います。我ら伯爵家に相応しいお相手を探して参りました」
その言葉を聞いてあたしは理解した。
どうやら、この伯爵令嬢とやらは、皇太子のことが好きだったんだけど、きっとふられてしまったのでしょう。本当にバカな女だと思うわ。こんな夢のような生活をしていたというのに。
「……とりあえず見せて」
「ははっ!」
冊子を開いてみると、伯爵家の長男や次男、侯爵家や子爵家の男たち、それ以外にもお金持ちの商人とか、騎士の男性とか、とても凛々しい人たちが揃っていた。
「決めたわ。この人に会いたい」
「こちらの方は、王家の縁戚に当たる方ですね……わかりました。すぐに手配します」
お見合いの話が決まると、次にメイドたちはあたしのお肌の手入れをしたり、マッサージをして血行を良くしてくれたりしている。
お貴族様だから当たり前なんだけど、なんだかとても優雅な気分。
これを日本にいたときにするとなれば、マッサージだけでも1万円近く取られるもんね。まだボンクラオヤジが生きていた時は、お小遣いも少ないけどもらっていたけど……アイツが死んでからは本当に久しぶりな気がする。
マッサージが終わると、メイドは言った。
「ではお嬢さま。健康のためにお庭を散歩しましょう」
「ええ、案内して」
この伯爵家のお屋敷は、お庭も手入れが行き届いていた。
様々な植物が植えられていて、御池には魚が泳いでいるし、木の枝には小鳥がさえずっている。
私は1時間ほどお散歩を楽しむと昼食を楽しんで、そこからはダンスのお稽古。更に竪琴の練習をしたら優雅な1日は終わった。
そして貴族令嬢の生活をして3日目。
メイドはお見合い用の冊子を持ってやってきた。
「お嬢様」
「なあに?」
「先日のお見合いの件ですが、ご子息様がお会いしたいと仰っています」
それはそうだろうと頷いていた。
なにせこれほど美しく、更に生まれも良いあたしが断られるはずないもの。
「わかったわ。わたくしもなるべく早くご子息様とお会いしたい」
「畏まりました」
そのメイドは、すぐに手配をして2日後に、こちらから出向くことになった。
男なんだからそっちが来なさいと思うけれど、向こうの方が家格が上だから気を遣わないといけないみたい。あのウマも言っていたけど、本当に貴族の世界って面倒ね。
少しうんざりとしてしまったけれど、2日後にご子息の屋敷に向かうと、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。
あたしの生家である伯爵家のお屋敷も大きかったけど、このご子息のお屋敷は倍くらいの大きさがある。
というか……これって城よね!?
あたしたちは執事に案内されながら御城の中に入ると、待合室に待たされ……やがてご子息が姿を現した。
銀髪で艶のある髪。背丈が高いだけでなく筋肉もある身体。そして鋭さと優しさの同居した顔。肖像画で見たモノよりも実物の方が美しいものね。
「おお……彼女が……」
「はい。伯爵家のご令嬢です」
凛々しい彼は、あたしを眺めると、満足そうに頷いた。
「気に入った。今からこの娘は私の嫁だ」
ま、まあ……! なんと強引な!!
だけど、そんなところが男らしくて素敵!!
「は……はい!」
後日、式典を開くことなった。
【令嬢の結婚相手】
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