51 / 55
47.スモッグ使いのリベンジマッチ
しおりを挟む
その日の夜、僕はキンバリーとぐっすりと眠っていると、視界の隅にあからさまな敵意を察知した。
ゆっくりと目を開けると、キンバリーもこちらに視線を向けてくる。
「……この、隠す気もない足音……もしかして」
「多分、そうだよ」
僕とキンバリーは、そっとドアを開けて外へと出ると、ウェアウルフのクロエや有翼人のスカーレット、更に人魚のジェシカも出てきた。
「隊長……クロエが例の男の臭いを感じたそうです」
「方角はこっちかい?」
そう質問すると、クロエはしっかりと頷いた。
「そうだよ。どう見ても私たちに復讐しようって感じだね」
僕は仲間たちを見た。
「警告は僕が行う。みんなは隠れていて交戦になったら、援護をお願い」
「わかりました」
僕は中庭を見ると、スティレット支部長が頷いた。
この問題については僕に一任してくれるということだろう。僕は【ユニコーンセンス】を用いながら、スモッグ使いとの距離を確認し、仲間たちには手近な場所に隠れるように指示。
僕もまたユニコーン化してから淡々と歩いていくと、久しぶりにオタクのような風貌の男とにらみ合う形となった。
「よう……この前はどうも」
「それはこっちのセリフだよ?」
そう言葉を返すと、スモッグ使いは不敵な笑みを浮かべて石を1つ出した。
その中には何と、近所の若い女性が監禁されている。
僕が顔をしかめると、スモック使いは犯罪者のような笑みを浮かべた。
「別に前のように、集団でボコりに来てもいいんだぞ! 人質の命は保証しないけどね!!」
やはり、コイツにはこの世界の人たちが、単なるNPCにしか見えていないようだ。
いいだろうと思うと、僕は角を構えてスモック使いと対峙した。
スモック使いの能力は、ある程度だが知っている。
片方は【ザ・コレクション】捕獲した相手を石の中に閉じ込めるアビリティ。そしてもう1つが仮名だが【スモック】。この男の討伐を難しくしているアビリティだ。
お互いににらみ合うと、僕は少しずつ動き、スモック使いも少しずつ近づいてきた。
こちらから仕掛けないでいると、スモック使いが殴りつけてきた。
僕はタイミングよく水魔法を扇状に拡散させて放つと、スモック使いの拳が当たると同時にコイツもびしょぬれになった。
ここでわかったことがひとつ。インパクトの瞬間は拳だけでなく身体全体の守りが疎かになる。
「このウマぁ! くそ……」
スモック使いは、自分の顔についた水滴を払っていた。ここで攻撃するとどうなるのだろう?
僕は再び拡散するように水魔法を放ってみると、今度は身体を通り抜けて後ろの木や下草が湿った。自分で自分の身体を触っているときは、スモックが働くわけか。
では、こういう攻撃はどうだろう?
僕はワープ魔法の出来損ない【スペース】でスモック使いの後ろに回り込むと、脚で木の枝を蹴り折って男の頭にぶつけてみた。
すると、効果は発動したらしく、木の枝がすり抜けて地面に転がっている。
なるほど。間接的な攻撃にも対処するわけか。さすがはアビリティというべきか。
「おらぁ!」
スモック使いは、すぐに僕が後ろに回り込んだことに気が付いたらしく、振り返って襲ってきた。
僕もまた振り返ると、今度はスモック使いの拳に自分の角を向けてみた。
スモック使いは驚いて避けようとしたが、完全に角から逃れることができずに腕を引っかけて傷を負っている。これをヒーリングなしで治すとなれば、全治2週間と言った感じか。
「痛かったでしょう……ヒーリングをかけてあげよう」
「う、うわああああああ!」
ユニコーンホーンを光らせると、男は驚いて逃げ出した。
当たり前の話だが、ヒトがウマと追いかけっこをしたところで勝てるはずがない。僕はしつこく追いかけ回しながら、男の腕にヒーリングを最大出力でかけた。
動き回る相手に、ヒーリングをかけるのは難しいんじゃないかと思う人もいるかもしれない。
確かにその通りだけど、それは相手の身体をきれいに治すために微調整をしているからだ。適当ではなくテキトーにヒーリングを使っていいとなれば、話は変わってくるものである。
そしてこの間にわかったことは、ヒーリングはスモックでは回避できない。
スモック使いの腕はみるみる腫れ上がっていき、更に退路もなくなって崖下へと追い詰めることができた。
「チェックメイトだよ」
そう伝えると、男は悔しそうに僕を睨んできた。
「本当に……いるんだよ。お前みたいに……女どもにモテて侍らしてるやつ」
目を細めると、男は更に言った。
「だけど、そうそう思い通りに行くかぁ!」
男はそう言いながら人質だった、女性の入った石を川に向かって放り投げた。
僕がその方向を剥いた途端に、男は叫んでいた。
「かかったな……アビリティ【ザ・コレクションズ!】」
その直後に、僕の身体は石の中へと取り込まれ、男の甲高い笑い声が聞こえてきた。
ゆっくりと目を開けると、キンバリーもこちらに視線を向けてくる。
「……この、隠す気もない足音……もしかして」
「多分、そうだよ」
僕とキンバリーは、そっとドアを開けて外へと出ると、ウェアウルフのクロエや有翼人のスカーレット、更に人魚のジェシカも出てきた。
「隊長……クロエが例の男の臭いを感じたそうです」
「方角はこっちかい?」
そう質問すると、クロエはしっかりと頷いた。
「そうだよ。どう見ても私たちに復讐しようって感じだね」
僕は仲間たちを見た。
「警告は僕が行う。みんなは隠れていて交戦になったら、援護をお願い」
