ヒロインピンチを切り抜ける、三十路半ニート男のドドドドドドド……本気モード異世界冒険記

スィグトーネ

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47.スモッグ使いのリベンジマッチ

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 その日の夜、僕はキンバリーとぐっすりと眠っていると、視界の隅にあからさまな敵意を察知した。
 ゆっくりと目を開けると、キンバリーもこちらに視線を向けてくる。

「……この、隠す気もない足音……もしかして」
「多分、そうだよ」
 僕とキンバリーは、そっとドアを開けて外へと出ると、ウェアウルフのクロエや有翼人のスカーレット、更に人魚のジェシカも出てきた。

「隊長……クロエが例の男の臭いを感じたそうです」
「方角はこっちかい?」
 そう質問すると、クロエはしっかりと頷いた。
「そうだよ。どう見ても私たちに復讐しようって感じだね」


 僕は仲間たちを見た。
「警告は僕が行う。みんなは隠れていて交戦になったら、援護をお願い」
「わかりました」

 僕は中庭を見ると、スティレット支部長が頷いた。
 この問題については僕に一任してくれるということだろう。僕は【ユニコーンセンス】を用いながら、スモッグ使いとの距離を確認し、仲間たちには手近な場所に隠れるように指示。

 僕もまたユニコーン化してから淡々と歩いていくと、久しぶりにオタクのような風貌の男とにらみ合う形となった。


「よう……この前はどうも」
「それはこっちのセリフだよ?」
 そう言葉を返すと、スモッグ使いは不敵な笑みを浮かべて石を1つ出した。


 その中には何と、近所の若い女性が監禁されている。
 僕が顔をしかめると、スモック使いは犯罪者のような笑みを浮かべた。
「別に前のように、集団でボコりに来てもいいんだぞ! 人質の命は保証しないけどね!!」

 やはり、コイツにはこの世界の人たちが、単なるNPCにしか見えていないようだ。
 いいだろうと思うと、僕は角を構えてスモック使いと対峙した。

 スモック使いの能力は、ある程度だが知っている。
 片方は【ザ・コレクション】捕獲した相手を石の中に閉じ込めるアビリティ。そしてもう1つが仮名だが【スモック】。この男の討伐を難しくしているアビリティだ。

 お互いににらみ合うと、僕は少しずつ動き、スモック使いも少しずつ近づいてきた。
 こちらから仕掛けないでいると、スモック使いが殴りつけてきた。

 僕はタイミングよく水魔法を扇状に拡散させて放つと、スモック使いの拳が当たると同時にコイツもびしょぬれになった。
 ここでわかったことがひとつ。インパクトの瞬間は拳だけでなく身体全体の守りが疎かになる。


「このウマぁ! くそ……」
 スモック使いは、自分の顔についた水滴を払っていた。ここで攻撃するとどうなるのだろう?
 僕は再び拡散するように水魔法を放ってみると、今度は身体を通り抜けて後ろの木や下草が湿った。自分で自分の身体を触っているときは、スモックが働くわけか。

 では、こういう攻撃はどうだろう?
 僕はワープ魔法の出来損ない【スペース】でスモック使いの後ろに回り込むと、脚で木の枝を蹴り折って男の頭にぶつけてみた。
 すると、効果は発動したらしく、木の枝がすり抜けて地面に転がっている。

 なるほど。間接的な攻撃にも対処するわけか。さすがはアビリティというべきか。

「おらぁ!」
 スモック使いは、すぐに僕が後ろに回り込んだことに気が付いたらしく、振り返って襲ってきた。
 僕もまた振り返ると、今度はスモック使いの拳に自分の角を向けてみた。

 スモック使いは驚いて避けようとしたが、完全に角から逃れることができずに腕を引っかけて傷を負っている。これをヒーリングなしで治すとなれば、全治2週間と言った感じか。


「痛かったでしょう……ヒーリングをかけてあげよう」
「う、うわああああああ!」
 ユニコーンホーンを光らせると、男は驚いて逃げ出した。
 当たり前の話だが、ヒトがウマと追いかけっこをしたところで勝てるはずがない。僕はしつこく追いかけ回しながら、男の腕にヒーリングを最大出力でかけた。

 動き回る相手に、ヒーリングをかけるのは難しいんじゃないかと思う人もいるかもしれない。
 確かにその通りだけど、それは相手の身体をきれいに治すために微調整をしているからだ。適当ではなくテキトーにヒーリングを使っていいとなれば、話は変わってくるものである。


 そしてこの間にわかったことは、ヒーリングはスモックでは回避できない。 
 スモック使いの腕はみるみる腫れ上がっていき、更に退路もなくなって崖下へと追い詰めることができた。
「チェックメイトだよ」

 そう伝えると、男は悔しそうに僕を睨んできた。
「本当に……いるんだよ。お前みたいに……女どもにモテて侍らしてるやつ」

 目を細めると、男は更に言った。
「だけど、そうそう思い通りに行くかぁ!」

 男はそう言いながら人質だった、女性の入った石を川に向かって放り投げた。
 僕がその方向を剥いた途端に、男は叫んでいた。

「かかったな……アビリティ【ザ・コレクションズ!】」
 その直後に、僕の身体は石の中へと取り込まれ、男の甲高い笑い声が聞こえてきた。


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