「わかりました」
僕は中庭を見ると、スティレット支部長が頷いた。
この問題については僕に一任してくれるということだろう。僕は【ユニコーンセンス】を用いながら、スモッグ使いとの距離を確認し、仲間たちには手近な場所に隠れるように指示。
僕もまたユニコーン化してから淡々と歩いていくと、久しぶりにオタクのような風貌の男とにらみ合う形となった。
「よう……この前はどうも」
「それはこっちのセリフだよ?」
そう言葉を返すと、スモッグ使いは不敵な笑みを浮かべて石を1つ出した。
その中には何と、近所の若い女性が監禁されている。
僕が顔をしかめると、スモック使いは犯罪者のような笑みを浮かべた。
「別に前のように、集団でボコりに来てもいいんだぞ! 人質の命は保証しないけどね!!」
やはり、コイツにはこの世界の人たちが、単なるNPCにしか見えていないようだ。
いいだろうと思うと、僕は角を構えてスモック使いと対峙した。
スモック使いの能力は、ある程度だが知っている。
片方は【ザ・コレクション】捕獲した相手を石の中に閉じ込めるアビリティ。そしてもう1つが仮名だが【スモック】。この男の討伐を難しくしているアビリティだ。
お互いににらみ合うと、僕は少しずつ動き、スモック使いも少しずつ近づいてきた。
こちらから仕掛けないでいると、スモック使いが殴りつけてきた。
僕はタイミングよく水魔法を扇状に拡散させて放つと、スモック使いの拳が当たると同時にコイツもびしょぬれになった。
ここでわかったことがひとつ。インパクトの瞬間は拳だけでなく身体全体の守りが疎かになる。
「このウマぁ! くそ……」
スモック使いは、自分の顔についた水滴を払っていた。ここで攻撃するとどうなるのだろう?
僕は再び拡散するように水魔法を放ってみると、今度は身体を通り抜けて後ろの木や下草が湿った。自分で自分の身体を触っているときは、スモックが働くわけか。
では、こういう攻撃はどうだろう?
僕はワープ魔法の出来損ない【スペース】でスモック使いの後ろに回り込むと、脚で木の枝を蹴り折って男の頭にぶつけてみた。
すると、効果は発動したらしく、木の枝がすり抜けて地面に転がっている。
なるほど。間接的な攻撃にも対処するわけか。さすがはアビリティというべきか。
「おらぁ!」
スモック使いは、すぐに僕が後ろに回り込んだことに気が付いたらしく、振り返って襲ってきた。
僕もまた振り返ると、今度はスモック使いの拳に自分の角を向けてみた。
スモック使いは驚いて避けようとしたが、完全に角から逃れることができずに腕を引っかけて傷を負っている。これをヒーリングなしで治すとなれば、全治2週間と言った感じか。
「痛かったでしょう……ヒーリングをかけてあげよう」
「う、うわああああああ!」
ユニコーンホーンを光らせると、男は驚いて逃げ出した。
当たり前の話だが、ヒトがウマと追いかけっこをしたところで勝てるはずがない。僕はしつこく追いかけ回しながら、男の腕にヒーリングを最大出力でかけた。
動き回る相手に、ヒーリングをかけるのは難しいんじゃないかと思う人もいるかもしれない。
確かにその通りだけど、それは相手の身体をきれいに治すために微調整をしているからだ。適当ではなくテキトーにヒーリングを使っていいとなれば、話は変わってくるものである。
そしてこの間にわかったことは、ヒーリングはスモックでは回避できない。
スモック使いの腕はみるみる腫れ上がっていき、更に退路もなくなって崖下へと追い詰めることができた。
「チェックメイトだよ」
そう伝えると、男は悔しそうに僕を睨んできた。
「本当に……いるんだよ。お前みたいに……女どもにモテて侍らしてるやつ」
目を細めると、男は更に言った。
「だけど、そうそう思い通りに行くかぁ!」
男はそう言いながら人質だった、女性の入った石を川に向かって放り投げた。
僕がその方向を剥いた途端に、男は叫んでいた。
「かかったな……アビリティ【ザ・コレクションズ!】」
その直後に、僕の身体は石の中へと取り込まれ、男の甲高い笑い声が聞こえてきた。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
おウ魔王のごくごく平凡なダンジョン作成記 〜だから勇者さま、後生ですから、くれぐれも討伐には来ないで下さい〜
スィグトーネ
ファンタジー
馬モンスターのチャンスコネクター号は、緊張していた。
すでに就職活動で12連敗している彼にとって、今回の面接は決して失敗は許されない。
なぜ、それほどまでに彼が苦戦しているのかと言えば、最近の魔王たちは、採用人数を大きく絞っているからである。
近年ゴーレムの性能が上がっているため、少ない人員でもダンジョンを管理できてしまう。
魔王たちは、如何に少ない人員でダンジョンを運営するかを自慢しはじめており、巷ではコスパの良いダンジョンが持てはやされている。
だから、チャンスコネクター号も、今回の魔王に不採用と言われてしまうと、モンスター街の有力魔王で頼れる者がいなくなってしまう。
彼は緊張しながら待機していると、魔王の秘書がドアを開け……チャンスコネクターの名を呼んだ。
※この物語はフィクションです。
※また、表紙絵や物語の中に登場するイラストは、AIイラストさんで作成したモノを使っています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる